22.荒野のモンスター
俺達の後ろにはロックゴーレムの大人サイズが3体、子供サイズが5体。
それに泥のゴーレムの大人サイズが3体、子供サイズが10体。
そして尾がハンマーになっているサソリがいた。
「みんなやるぞ」
「「はい!」」
「おう!」
俺は召喚絵巻から、シラユキとゴウキを召喚した。
「シラユキはサソリのやつを!ゴウキとオータルはロックゴーレム!メアとミランは泥のやつを頼む」
「「「わかった」」」
ガルルルルルル!
「ぎょいー」
5人はモンスター達に向かって行った。
シラユキは尾がハンマーのサソリの目の前に走って行った。
多分名前はハンマースコーピオンだろう。
ガルルルルルル!
シラユキが唸ると空に雲が現れ、雲から氷塊が落ちてきた。
ハンマースコーピオンはそれを尾のハンマーで破壊した。
ガルルルルルル!
シラユキがまた唸ると、シラユキの頭上に氷の槍が10本現れた。
ガル!
氷の槍はハンマースコーピオンに向かって飛んでいく。
ハンマーで2本は破壊されたが、残りの8本がハンマースコーピオンの身体を貫通した。
メアはモーニングスターを振り回し、泥のゴーレムの宝石を砕いていく。
「ミラン!あんまり強くやり過ぎるとダメかも。泥で服が汚れる」
ミランのサーペインブレードを振り回し、同じように宝石を砕いた。
「言うのが遅いわ。もう手遅れ」
メアとミランの方は何も問題がないようだった。体中が泥だらけになっていたが。
そしてゴウキとオータルも圧倒していた。
オータルは同じヘマはしなかった。
俊足薬を飲み、全力でタックルをしていく。
「さっきは良くもやってくれたな。跳突」
ゴーレムにぶつかって跳ねてを繰り返し、ピンボールのように突進していく。
倒れたゴーレムの宝石をゴウキが金棒で砕いて行った。
「慣れるとだいぶ余裕で倒せるみたいだな」
みんなが俺の元に戻ってきた。
「余裕で倒せるけど、イツキには不向きな相手だね」
「そうだな、倒せたとしても泥のやつだけだな。さすがに筆剣じゃ刃が通らない」
「まあ任せろ!硬い相手なら得意だから!」
「同じミスはしないでくれよ」
「わかってるよ」
俺は自分が戦えない鬱憤をオータルをからかうことで発散した。
「じゃあ水樽サボテンの群生地に向かうよ。女性陣は泥を落とそうか」
「はーい」
「すぐやるわ」
俺達は女性陣の入念な泥落としを待ち、出発した。
▽ ▽ ▽
群生地があると言われた洞窟に到着した。
ここに来るまで、何回かモンスターに出会ったが全部ゴーレムだった。
魔物図鑑で大人サイズはボスロックゴーレム、泥のゴーレムはマッドゴーレムとボスマッドゴーレムという種類だった。
「やっと着いた」
「このルート以外で来てたらどんだけモンスターと戦うことになったんだ」
「これだけモンスターが町の近くに居るのに、冒険者が少なくてよく成立するよね」
「兵士がだいぶ優秀なんでしょ」
「そうかなー」
メアはいろいろ気になっているようだが、ミランが言っていることが正しいだろう。
「じゃあ洞窟に入るか」
俺達は洞窟の中を進んだ。
洞窟の中は、光っている苔があるおかげで普通に歩くことができた。
2分ほど歩くと、光る苔がたくさんある池があった。
「イツキ!あれじゃない?」
池のほとりに太めのサボテンが何本も生えていた。
俺が知っているサボテンより針が太かった。
「たぶんそうだな」
「これは切って回収?それとも抜く?」
「うーん。聞くの忘れてたな。一応抜くか」
「よーし。俺が引き抜いてやるよ!」
オータルは水樽サボテンに近づく。
ボン!
