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EX5.ゼネバース皇国の勇者達⑤

今日は城の外にみんなで出ることになった。

私達は訓練で近くの森でモンスターと戦わないといけないらしい。


「大丈夫かな?」

「うん。ちょっと怖いね」

私と芽衣はモンスターの戦闘に不安があった。


「わ、私も心配」

「豪ちゃんの指示に従えば大丈夫」

澪も不安そうだが、凪ちゃんは永田くんを本当に信頼しているようだ。


「そうね。訓練でも永田くんの指示で動いたら戦えたじゃない」

「ははは。みんなも頑張ってくれよ」

凪ちゃんに乗っかる紬ちゃんを見て、永田くんは苦笑いをしていた。


昨日兵士の人達と模擬戦をしたが、良い戦いができた。

それも永田くんの指示があったからだ。


「みなさん。馬車に乗ってください」

引率する兵士の人の指示で馬車に乗り込む。



馬車は城出て、王都の街を走る。


「あーすごい。異世界だ」

「そうだね」

芽衣と澪はテンションが上がっていた。


「なんかインドとかネパールの街並みに似てるわね」

紬ちゃんは先生視点だった。


凪ちゃんと永田くんは静かに外を眺めていた。


数分後、少し揺れが激しくなった。

まだ王都から出ていないのに窓からの景色もだいぶ変わった。

人はやせ細って、ボロボロの服を着ている。

建物も廃墟じゃないかと思えるほどのボロボロ具合。


「やっぱりこんなかんじか」

永田くんは外を見ながらボソッと言った。

永田くんが感じていた違和感は的中していた。


馬車はそのまま王都を出て、目的地へ向かった。


▽ ▽ ▽


「委員長!後ろだ!」

「わかってるよ!いちいちうるせーな」

委員長は背後から襲ってくるオークを火魔法で燃やした。

それにしても鍵垢状態の委員長の口はだいぶ悪い。


「鈴原!全体に攻撃を頼む!霧崎は1度引いて回復」

「いくよー」

「はい!」

鈴原は[電磁原響華]というキャラにコスプレしているらしい。

髪の毛は金髪になり、現実には見たことのない学生服を着ている。

鈴原の髪が広がり、電気がオークの群れに飛んで行った。


「霧崎平気か?」

「はい」

「先制で足止めありがとう」

「いえ」

霧崎の氷を操る力もレベルが上がり、周囲の地面を凍らせれるようになった。

まだ範囲が狭いため、オークの攻撃を少し受けてしまった。


「先生、凪、委員長!今の内に攻撃!」

「「はい」」

「うるせーよ」

鈴原と霧崎におかげでオークの群れの動きが鈍くなった。

今のうちに倒さないと。


俺も剣を持ち、オークに向かって行く。


俺は城での訓練で『剣術』『短剣術』『槍術』『弓術』を取得していた。

スキルは簡単に取得できないらしい。

これはエクストラスキルのおかげだろう。


俺は剣を振り、オークの首を切り落とす。

首は地面に落ちる。


「うわ。グロいな」

『グロ耐性』というスキルがあるならすぐに取得したい。


3人を見ると、無事にオークを倒していた。

初戦にしては良くできただろう。


特殊なモンスターや魔法を使うモンスターもいるらしい。

そこら辺の情報も得るべきだな。


▽ ▽ ▽


俺達の初のモンスター討伐は無事成功だ。


合計20体のモンスターを倒した。

オーク・ゴブリン・ホーンウルフと種類も多い。

1番大変だったのはホーンウルフ。


見た目がオオカミだから、俺達もビビっていた。

それに他に2体と違い、スピードが全然違った。


「ホーンウルフの時みたいにビビらないようにしないとな」

「そうだね」

「「「うん」」」

「霧崎が足元を凍らせてくれたのは助かった」

「よかったー」

霧崎はなぜか安心していた。

自分の選択が不安なんだろう。


「ミスっても俺とか先生がフォローするから、自信持ってくれ」

「そうよ。間違って倒されそうになったら、私のバットで助けるわ」

先生は『武器召喚』で[血祭]という名のバットを召喚できる。

普通に怖い。


「みなさん。訓練の成果が出てましたよ。これなら想定よりも早めにダンジョンに挑戦できるかもです」

「ダンジョン?」

俺は凪から聞いていたが、知らないふりをした。


「隣国にダンジョンがあるんです。そのダンジョンからモンスターが溢れることがあって、民を苦しめているんです。勇者様達にはそのダンジョンの最上階にあるダンジョンコアの破壊をしてもらいたいのです」

「危険ではないんですか?」

「普通の冒険者なら危険です。ですが勇者様達なら楽勝でしょう」

調子のいい兵士だ。

おだててやる気を出させようという算段だろ。

ただ、この兵士は嘘を付いていた。


「そのダンジョンの詳しい情報はありますか?」

「必要であれば、冒険者ギルドから情報をもらいますが」

「お願いします」

「わかりました!」

兵士は笑顔で返事をした。


こいつの嘘に乗ってやる。

どうせ断っても行く羽目になるし。

それに隣国の方が逃げやすくなるはずだ。


▽ ▽ ▽


その日の夜、メイドが本や資料を持ってきてくれた。


「獣王国ガルドランド。獣人が治める国か」

その本には獣人がいかに危険な種族かが書かれていた。

漫画やアニメの獣人とは違うみたいだ。


「この世界の獣人は危険なのか…。俺達が獣人が治める国に行って大丈夫なのか?」

俺は不安になった。


コンコン!


「入っていいよ」

入ってきたのは凪だ。


「なんかあった?」

「うん。詳しくはわかんないんだけど、もう1つの扉に入った人が死んだらしい」

「は?」

「………なんか兵士が話してた。勇者が死んだって」

「マジか」

俺は頭を抱えた。


「誰が死んだかもわかんないし、何で死んだかもわかんなかった…」

「そうか………」

「話してた兵士達は最近知ったらしいけど、死んだのが最近か前の話なのかもわからなかった…」

そういうことが起きる前に動きたかったが、力を付けるのが遅かった。


もう全員は無理だけど、俺は救えるクラスメイトは全員救いたい。


思い詰めているのを気付いた凪が俺の頭を撫でる。

「すまん」

「いいよ。幼馴染だからね」

「ありがとう」


凪を助けているのは俺と思われているみたいだが実際は違う。

俺が心を安定させていられるのは凪のおかげだ。


俺は改めて気合を入れなおした。

「まずはダンジョン攻略からだ」



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