21.新生天啓の導き
俺達の目の前にはゴブリンが5匹いた。
俺は眠いがミランの戦闘が見たいので、目をこすりながら頑張っている。
メアが鈍化薬を投げて、ゴブリンの動きが遅くなる。
ゴブリンに近づいたミランは持っている大剣を横に振った。
「え?届かなくね?」
どう考えても届かない位置で剣を振ったミランに俺は驚いた。
絶対当たらないと思ったが、俺の予想は外れた。
ミランの大剣の刃の部分が外れ、リーチが伸びてゴブリン5匹の身体を真っ二つにした。
あれは元の世界のアニメで見たことがある。蛇腹剣だ。
「ミランお疲れ」
「うん。どうだった?」
ミランは不安そうだった。
「完璧だったよ。てかその武器は?」
「お父さんが使ってた武器でサーペントブレードっていうマジックアイテムなの。魔力を込めると刃が分解されて鞭のように攻撃できるの」
「そうなんだ。すごいね」
「ありがとう」
中距離の対応ができるミランのおかげで、天啓の導きの攻撃の幅が増えた。
「じゃあ剥ぎ取りを終えて、出発しよう」
「「はーい」」
メアとミランは剥ぎ取りに向かった。
「オータル。さすがに眠いから寝させてもらうけどいい?」
「おう。昨日は悪かったな」
「気にするなとは言わない。街に帰ったらおごれよ?」
「わかったよ」
俺は馬車に乗り込み。眠りについた。
▽ ▽ ▽
翌日、俺達はナーコンの街に到着した。
ナーコンの街は荒野の中にあり、石で出来た城壁に囲まれていた。
入口は1つで、入口には4人の兵士がいた。
俺達は獣人なので、馬車の中を確認されただけで街に入れた。
街の広さは思ったより広くなく、ダガルの街の半分以下のサイズだった。
暮らしている獣人の種類も、爬虫類が多いように感じた。
「とりあえず俺は宿を取ってくる。3人はギルドでギルドマスターに会いに行ってくれ」
オータルは堅苦しいのが嫌なのか、雑務を引き受けてくれた。
「わかったよ」
「馬車の移動をしないといけないでしょ?私もオータルについて行くわ」
「忘れてた。悪いが頼む」
俺達は二手に分かれて、行動をすることにした。
俺とメアは冒険者ギルドに到着した。
建物は小さかった。
「なんか想像以上に小さいな」
「多分冒険者があんまり多くないんだよ。それに兵士が多いみたいだから、モンスターの討伐も兵士がやっちゃうんじゃない?」
「なるほどね」
俺達はギルドに入り、受付でギルドマスターを呼んでもらうと部屋に案内された。
数分待つと1人の獣人が現れた。
首が長くて鱗が付いている、手足があるからトカゲかと思ったが多分ヘビの獣人だ。
「わざわざこんなところまで来てくれてありがとう」
「いえ、依頼ですので。Eランクパーティ天啓の導きのイツキです」
「私はオータル冒険者ギルドマスターのダイールだ。それで、襲撃犯の情報を持ってくると聞いたが?」
「こちらです」
俺はローブ男の情報をまとめた紙を渡した。
「ほー。これはすごい」
「ローブ男は大量のフォレストウルフを操っていました。上位種も確認できるだけで7匹、空を飛ぶモンスターも居ました」
「なるほど。これは警戒しないとまずいな」
ダイールさんは長い舌をペロペロしていた。
「空からの襲撃に備えた方がいいかもしれません」
「わかった、ありがとう。この情報のおかげで、兵士達を動かすことができそうだ」
ダイールさんは頭を下げた。
「私達は明々後日出発する予定なので、何かありましたらご連絡ください」
「わかった」
俺達は冒険者ギルドを出て、宿屋に向かった。
▽ ▽ ▽
俺達は宿屋で夕飯を食べることにした。
「オータルとメアはお酒禁止ね」
「わかったよ」
「えーまじかよ」
メアは納得しているが、オータルは不満そうだ。
「ミランはお酒飲むの?」
「嗜む程度に呑むわ。呑み過ぎるとね」
ミランはメアとオータルを見た。
「あーそうだよね」
「イツキも大変だったみたいね」
「ははは」
俺達は注文をし、食事を楽しんだ。
ナーコンの食事は香辛料を結構使った料理だった。
オータルは酒が飲みたくなると叫んでいたが無視をした。
「お食事中すみません。天啓の導きの皆さんですか?」
背が低く、鱗がうっすら青いトカゲっぽい獣人が話しかけてきた。
