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7.自宅生活②

俺とメアは昨日と同じように2人で夕飯を食べていた。


「メアは日中何してるの?」

「今までは冒険者活動だけど、今はギルドで絵の依頼を受けるってことを街のみんなに伝えに行ってるよ」

「そうなの?どんなかんじ?」

「うーん。正直微妙かな」

「そうかー」

絵の仕事ができるかもとワクワクしたが、現実はそう甘くはなかったようだ。


「なんか絵をどうやって使えばいいのかわかる人がいないから、説明が難しいんだよね」

「なるほど」

俺はすこし考えてみた。俺がこの街で絵でやれそうなこと。

「わかった。ちょっと俺の方でも考えてみるね」

「ありがと」


俺達は夕食を食べながら話し続けた。


「今日オータルが家に来たよ」

「そうなの?」

「なんか絵を描くのに必要な物をいろいろ頼んじゃった」

「いつも稽古ばっかりしてるから、頼みたいこと頼んでいいよー」

「稽古?」

「冒険者ギルドの裏に稽古場があって、そこで先輩冒険者にいろいろ教わってるの」

「そうなんだ。冒険者って多いの?」

「この街は少ないよ。モンスター討伐の依頼も少ないからね。王都とかダンジョンがある街とかの方が多いと思う」

「なるほどねー。そういえばオータルにも年下だと思われてたよ」

「ははは。イツキが獣人の年齢がわからないように、私達も人間の年齢が分かんないみたい」

「さすがに弟分だって言われた時は焦ったよ」

「年上なのに弟はないよね!」

「最終的には兄弟分ってことになった」

「わけわかんないね」

「俺も困惑したよ」

メアは笑っていた。


「でもオータルもミランもいい子だから仲良くしてあげて」

「うん。わかったよ。でもミランさんにはだいぶ嫌われてそう」

メアは気まずそうな表情をした。


「あー気付いてた?ミランは人間の事が嫌いなの」

「なんかあったの?」

「うーん。人の話を勝手にするのは良くないけど、話とかなくちゃね」

そういうとメアは俺の目を見て話し始めた。


「ミランは子供の頃に人間に誘拐されかけたの」

「え?」

「冒険者になりたくて、街からこっそり出たときにちょうど悪い人間に出会って捕まったの」

「それでどうなったの?」

「他の街から来た冒険者がたまたま鉢合わせてくれたおかげで何とかなったんだよ」

「なるほど」

「ミランは直接何かされたわけじゃないけど、ミランより前に誘拐された子供達はなかなか酷い扱いを受けてたみたいで、それを見ちゃって人間に対して怒りというか恐怖を感じるようになったみたい」