オータルが水樽サボテンに手を伸ばした瞬間、破裂音が鳴って水樽サボテンの針が飛び散った。
「あぶな!俺が鎧を来てなかったら死んでたぞ」
「びっくりしたよ」
「本当に!」
「近づいたのが鎧を着てたオータルで本当によかったよ。てかガースさんも言っといてくれよ」
「まあ針が無くなったおかげで取り易くなったけどな」
オータルは10本ほど水樽サボテンを引き抜いて、マジックバックにしまった。
「こんなもんでいいか?」
「うん。いいと思う」
「じゃあ戻るか」
女性陣は池の水でまだ泥を落としていた。
「メア、ミラン。行くぞ!イツキもなんか言ってくれよ」
「まあ女の子だからね。身だしなみが気になるんでしょ」
「そんなもんか?服なんて何でもいいだろ」
「それ、ミランに絶対言うなよ」
「お、おう」
俺達は女性陣を待っていると、洞窟の入り口の方から数人の足音が聞こえた。
「オータル。気付いた?」
「おう。誰か来たぞ」
オータルは兜をかぶった。
「敵意があればすぐに攻撃していい」
「わかった」
「出来るだけ無力化して拘束がいい。俊足薬を呑んでおけ」
「おう」
オータルは俊足薬を呑んだ。
数秒後、現れたのは獣人3人だ。
全員爬虫類の獣人のようだ。
「お?いますよ?」
「ばれてるみたいだな」
「いいですか?やっちゃって」
「手足の1本はいいが殺しはするなよ」
「わかりました」
爬虫類の獣人は武器を取り出した。
「オータル。鈍化薬はいるか?」
「いや、洞窟の中なら問題ない」
「ならもういいぞ」
「行ってくる!跳突」
オータルはものすごいスピードで壁にぶつかり跳ね返った。
「は?なんだ?」
オータルは何度も壁で跳ね返ることでスピードがどんどん上がって行き、洞窟に現れた3人を吹き飛ばしていく。
俺はシラユキとゴウキを召喚し、3人を踏み潰して動けなくした。
「メア、ミラン!終わったか?」
俺が池の方を見ると2人は武器を構えていた。
時間を気にせず泥を落としていたが、さすがに敵が来ていることに気付いていたみたいだ。
「縄とかあるなら拘束しておいて」
「わかった」
「ああああああああああ!」
ゴウキが押さえている獣人が急に叫び始めた。
良く見てみるとゴウキの金棒が雷を纏っていて、そのせいで痺れているようだ。
今まで見たことなかったが、魔法が使えるようになっていたみたいだ。
そういえばシラユキもLv3で魔法を使っていた。
「全員拘束したよ。まだ気絶してるけど」
「とりあえずオータルが戻ってくるのを待とう。俊足薬と跳突で多分洞窟の入り口まで行っちゃってるから」
案の定オータルは洞窟の入り口まで止まれなかったらしい。
「おつかれ」
「おう。あんなに止まれなくなるとは思わなかったわ」
「こいつらどうする?」
「多分盗賊だろ。ジルさんも警戒するのは他種族だけじゃないって言ってたけど本当だったな」
「盗賊は冒険者ギルドに連れて行けばいいのか?」
「街の入り口で預かってもらえるだろ」
「じゃあ連れて行くか。ゴウキ!」
ゴウキが気絶している3人に金棒を当てる。
「「「あああああああああああ!」」」
「ありがとう」
俺達は盗賊3人を連れて、洞窟を出た。
▽ ▽ ▽
やっと街が見えてきた。
洞窟から出た後もゴーレムに数回襲われたが、何の問題もなく倒した。
盗賊が1度目を覚ましたが、ゴウキに見張らせているので叫び声が一瞬聞こえてまた静かになった。
「イツキ!ガースさんが居るぞ」
「え?」
ミランが馬車を止めた。
俺は馬車を下りてガースさんの元へ行った。
「ガースさん。どうしたんですか?」
「少し時間がかかっていると思い、心配でここで待ってました」
「すみません。いろいろと事件がありまして」
「事件?」
「慣れていないモンスターとの戦闘と盗賊に襲われまして」
「え?盗賊?」
「はい。獣人の盗賊です」
「その盗賊は今どこに?」
「馬車に乗ってますよ」
「それなら、みなさんお疲れでしょうから私が盗賊の対応をしておきますよ」
「良いんですか?」
「はい」
「じゃあお願いします」
俺は盗賊をビンタして起こし、ガースさんに引き渡した。
「それじゃあ、先に戻ってお休みください」
「あっ!水樽サボテンはどうします?」
「水樽サボテン!忘れていました。マジックバックがあるので、ここで預かります」
「わかりました。オータル!水樽サボテンはここで納品する」
「わかった」
オータルは御者台から降り、ガースさんに水樽サボテンを渡した。
「ご依頼を受けていただき、ありがとうございました。報酬は明日、宿に持って行きますので」
「わかりました!」
俺達はガースさんと別れ、宿へ向かった。




