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43.ダンジョン泊①

翌日、俺とオータルは少し遅めに起きた。

リビングにはジル師匠とメアとミランがすでにいた。


今日は変化茶のこともあるので休みだ。

せっかく時間があるので、筆魔法を確認することにした。


庭に出ると、アガン達が岩状態で固まって寝ていた。

アガン達を起こさないように少し離れた。


俺は集中し、宙に立体的な炎の車輪を描いた。

赤と黄色を使い、荒々しく高速で回転しているイメージ。

すると目の前にウィンドウが現れた。


[火車を登録いたしました]


目の前に描いた火車は消えていた。


「よし」

試してみたいが、さすがに火は怖い。

宿が燃えたら話にならない。


するとオータル達がやってきた。


「何してるんだ?」

「新しい筆魔法を取得したんだ」

「まじか!じゃあ俺の鎧を『塗装』してくれよ」

「私のサーペントブレードも!」

オータルとミランはものすごい勢いで言ってきた。


「やってみるから持ってきて」

「「わかった!」」

2人は室内に入っていった。


メアのグローブを『塗装』したときは、黒と白を使った。

『旋風』を書いた時もその2色を使った。

『火車』を『塗装』するには赤と黄色が塗れればできるはずだ。


待っていると2人が装備を持ってきた。


「じゃあミランから」

俺はサーペントブレードを『塗装』しようとする。

しかし色を塗ることができない。


「ダメだ」

「そう。残念……」

ミランは落ち込んでいた。


次はオータルの鎧だ。

鎧に『塗装』をしようとする。

すると赤色を塗ることができた。


「おっ!いける」

「まじか!」


俺は興奮するオータルを押しのけて、『塗装』を続けた。

予想通り、赤と黄色が塗れた。

角や腕に炎の輪を何個も付けているようなイメージで塗装していく。


「これでできたかな」

「よし!貸してくれ!」

オータルはすぐに鎧を着だした。


真っ黒な鎧に赤と黄色の塗装。

悪くない。


「魔力込めてみるぞ」

「あ!」

火だから止めようとするが遅かった。

オータルの角と腕には高速回転する火車が付いていた。


「お!!!」

オータルは興奮している。


「ミラン!攻撃してみてくれ」

「え?」

「早く!」

「わかったわよ」


ミランはサーペントブレードを振るう。

オータルはそれを腕の火車で弾く。


「おお!これは強いぞ」

オータルはテンションが上がりまくっていた。


ミランは『塗装』出来なかった鬱憤をオータルで晴らすように攻撃をし続けていた。



▽ ▽ ▽



無事に変化茶の効果が切れ、今日からダンジョン泊をする。

人が少ない時間帯に10階層までは行きたいので、この前よりも少し早めの出発だ。


ジル師匠は付いて来るらしいが、隠れて見ているだけ。

道の選択や宝箱を狙うかも自分達で決めていいそうだ。


メアとミランが冒険者ギルドで地図をもらっていた。

進行の指揮は2人任せようと思う。


▽ ▽ ▽


今回は2階層で少しだけ宝箱探しをすることになった。


「イツキ、右の部屋に宝箱がよくあるみたい」

「わかった」

メアの指示通り進むと本当に宝箱があった。

しかしゴブリンが5匹いて、その中心に宝箱は置かれていた。


「ここは俺にやらせてくれない」

「いいよ」

「いいぞ」

「筆魔法を使うの?」

「うん。昨日は燃えたら怖くて使えなかったんだよ」


俺はゴブリン達の前に出る。

「火車!」

俺がそう唱えると両脇に火車が現れ、高速回転しながらまっすぐ進んでいった。

火車はゴブリン3匹を燃やし轢いて消えた。

威力は充分なようだ。


「よし。もう1回だ。火車!」

再び火車が現れ、ゴブリンに向かって行く。

1匹は燃やし轢いたが、もう1匹には避けられてしまった。


俺に向かってくるゴブリンを筆剣で叩き斬った。


「よし。終わったよ」

火車は直進で進むので、使い方は考えないといけない。


「じゃあ俺が宝箱を開けるぞ!」

オータルはそう言って宝箱に近づく。

グギャアア!

宝箱は大きな口を開けて、オータルに襲い掛かってきた。


「またかよ!」

オータルは腕をミミックの口の中に突っ込んだ。

「え?」

その様子を見た俺は驚いた。


するとミミックの口から火が溢れ出てくる。

グギャアギャギャ!

オータルは口に入れた腕で『火車』を使ったみたいだ。


ミミックの体は内側から破壊され、消滅した。

ミミックのいた場所には硬貨と魔石が散らばっていた。


オータルに『塗装』した『火車』は、俺のと違って接近戦向きのようだ。

回転する火の鎧と言ったところだろう。


▽ ▽ ▽


俺達は難なく7階層までやってきた。


「意外と余裕だね」

「そうだね。師匠が教えてくれたし、モンスターとも前回戦ってるからね」

ハイペースだったがメアも疲れていなそうなので、問題ないだろう。


オータルとミランはリビングソード5体と戦っている。


ミランは上手くサーペントブレードを絡めて、壁に叩きつける方法で倒していた。

やっぱり俺とミランには硬い相手は苦手だった。


オータルも今までは壁や地面を使っていたが、『火車』のおかげで殴りだけでもリビングソードを壊すことができるようになっていた。

ミランにも早く『塗装』をしてあげたい。



8階層に続く階段に到着した。


「いったん休憩にしよう。8階層では宝箱探しと罠の確認をするんだよね?」

「うん。2階層よりも冒険者が来る可能性が少ないから、ゆっくり探せるかなって」

「わかった。マジックアイテムが出なくても、ミミックのドロップアイテムはおいしいもんね」

俺達は遅めの朝食の準備を始めた。


「今日は焼いたオーク肉をパンで挟んだものよ」

「おーサンドイッチか、いいね」

「「「サンドイッチ?」」」

みんなは首を傾げた。


「あー元の世界ではパンで具材を挟んだ料理をサンドイッチっていうんだ」

「そうなんだ。じゃあこれはサンドイッチってことかな?」

ミランが取り出した料理は、サンドイッチというよりかはバーガーだった。


「うーん。パンの種類がちょっと違うけどサンドイッチってことでいいかな」

「イツキの世界にはいっぱい料理があるのね」

「そうだね。この世界でも作れるものはありそうだから、思いついたら今度作るよ」

「楽しみだわ」

ミランは笑顔で言った。


俺達は速めに食事を終わらせ、次の階層に備えて休憩をした。



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