「どうやったら仲良くなれるかな?」

「うーん。イツキはいい人間だから、時間が解決してくれると思うけどなー」

「頑張ってみるよ」


俺とメアは食事を終え、メアは家に帰った。


俺はすぐにリビングに紙を持っていき、メア達が絵の使い方を説明できる方法を考えた。



▽ ▽ ▽



気付いたら朝になっていた。

俺はリビングで寝ていたようだ。


メアが朝食を運びに来たおかげで起きることができた。

「イツキ!何でリビングで寝てるの?」

「いや、昨日話してた絵の使い方を考えてたんだよ」


俺は昨日描いた絵をメアに見せた。

「えーすごい!」


俺が昨日描いたのは、

メアの顔をリアルに描いた絵と少しアニメチックに描いた絵とミニキャラで描いた絵。

ゴブリンとウマも同じように3パターンで描き、街にあるであろうお店で使えそうな絵をたくさん描いておいた。


「メア、冒険者ギルドって文字をここに書いてくれない?」

「え?なんで?」

「この世界の文字がわかんないんだよね」

「あーそっか」

メアは紙に冒険者ギルドと書いてくれた。


紙に冒険者ギルドとちょっとアレンジして3パターンほど描き、その文字に剣やら鎧のような絵を付け加えた

「こういうのを大きい板とかに書いたら看板とかで使えたりしない?」

「使えるよ!これすごくいい!この紙を見せたら、どんなものが作れるかわかりやすくていいよ」

「それならよかった」

「ありがとう。今日はこれ使って頑張ってくるね」


メアは俺が描いた絵を持って帰っていった。


▽ ▽ ▽


昼過ぎにオータルがやってきた。


「イツキ、必要な物持ってきたぞ」

「ありがとう。外に置いてるの?」

オータルは手ぶらのように見えた。


「荷物は全部ここに入ってるんだよ」

オータルは腰にぶら下げている巾着を叩いた。


「え?」

「これはマジックバックなんだ。わざわざベアトリスのばあさんから借りてきたんだぞ」

「そうなんだ。ありがとう」

「じゃあ部屋に運ぶからどこに置きたいか決めてくれ」


俺とオータルは2階の作業部屋に向かった。


「じゃあこの壁にくっつけるようにテーブルとイスを。板はここらへんに置いて」

「わかった」

オータルはマジックバックからどんどん物を出して、配置してくれた。


「こんな感じか?」

「うん。ありがとう」

「板も平気か?」

「最高だよ。ありがとう」

「おう!」

オータルは嬉しそうだった。


「そういえばメアから聞いたんだけど、冒険者ギルドで稽古してるんだって?」

「してるぞ。先輩の時間が空いている時だけだけどな」

「俺が外に出られるようになったら、俺も稽古を受けたいんだけど」

俺がそういうとオータルは嬉しそうな表情をした。


「いいぞ!武器は筆剣ってやつだよな?」

「そうだね」

「じゃあ大剣とか長剣使ってる人がいいな。よし、俺に任せろ」

「ありがとう助かるよ」

これで剣道をベースとした戦い方以外も学べるはずだ。


「てかイツキ」

「ん?」

オータルは俺の頭をじーっと見ていた。


「お前耳と尻尾が消えてるぞ?」

「え?」

俺は頭を触るが、耳がなくなっている。


「今日が4日目だけど、飲んだ時間帯を考えると丸3日で効果が切れるのか」

「ベアトリスのばあさんには俺から言っておくから」

「ほんと?おねがい」

「おう」


そう言うとオータルは帰って行った。



▽ ▽ ▽



翌日、朝からベアトリスさんとリメアラさんとメアが家に来た。


「昨日オータルから聞いたが、効果は3日間だったみたいじゃな」

「ですね。飲んだ時間帯くらいで効果が切れたので、丸3日ですね」

「わかったのじゃ。そうしたら変化茶の原液を大量に取り寄せることにするから、街に出るときは呑むように」

「はい」


ベアトリスさんがそういうとリメアラさんが変化茶の原液を渡してきた。

「これです。前回と同じ量なので3日持つと思います」

「ありがとうございます」

「今後は大量に取り寄せるので、届き次第お渡しにきます。収納の書に入れといていただければ」

「わかりました。ありがとうございます」


俺はリメアラさんにお礼を言った。


「今日は何かするんですか?」

「ステータスプレートの発行と冒険者登録じゃ」

「ステータスプレート?」

「ステータスを記載している板じゃ。身分証みたいなものじゃから、肌身離さず持つように」

「わかりました」

「冒険者登録したら、ギルドカードというものを渡す。それは冒険者のランクだったりの情報が記載されていて、ステータスプレートと統合できるのじゃ」

「あんまりピンときてませんが、わかりました。どこかに移動しますか?」

「いや、道具は一式持ってきたからここでやるぞ」


ベアトリスさんがそういうとリメアラさんが台座に乗った水晶を2つ出した。


「まずはこちらに触れてください」

俺は片方の水晶に触れる。


「めずらしいですね。魔力適性がありません」

「ほー獣人みたいじゃの」

水晶を置いている台座から、プレートが出てきた。


「これがステータスプレートです。無くさないように気をつけてくださいね」

「はい、ありがとうございます」

俺はステータスプレートを受け取った。


「次はこちらに触れてください」

もう1つの水晶に触れると少し光り、台座から紙が出てきた。

「これは…レベルはまだ低いのにステータスが高いですね。それに剣術などの通常スキルも取得してます」

「これはすごいの!」


ベアトリスさんもリメアラさんもものすごく驚いていた。

リメアラさんは出てきた紙を違う機械に入れて、作業を始めた。



俺はオータルに頼んだ稽古の話をベアトリスさんに報告することにした。


「ベアトリスさん」

「なんじゃ?」

「昨日オータルにも話したのですが、冒険者の先輩に訓練をしてほしいんですがいいですか?」

「おー構わんぞ」

「オータルが大剣か長剣を使う人を探してくれるみたいで」

「ガンズが居ればよかったのじゃが」

「ガンズさん?」

「ワシの息子でAランク冒険者じゃ」

「Aランク?」

「今は人間の国で活動しておるから、この街でイツキの師匠にふさわしいのはジルじゃな」

「ジルさん?」

ベアトリスさんと話していたら、リメアラさんの作業が終わった。


「冒険者登録完了いたしました。虚偽の登録が出来ないので人間として登録しています」

「わかりました」

「Gランクからスタートになります。依頼を達成していくとランクが上がるから頑張ってくださいね」

「ちなみに一番上はSランクですか?」

「そうです。別の世界から来たイツキさんならSランクになっちゃうかもしれませんね」

「ははは。がんばります」


俺は貰ったステータスプレートとギルドカードを統合して収納の書にしまった。



「ちなみにイツキへの絵の依頼が2つ来ているのじゃ」

「え?本当ですか?」

「まずは冒険者ギルドの看板を頼みたい。報酬は弾むのじゃ」

ベアトリスさんはニヤニヤしていた。


「メアに渡した紙を見てくれたんですね」

「そうじゃ!あれは素晴らしい!是非作ってもらいたいのじゃ」

「わかりました」


「そしてもう一つは、この街の周りにいるモンスターの情報をまとめたいのじゃ」

「モンスターの情報?」

「この街の者は一部を除いてほとんど街の外に出ないのじゃ。なので何か起きて街の外に出なくてはいけなくなったときに最低限の知識が必要なのじゃ」

「なるほど。モンスターの絵を描いて、こういう攻撃をしてくるから気をつけろ!みたいな感じですかね?」

「そうじゃ。ただ、御主1人だと街の外は危険だからメア達を同行させるように」

「…わかりました。モンスターと戦うことになると思うのでまずは冒険者ギルドの看板製作、訓練、モンスターの情報をまとめるの順でいいですか?」

「構わんのじゃ。山にいるモンスターの情報をまとめるのは時間がかかる、だから他の依頼の合間でいいのじゃ」

「わかりました、頑張ります」

「それじゃあ明日看板を持ってくるから、よろしく頼むのじゃ」


ベアトリスさん達は帰って行った。


俺は作業部屋に入り、紙に冒険者ギルドの看板のラフを数パターン描き始めた。


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