44.ダンジョン泊②
メアの耳がピクピクっと動いた。
「ここ!罠があるよ」
メアが指差した地面は、一部色が変わっていた。
「おお。凄いね」
メアは罠探しの達人みたいだ。
オータルは若干萎えていた。
なぜなら見つけた宝箱2つがミミックだったからだ。
「おーい。もうボスの所に行こうぜー」
「もう探さなくていいのか?」
「どうせミミックだからいい」
完全に萎えていた。
「でもボス戦はシラユキとゴウキにやってもらうって話したよな?」
「あ!俺、戦えないんだった」
オータルはもっと萎えてしまった。
「ボス戦以降は好きなだけ暴れていいからさ」
「…わかった」
これで少し機嫌がよくなってくれればいいんだが。
階段に向かっていると、宝箱を発見した。
「オータル!宝箱あるぞ」
「どうせミミックだよ」
「わかんないだろ!見てきていいから」
俺はオータルを押す。
「だめ!」
するとメアが叫んだ。
「え?」
「罠あるから気を付けて!そことそことそこ!」
メアが指差す方向には確かに色が違うタイルがあった。
「3つも罠が?これは宝箱なんじゃないか?」
「どうせミミックだよ」
オータルはそう言いながら罠を避けて宝箱に向かう。
オータルが宝箱を開けても何も起きなかった。
「やったあああ!」
オータルは嬉しいのか声をあげた。
「おおお!よかったな。中身は?」
「あ?これなんだ?箱だ」
オータルは木箱を持っていた。
「マジックボックスじゃないわね」
「中には石みたいなものが沢山入っていた」
「ギルドで鑑定してもらうしかないね」
「そうだな」
オータルは木箱をメアに渡した。
▽ ▽ ▽
10階層のボス部屋の前。
「シラユキとゴウキに戦ってもらうから。もし2人がやられたらお願い」
「「「わかった」」」
俺は召喚絵巻で2人を召喚し、ボス部屋の扉を開けた。
前回と同じく、部屋の中央には斧を持ったミノタウロスがいた。
本当にいたんだ。
さっきまでは。
今は斧しかないけど。
扉を開けた瞬間、シラユキとゴウキは先制攻撃を仕掛けた。
ゴウキは金棒でミノタウロスを打ち上げ、シラユキが作った大量の氷の棘の上に落下した。
そのままミノタウロスは消えてしまった。
師匠が2人を使うなと言ってた意味が分かった。
口が開いたままの俺達の元に小さな姿で2人はやってくる。
小さい姿になったということは、褒めてほしいんだろう。
俺は口を閉じ、2人を撫でてあげた。
2人を召喚絵巻に戻し、ミノタウロスの斧を回収する。
「すごかったな…」
「うん…」
「本当にやばいな」
「私達も強くならないと……」
ボスに勝利したはずの俺達は少しテンションが落ちていた。
俺達は水晶に触れず、11階層に繋がる階段に向かった。
▽ ▽ ▽
「うわ!凄いな。どういう構造なんだよ」
俺は11階層を見て声をあげてしまった。
何故なら目の前には草原が広がっていたからだ。
「ここから18階層までは草原みたい」
メアはギルドでもらった紙を見ながら言った。
「ダンジョン泊をするならボス部屋の後がいいってジルさんが言ってたけど、そういうことか」
「うん。モンスターはいるけど広いから対応できるし、他の冒険者の近くで野営をしないでいいからだと思う」
俺達はテンション落ちてたが、しっかり回復した。
「この階層はフォレストウルフとホーンウルフとホーンラビットがいるらしい」
「わかった。じゃあ気を引き締めて進もう」
「「「うん」」」
俺達は草原を歩き出した。
少し歩くと遠くの方でホーンラビットの群れが見える。
草原は見晴らしがいいから、奇襲を心配しなくて済む。
「ホーンラビットいるけどどうする?」
「うーん」
メアは悩んでいた。
「出来るだけ進みたいから、襲ってこない限りは戦わないことにしたいな」
「わかった」
俺達はホーンラビットを無視して進んだ。
少し歩くと12階層に続く階段を見つけた。
草原の中に階段があるのは凄い違和感だった。
途中で階段が途切れているから、あそこで階層が切り替わるのだろう。
階段を上ろうとすると、上から人が降りてきた。
女性が4人と男性が3人だ。
女性は冒険者のような恰好をしているが、男性はボロボロの服に大きな荷物を持っている。
「もう!朝には街に帰る予定だったのに!あんた達がトロトロしてるから!」
「「「す、すみません」」」
男性達は背が高くてガタイのいい女性に頭を下げた。
女性は再び階段を降りる始めた。
すると俺達がいるのに気付いたのか話しかけて来た。
「あんた達。この階層に来たのはいつ?」
「え?さっきですが」
「そう。ならまだ間に合うかもね」
女性はお礼も言わず、目も合わさなくなった。
少し気分が悪い。
「早くしなさい!ボス部屋がまだ復活してないかもしれないんだから」
「「「は、はい」」」
女性達を男性達の頭を叩いて笑っている。
男性陣は全く怒りもせず、笑顔のままだった。
ただその笑顔は引きつっているように見えた。
女性達は楽しそうに10階層に続く階段に向かって歩いて行く。
男性は重そうな荷物を背負って付いて行った。
「え!?」
俺は目を疑った。
すれ違った男性の中に見覚えのある人がいた。
いや、そんなわけない。
「どうしたの、イツキ?」
メアが心配そうに聞いてきた。
「いや、あとで話すよ。とりあえず12階層に行こう」
「うん。わかった」
俺達は階段を上り、12階層を目指した。
12階層も変わらず草原だ。
「えーっと、この階層のモンスターは?」
「11階層と変わらないよ。少しだけ数が多いらしい」
「なるほど。ちょっと話をしたいんだけど」
「うん。いいよ」
「どうした?」
「大丈夫か?」
みんなが心配している。
俺達は少し移動をし、休憩をしながら話すことにした。
「さっき冒険者とすれ違ったでしょ?」
「うん。いかにも皇国の冒険者みたいなやつね」
「そうなの?」
「俺達を見る目でだいたいわかる」
「そうなんだ」
俺は気付かなかったが、人族至上主義の人だったみたいだ。
「それであの冒険者がどうしたの?」
「男性が3人いたでしょ?あの中の1人を見たことがあって」
「え?っていうことは元の世界の人?」
「うん。見間違いじゃなければ」
「仲の良い人?」
「仲がいいわけじゃないんだけど、元の世界の俺の先生」
俺が見たのは高校の担任の藤井先生だった。
獣王国には俺が思う学校のようなものがないみたいで、3人はあんまりピンとは来ていなそうだった。
兵士になりたい人が通う場所は王都にあるらしい。
学問とかは家で教わるのが普通みたいだ。
「それでその先生があの奴隷だったの?」
「奴隷!?」
俺は想定していない単語に驚いた。
「うん…。あの3人は女性冒険者の奴隷だった思う」
「そうだな。あの扱いは…」
「こっちの世界にいるのも謎なのに、何で奴隷なんかに?」
俺の中の疑問が膨らんだ。
「ベボンさんが言ってた勇者召喚は?」
「勇者召喚された人が奴隷ってことあるの?」
「わかんないけど、さすがにないか」
「ないと思う」
獣人を生贄に勇者召喚をして、その勇者を奴隷にするとか意味が分かんない。
藤井先生の登場で俺の頭がおかしくなってしまった。




