26.調査報告
俺達は冒険者ギルドに呼び出され、俺とメアで行くことになった。
「今回の件は本当に申し訳なかった」
部屋に入った途端、ダイールさんは頭を下げてきた。
「頭をあげてください。俺達は無事だったんで」
「いやすまない。昨日一昨日とガースの最近の仕事などを調査をしたところ、不審なところがいくつか発見された」
「不審なところ?」
「ああ。謎の金の流れや、誰かに情報を流していた形跡があった」
ダイールさんは頭を下げ続けている。
「頭をあげてください。俺達も聞きたいことと報告があるんです」
「なんだ?」
ダイールさんは頭をあげた。
「まずこの街の近辺にスコーピオン型のモンスターは出てきますか?」
「出てくるには出てくるが、滅多に出てこない」
「やっぱり。俺達を襲ってきたモンスターは大量のスコーピオン型だったんです」
「え?」
ダイールさんは驚いていた。
「憶測ですが、ガースの裏にはローブ男かその関係者が居ます。そしてその関係者はローブ男のようにモンスターを操ります」
「それがスコーピオン型だったと」
「はい。昨日、モンスターに襲われた場所に行ってきました。スコーピオン型と遭遇することはありませんでした」
「なるほど……」
ダイールさんは真剣な表情で俺を見た。
「それに厄介なのはローブ男の仲間にガースさんのような獣人が居ることです。もし獣人の誘拐が目的なら、大きな町が狙われる可能性があります」
「そうだな。すぐに他のギルドに報告をする」
ダイールは机から台座に水晶のようなものが乗っているものを取り出した。
「それは?」
「獣王国内の冒険者ギルドに連絡できるマジックアイテムだ」
ダイールさんは水晶に触れ、目をつぶった。
水晶はうっすら光った。
「これで情報は流せた」
「え?それだけ?」
「ああ。考えている事を文章にして送れるんだ」
メールより便利なもので驚いた。
「ガースの絵も描いておいたので、レムチャにその絵も渡そうと思います」
「すまないが、よろしく頼む」
ダイールさんは頭下げた。
▽ ▽ ▽
翌日、俺達はすぐにレムチャに向けて出発した。
「3人はレムチャに行ったことは?」
オータルは口を開いた。
「俺はあるぞ。父さんの付き添いで1度だけ」
「私はないわ」
「私も」
「なんか特徴のある街なのか?」
オータルは過去の記憶を思い出しているようだ。
「うーん。確か、ダガルより広かった。人もだいぶ多くて、城壁に囲まれてたな」
「それ特徴か?」
「昔すぎて覚えてないけど、にぎやかな街だったぞ。冒険者も多かったはず」
「そうか。ちょっと楽しみだな」
メアが俺の袖を引っ張ってきた。
「ん?どうしたの?」
「依頼が終わったら、服とか買いたいんだけどいいかな?」
メアのおねだり表情を直視できなかった。
思春期の俺がまた1人消え去った。
「うん。いいよ。ナーコンでは買い物できるところがなかったからね」
「やったー!ありがとー」
メアは抱き着いてきた。
本当に思春期の俺は何人死ねばいいんだ。
「ねー!前方にモンスター!リザード型5体!」
ミランが叫んだ。
「わかった!馬車を停めて!みんな行くよ」
「「「うん!」」」
俺達はモンスターの戦闘に向かった。
▽ ▽ ▽
移動して5日。
俺達は山に囲まれた街道を走っていた。
昨日からしっかり整備された道が現れたので、馬車が揺れないので助かった。
「そろそろ着くんだよね?」
「うん。地図だとそうなんだけど」
ミランは地図を開いて確認する。
「あっちじゃね?あの煙の場所」
オータルが指差す方向を見ると確かに山の向かいに煙が立っている。
「おかしくないか、あの煙」
俺は嫌な予感がした。
「ミラン。悪いけどあの煙の場所に急いでくれ」
「え?わ、わかったわ」
ミランは手綱を持ち、全速力で煙の方へ馬車を走らせた。
少しずつ煙の発生場所が見えてきた。
「おい。あれって」
壊れた城壁に囲まれている街から煙が上がっている。
「ああ、レムチャだ」
「嘘でしょ」
メアは口を押えた。
目凝らしてみると街はモンスターに襲われている。
兵士や冒険者と思われる獣人達が城壁の外で戦っていた。
「ミラン。急いでくれ!」
「わかった!」
俺達は半壊状態のレムチャの街へ急いで向かった。
▽ ▽ ▽
レムチャの街の城壁に到着した。
城壁は壊れ、冒険者や兵士達が大量のクマのモンスターとトリのモンスターと戦っていた。
俺の嫌な予感が当たってしまった。
「みんな。とりあえず近くのモンスターの討伐だ」
「「「わかった」」」
俺はシラユキとゴウキを召喚した。
目の前には腕が4本のクマのモンスターや背中にとげがあるクマのモンスターが大量に居た。
「手伝います!」
「き、君達は?」
戦っている兵士が問いかけてきた。
「ダガルの冒険者イツキです!依頼でレムチャに着ました」
「そうか。すまないが手伝ってくれ」
「はい!シラユキとゴウキは魔法でトリのモンスターをお願い」
ガルルル!
「ぎょいー」
シラユキとゴウキは火を吐くトリのモンスターや2つ首のトリモンスターに向かっていった。
「メア、俊足薬を」
「はい!」
俺はメアから俊足薬を受け取り、飲み干した。
そして筆剣を取り出して構えた。
「行くぞ!」




