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23.違和感と荒野の涙

俺達は宿に戻った。


俺とオータルは食堂に行き、女性陣は湯浴みをしたいからと宿屋でお湯を貰い部屋へ行った。


「明日は特にやることないから、今日はお酒を呑んでもいいよ」

「本当か?」

「呑み過ぎるなよ」


俺とオータルが話していると、食堂の店員が話しかけてきた。

「ご注文は?」

「エール!」

「おすすめの飯を適当に。あと甘めの飲み物あります?」

「甘めの飲み物ですか?荒野の涙という飲み物がありますよ。とても飲みやすいので女性にも人気です」

「ならそれをください」

「わかりました」

店員は厨房に戻って行った。


「なんか今日はいろいろあったな」

「そうだな。ゴーレムなんて初めて見たぞ」

「あいつを斬れるくらいに鍛えないとだよな。街に戻ったら師匠に鍛え直してもらおう」

「あと俺達は遠距離が問題だよな。ミランも中距離が限界だし」

「一応シラユキが遠距離いけるはず。あとゴウキもいけるかも」

「急な襲撃とかだと召喚するのが遅れるかもだろ?」

「そうだよな。唯一魔法を覚えられる可能性がある俺が魔力が無いのは痛いよな」

「お待たせしました」

店員が飲み物を持ってきてくれた。


「エールと荒野の涙です」

荒野の涙はオレンジ色の液体だった。


「よーし呑むぞ。乾杯!」

俺らは乾杯をして呑み始めた。


荒野の涙は完全にオレンジジュースだ。

少し癖があるが甘くて飲みやすい。


俺とオータルが食事を進めていると、メアとミランが食堂に降りてきた。

2人とも泥が落ちて綺麗になっていた。


「おまたせ。え?イツキがお酒?」

「違うよ。荒野の涙っていう甘い飲み物だよ」

「なんだびっくりした―。てかオータルはエール?」

「イツキの許可が出た」

「じゃあ私もエールにしようかなー。荒野の涙も気になるな。ミランはどうする?」

「私も今日は疲れたからエールにするかな」

「じゃあ私も」

2人は飲み物を注文し、食事を始めた。


メアは何か納得しないような感じで口を開いた。

「イツキ、今日いろいろおかしくなかった?」

「あーなんか前半は上手くいかなかったよね」

「いや、違うよ」

「え?」

「安全なルートにモンスターの上位種が出た、水樽サボテンが危険だった、盗賊に襲われた。これってどうなのかな?」

「冒険者をやってたら、こういう1日があってもおかしくないんじゃない?」

「そうかな?他にもいろいろ気になることがあったんだけどなー」

「うーん」

俺はメアの違和感に的確な回答をしてあげることが出来なかった。


「まあ考えても仕方ないよね。エールおかわり」

メアは2杯目のエールを頼んだ。

オータルとミランを見ると、泣いているオータルをミランが慰めていた。さすがに慣れているのだろう。


この街の食事はスパイシーで美味いが水分がどんどん減っていく。

「荒野の涙が美味し過ぎるんだけど。樽で買って、収納の書に入れておこうかな」

「そんなおいしいの?」

「俺がこの世界に来て1番うまい飲み物!」

「イツキがそこまで言うなら飲んでみたいな。ちょっと頂戴!」

メアが俺が飲んでいた荒野の涙を飲んだ。


「え?え?」

メアは思春期男子を舐めている。間接キスなんて!俺が耐えられるわけない。


「それ全部飲んでいいよ。新しいの頼もうと思ってたから」

「ほんと?ありがとーってこれお酒じゃない?」

「え?」

「多分お酒だよ。お酒の味するもん」

俺は店員を呼び確認すると、ちゃんとお酒だった。


クレイジーオレンジというもので、果物の段階でアルコールが入っているらしい。

甘ければ甘いほどアルコールが濃くなるみたいで、アルコールあまりを感じないから飲みやすく、お酒に気付かずに食べてしまったモンスターが酔って暴れることからこの名前が付いたらしい。


