39.ペタロドダンジョン挑戦①
俺達は早朝に家を出た。
ジル師匠はダンジョンに向かいながら話す。
「朝は比較的冒険者が少ない。だから6階層まで日中より楽に行ける」
「なるほど」
「それでも少しいるから、6階層まではモンスターは無視するぞ」
「「「はい」」」
俺達はジル師匠に付いて行く。
ダンジョンに近づいてきた。
俺達と同じようにダンジョンへ向かう人がちらほらいる。
「俺達のように朝を狙う人もいるんですね」
「そうだな。日中の1階層は地獄だからな」
ジル師匠は顔を引きつらせて言った。
ダンジョンの入り口に到着した。
「じゃあ行くぞ」
「「「はい!」」」
塔の入り口に入って、俺は違和感に気付いた。
外から見えるよりも中が広い。
倍とかそんなレベルじゃない。
5倍以上広くなっている。
さすが異世界だ。
「少し早歩きで行く。ついてこい」
俺達はジル師匠を追いかける。
1階層には見える範囲で10人以上の冒険者が居る。
モンスターはゴブリンやスライムで数はさほど多くない。
ジル師匠に付いて行くと階段に到着した。
「各階層にはこのような階段が必ずある。階段にはモンスターがなぜか来れない。だから休むときは階段の踊り場を使うといい」
「「「「わかりました!」」」」
俺達は階段を上がり、2階層に行く。
階段を上がると小さな部屋に出た。
隣の部屋に行くための扉枠が3つあった。
「ここは少し迷路のようになっている。時々宝箱があるが無視でいい。いいアイテムが出る場合もあるが、大体ミミックという宝箱に擬態しているモンスターだ」
「ミミック!」
聞いたことのあるモンスターだ。
「もし通り道にミミックがいたら戦ってみるか?」
「はい。戦いたいです」
「少し身体を動かしたいな」
「私も少し戦ってみたいです」
「私も!」
みんなのやる気は十分なようだ。
ジル師匠は次々と部屋を移動していく。
モンスターには全く出会わない。
「この階層はミミックしかいないんですか?」
「そんなことない。この階層は最短の道を行けばモンスターに会わないんだ」
「なるほど。師匠は道を覚えてるんですか?」
「いや。昨日のうちに冒険者ギルドに行って地図をもらってきた。ダンジョンに挑戦する上で情報は重要だ。もし他のダンジョンに挑戦するときは、そこを意識しておけ」
ジル師匠は夕食後に情報取集をしていたみたいだ。
ジル師匠に付いて行き、扉枠を潜ると宝箱が置いてあった。
「あれはミミックですか?」
「わからん。近づいてみないと判別は付かないんだ」
ミミックの擬態は師匠でもわからないみたいだ。
「俺達で戦ってみてもいいですか?」
「いいぞ」
俺達は武器を構えた。
「メア!鈍化薬を宝箱に当てて」
「はい!」
メアは鈍化薬投げた。
旋風で勢いが増し、鈍化薬は宝箱にぶつかって割れた。
「あれ?」
「珍しいな。あれは本物の宝箱だな」
「「「「ええ!」」」」
俺達は目当てのミミックではなく、宝箱を引き当てたようだ。
俺は近づいて、宝箱を空けた。
中にはガチガチに装飾が付いている腕輪が2つ入っていた。
「これは?」
「『鑑定』を取得している者が居ないから、ダンジョンから出たら冒険者ギルドで見てもらおう」
「わかりました」
俺は腕輪を宝箱から取り出すと、宝箱は消えた。
腕輪をメアに渡し、メアはマジックバッグにしまった。
俺達は再びダンジョンを進んだ。
▽ ▽ ▽
3階層に到着した。
景色は一変した。
完全に洞窟だ。
2階層までは大きな建物の中だったのに、階段を上がると洞窟になっていた。
「わあ!凄いねー」
メアは目を輝かせている。
「そうね。なんかワクワクするわ」
ミランもテンションが上がっているようだ。
ジル師匠は温かい目で2人を見ていた。
「そろそろ進んでいいか?」
「「は、はい!」」
2人は焦ったように返事をした。
「ダンジョンの地形で洞窟は結構ある。注意点は狭いことだ。長い武器が使えないし連携も取りにくい。それに薄暗いから奇襲されやすい」
ジル師匠はそう言いながら、ランタンを俺達に配った。
「このランタンはマジックアイテムだ。こういうアイテムが必要かどうかも、冒険者ギルドで聞くことができる」
「情報ってことですね」
「そうだ」
ジル師匠は嬉しそうに頷いた。
洞窟を進んでいると、広い空間に出た。
するとボロボロの格好をした冒険者とすれ違った。
「あれは10階層まで行かずに引き返した冒険者だ」
「どういうことです?」
「このダンジョンは10階層ごとにボスモンスターが居る。そいつを倒すと水晶が現れる。それに触れるとダンジョンの1階層まで転送されるんだ」
「えー。すごい」
さすが異世界だ。
「さっきのやつらは10階層まで行けなかったのだろう」
「ボスを倒せないと歩いて帰らないといけないってことか」
「そうだな。今日は10階層のボスまで行くからな」
「「「「え!」」」」
ジル師匠の顔は嬉しそうな表情をしていた。
▽ ▽ ▽
4階層は3階層と変わらない洞窟エリアだった。
俺達はサクサク進んだ。
モンスターと全く接敵しなかった。
2階層と同じく、道を間違えた先にモンスターが居るらしい。
4階層の階段を上がる。
5階層は洞窟エリアではあったが、ものすごく広い空間だった。
「ここはモンスターが多い。近づいてくるやつは倒しながら進むぞ」
俺達は武器を構えて、ジル師匠を追いかけた。
走っていると、目の前を何かが横切った。
「うわ!」
俺はびっくりして声を出してしまった。
「気を付けろ。ロックバットだ。強くないがうっとおしいぞ」
俺達はロックバットを払いのけながら進んだ。
ロックバットを斬りつけると何かが落ちた。
「師匠!何かが落ちたんですが」
「ドロップアイテムだ。ダンジョンはモンスターが死体にならず、アイテムになる。拾うのは6階以降でいい」
「わかりました」
ドロップアイテムは気になったが、師匠に従って進んだ。
後方で小さな明かりが見えた。
他の冒険者もやってきたみたいだ。
「師匠」
「ああ。大丈夫だ。あの距離なら合流したとしても5階層を抜けた後だ」
さすが師匠だ。
後方の冒険者に気付いてた。
前方がほんのり明るくなっている。
「階段の明かりだ。もう着くぞ」
「「「「はい!」」」」
俺達は近づいてくるゴブリンやロックバットを倒しながら進んだ。
▽ ▽ ▽
6階層に到着した。
また景色が変わった。
1階層や2階層のような建物の内部のような造りをしている。
「ここからは積極的にモンスターと戦うからな」
「「「「はい!」」」」
「この階層の注意点はオークの群れとスカイスネークという飛ぶモンスターだ。落ち着いて戦えば問題なく倒せるからがんばれ」
俺達は武器を構えた。




