28.レムチャ襲撃②
「さすがにデカすぎるな」
俺はスパイダーグリズリーキングの大きさに改めて驚かされた。
魔物図鑑を開いて、弱点はないか確認するが[不明]になっている。
「とりあえずやってみるしかないか」
俺は筆剣を構え、スパイダーグリズリーキングに向かっていった。
脚を斬りつけるが、皮が厚いせいで刃が通らない。
「これはやばいな」
何度も何度も斬りつけるが全然効いていない。
「効いてないのもむかつくけど、反応されないのはもっとむかつくな」
俺の攻撃は反応するに値しないのか、スパイダーグリズリーキングは微動だにしない。
「反応するまで攻撃し続けてやるよ!」
俺は何度も何度も斬りつけているが、スパイダーグリズリーキングの身体には一向に傷がつかない。
「やばいなこれ」
カキン!
「あれ?」
ひたすら筆剣を振っていたら、急に何かに弾かれる。
しかもスパイダーグリズリーキングの身体に当たる前に攻撃が弾かれた。
「なんか透明なものがある?」
グワアアアア!
急にスパイダーグリズリーキングが叫びだした。
急な叫びに俺は距離をとった。
グウウウウウ……
今まで微動だにしていなかったのにもがき始めた。
「なんだ?どうしたんだ?」
俺は戸惑ったが、これを好機と考えた。
筆剣を握り、スパイダーグリズリーキングに向かおうとした。
「そこの君!ちょっと待って」
「え?」
俺は誰かに話しかけられた。
振り向くとそこには黒ネコの獣人の男性が立っていた。
「近づいたら危ないよ!そろそろ終わるから待っててくれる?」
「は、はい」
俺は訳が分からないが頷いた。
▽ ▽ ▽
私は助けてくれた猫人族に話しかけた。
「あ、ありがとうございますでいいんですよね?」
猫人族はこっちを見てにこっと笑った。
「よく耐えてくれたね。街に入ったモンスターの処理をしてたら遅くなっちゃったよ」
「えっと。あなたは冒険者?」
「うん。冒険者のベボンだよ。話はあとにしよう。君の仲間を助けに行かないとね」
「あっ、わかりました」
「僕の仲間がすでにあの大きい奴に向かっているから、残りのモンスターを倒そう」
「は、はい。あのこれ飲んでください」
私は俊足薬をベボンさんに渡した。
「これは?」
「一時的に動きが速くなる薬です」
「凄いね。ありがとう」
ベボンさんは俊足薬を一気に飲み干した。
「じゃあ。ついてきて」
そういうともの凄いスピードで他のスパイダーグリズリーの元へ向かっていった。
「え?速すぎ……」
私はベボンさんが向かった方へ走り出した。
それからはあっという間だった。
最初にミランが戦っていたスパイダーグリズリーの首を一瞬で斬り飛ばしたと思ったら、
すぐに移動してオータルが戦っていた3体のスパイダーグリズリーを細切れにした。
私もミランもオータルもその様子に唖然とした。
もの凄いスピードで走っていたのに、まったく疲れた様子がないベボンさん。
「すみません」
「ん?どうしたの?」
「ベボンさんって、冒険者ランクはいくつなんですか?」
ベボンさんはきょとんとしてる。
「あー僕の?」
「はい」
「そんなに高くないよ。Cランク」
「「「えっ」」」
私達は驚いた。
自分達より2つランクが違うだけで、こんなにも実力が違うのかと。
「あっちもそろそろ終わりそうだよ」
「「「え?」」」
ベボンさんが指差す方向を見てみると、スパイダーグリズリーキングが大きなヘビのモンスターに締め付けられていた。
▽ ▽ ▽
俺は信じられない光景を目のあたりにしていた。
俺の攻撃を弾いた透明の物体は、大きなヘビのモンスターだった。
スパイダーグリズリーキングが急にもがき始めたのは、このヘビのモンスターが身体に巻き付いて締め上げていたからだった。
「ごめんね。獲物を取る形になっちゃって」
「あっ。いえ。俺の攻撃は全然効いてなかったので、助かりました」
俺はネコの獣人に頭を下げた。
「じゃあそろそろ終わらせちゃうね。シキ!やっちゃって」
ネコの獣人がそういうとシキと呼ばれるヘビのモンスターはスパイダーグリズリーキングの首元に噛みついた。
スパイダーグリズリーキングは見てわかるほど弱っていった。
そしてゆっくりと生気が無くなっていった。
▽ ▽ ▽
「えーっと、お二人は?」
俺は助けてくれた2人のネコの獣人に問いかけた。
「僕はベボン。そしてこっちはコティ。一応みんなと同じ冒険者だよ」
コティさんは軽く会釈をした。
「助けてくれてありがとうございます。俺はイツキって言います」
「メアです」
「オータルです」
「ミランです」
俺達は頭を下げた。
「気にしないで!ところで君達はレムチャの冒険者?」
「違います。依頼でさっき着いたんですが、兵士や冒険者の人がモンスターと戦っていたので…」
「そうなんだ。依頼って?」
俺はベボンさん達にダガルやナーコンでの出来事について話した。
「なるほど。そのローブ男の絵を見せてもらえる?」
「はい」
収納の書からローブ男の絵を取り出し、ベボンさんに渡した。
「おー凄いうまいね」
「ありがとうございます」
ベボンさんは俺を褒めるとすぐに険しい表情になった。
「コティ、これって」
コティさんも絵を確認する。
「ああ。デルタヤだ」
2人共、ローブ男を知っているようだった。
「2人はこの男を知ってるんですか?」
「ああ。俺達が数年前から追ってる組織の人間だ」
「「「「え?」」」」
俺達は驚いた。
「その話を詳しく!」
「話をしたいところだけど、今は街の修復を先に済ませよう。怪我人も多い」
「わかりました」
俺達はベボンさんに付いて行き、レムチャの街に入った。