「なんかお酒って気づかなかったら平気だったけど、お酒と知ったらなんか気分が上がってきた」

「イツキ、大丈夫?」

「平気なはず。いやなんか気持ちよくなってきた」


俺の意識はそこでなくなった。


▽ ▽ ▽


俺は目が覚めた。

頭が少し痛い。

横を見ると隣のベッドにはメアがいた。


俺は目をつぶった。

「夢だ。夢だ」


俺はもう1度目を開けて隣を見る。

隣のベッドではメアが寝ている。

俺は頭を抱えた。


俺は物音を建てないように部屋から出て、食堂に行った。


食堂にはミランが居た。

「あっ!起きたのね」

「え、えーとおはよう」

「おはよう。二日酔いは平気?」

「少し頭が痛いけど平気」

「そう。よかったわね」

ミランは普通に対応していた。


「あのさ。俺、昨日の記憶が無くて」

「飲み物がお酒だったみたいね」

「初めて飲んだんだよ。なんか俺やばいことしてない?」

「すごかったわよ」

「え?」

俺は顔が青ざめた。


「起きたらミアが隣で寝てるし。俺なにしたの?」

「ははは。本当に覚えてないのね」

「え?」

「全然普通だったわよ。迷惑もかけてない」

「良かった―」

「まあ私には少し迷惑かけたかな」

「え?俺どうだったの?」

「すごい熱かった。私達への日ごろのお礼や今後頑張ろうとか。1人1人褒め殺していたわよ」

「あーーー!」

俺は急に恥ずかしくなった。


「最近入った私にもそれはそれは熱い言葉をかけてくれたわ」

「ごめんごめんごめん!」

「いや嬉しかったわよ。迷惑だったのはイツキが熱くオータルを褒めたことよ」

「あっ!」

「そのせいでいつもの倍は泣いてたわ」

「なるほど」

「そのせいで離してくれなくて、仕方なく私が男子部屋で寝ることにして、イツキには女子部屋で寝てもらったのよ」

「そういうことかー。よかったー何もしてない!」

「うーん。それはどうかなー」

「え?」

ミランのその一言で恐怖を覚えた。


「食事の後半から部屋に行く時までずーっとメアを褒めてたわよ。褒められすぎてメアは酔いが覚めていたわ」

「え?」

「もしすぐ寝ないで、イツキの褒めが部屋に入っても続いていたら。たぶんメアは死にたくなるぐらい恥ずかしくなってるかもね」

「まずいまずいまずい」

「まずいと思うなら、部屋に帰って何をしたか聞いてみたら?もし悪いことをしてたらすぐ謝る!」

「行ってくる」

俺は食堂を出て、すぐに女子部屋に行った。


女子部屋に入るとメアは起きていた。

俺はすぐに土下座をした。

「メア、昨日は申し訳ありませんでした!」

メアは困惑しているようだった。


「どうしたの?てかその格好は?」

「これは土下座と言って、元の世界では最上級の謝罪をする時の格好です」

「そうなんだ。それで何を謝ってるの?」

「昨日酔っぱらって迷惑をかけたとミランに教えてもらったんです」

「うーん。迷惑ではなかったけどな。私は嬉しかったけど」

「ミランが言うにはずっと熱く褒め続けていて、もし部屋に入ってからも褒め続けていたらメアが死ぬほど恥ずかしい思いをしてるかもしれないと」

「恥ずかしかったよ」

「すみません!!」

「でも本当に嬉しかったよ。だから謝らないで。私も謝らなきゃいけないことあるし」

「え?」

「いや、なんでもないよ。謝らないでって言っただけ」

「わかった。でも本当にごめん」

「もうわかったから。大丈夫だよ」


メアに無事に許しをもらうことができた。


▽ ▽ ▽


俺は夕方になるまで男部屋で時間をつぶした。


やっとオータルが起きてきた。

「おい。寝過ぎ!」

「悪い!昨日はだいぶ呑み過ぎた」

「昨日の記憶どこまである?」

「ミラン達が来たところまでは覚えてる」

「よかったー」

「え?」

「何でもない!そろそろ夕飯だから降りるぞ」

「わかった!」

俺とオータルが食堂に付くと、メアとミランが既に到着していた。


「遅くなった」

「いいよ。私達も今来たところー」

「オータル。起きたばっかり?」

「あー昨日は呑み過ぎた」

「明日は朝から出発なんだから、ちゃんとしなさい」

「わかってるよ」

ミランはお母さんみたいになっていた。


「今日は早めに切り上げて寝るからね。お酒は絶対禁止」

「「ふふふ」」

メアとミランは俺をからかうかのように笑った。


「さすがに頭が痛くて飲めないわ。昨日イツキが飲んでたやつでも飲もうかな?」

「売り切れ」

「え?」

「売り切れ。水にしろ」

「わ、わかった」

俺の様子にまたクスクスし始めるメアとミランを無視して、料理の注文をした。


明日からの予定の確認をしながら食事をしていると、ガースさんが現れた。

「天啓の導きの皆さん。昨日はありがとうございました。依頼の報酬を持ってきました」

ガースさんは俺に革袋を渡してくれた。


「ありがとうございます」

「助かりましたよ。盗賊の件も」

「それは良かったです」

「次はどちらに行くんですか?」

「レムチャの街へ向かいます」

「そうですか、なかなか長めの旅路ですね」

「まあ依頼なんでね」

「明日は何時くらいに出発されるんですか?」

「朝食を食べたらすぐに出発します」

「わかりました。今回は本当に助かりました。お気をつけてください」


ガースさんは頭を下げると帰って行った。


俺達は今後の予定の確認を進めた。




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