「そうですけど、あなたは?」
「私は冒険者ギルドの職員のガースと申します。ギルドマスターに言われてみなさんを探していました」
「そうなんですか。どうしました?」
「今この街は水不足なんです。天啓の導きの皆さんが大丈夫であれば、水樽サボテンを収穫してきてほしいのですが」
ギルドからの依頼のようだ。
「全然いいですが、場所はどこら辺なんですか?」
「街から1時間ほどで行ける洞窟の中に水樽サボテンの群生地があります。こちらが地図です。一番安全に行ける道も記載しています」
ガースさんから地図を受取って見てみたが問題なさそうだ。
「これなら平気そうですね。その依頼受けます」
「ありがとうございます。私の方で処理はしておきますので、明日は宿から直接群生地に向かっていただいて大丈夫です」
「わかりました」
ガースさんは頭を下げ、宿から出て行った。
「依頼を受けたから、絶対酒は禁止な」
「わかったよ!」
オータルは不満そうだがしぶしぶ納得してくれた。
俺達は食事を終わらせ、借りている部屋へ行った。
当然、男部屋と女部屋の2部屋だ。
▽ ▽ ▽
翌朝、俺達は街を出発した。
「オータル。地図の通りに行けそうか?」
「大丈夫だ。馬車も通れると思う」
「こういうところのモンスターと戦ってみたいから、居たら止まってくれ」
「了解!」
馬車は荒野の中進んでいく。
「イツキ!見たことないモンスターだ」
馬車から降りると、1mサイズの大きいサソリが2種類いた。
尾の部分がものすごく長いのと尾の斧のようになっているサソリだった。
「メア、ミラン。魔物図鑑に描くから、時間稼ぎしてくれない?」
「任せて!」
「わかった」
「俺は?」
「毒があるかもしれないから、近距離戦は禁止」
「くそー」
2人は2匹のサソリに向かって行った。
俺は魔物図鑑を開き、急いでサソリのモンスターの絵を描いた。
サソリのモンスターの正体はランススコーピオンとアックススコーピオンだった。
「よし、毒はない」
「じゃあ行っていいか?」
「良いよ。殻がものすごい硬いらしい。お腹の部分への攻撃が効きやすいみたい」
「わかった!」
オータルはランススコーピオンとアックススコーピオンに向かって行った。
「メア、ミラン。毒はないらしいから倒すぞ。腹が弱点らしい」
「わかった!」
「うん。これ飲んで!」
メアはオータルに俊足薬を渡した。
オータルはすぐに飲み干し、ランススコーピオンに突っ込んでいった。
オータルは突進しバランスを崩したランススコーピオンの尾を掴んだ。
「一緒に行こうぜ」
オータルはつかんだまま岩に突っ込んだ。ランススコーピオンの殻は割れ、絶命していた。
「ミラン。まだ鈍化薬が効いてるから今のうちに」
「わかったわ」
ミランはサーペントブレードを振った。
サーペントブレードは分解され伸びていき、アックススコーピオンの尾に引っ掛かって巻きつく。
「よいしょ!」
ミランはサーペントブレード持ち上げ、一本釣りのように持ち上げて地面にたたきつけた。
アックススコーピオンは仰向けになって動かない。
ミランは近づき、腕を振りかぶる。
「岩爪!」
ミランの腕が鋭い1本の岩に爪になり、その爪をアックススコーピオンの腹に突き刺した。
ミランの岩の爪は、アックススコーピオンの殻まで貫通していた。
「ミラン、すごいな。今のは?」
「私、『強爪の獣』ってエクストラスキルで、爪を岩のように固くして攻撃したりできるの」
「すごいね」
俺はミランのエクストラスキルに感心していると、オータルの叫び声が聞こえた。
「うわあああああ!すまん。なんかやっちまった!」
オータルの叫び声が聞こえた。
オータルの方を見ると、岩でできた人型の子供のような何かに捕まれていた。
「おい!なんだよそれ」
「俺が突進した岩がこいつらになったんだよ!」
オータルは数体の岩に捕まれてた。
「メア、ミラン。オータルの救出を頼む」
「「はい!」」
メアとミランはオータルの方へ向かって行った。
俺は召喚絵巻でゴウキを召喚した。
「ゴウキ!あの岩のやつを壊してくれ!」
「ぎょいー!」
ゴウキもオータルの元へ向かって行った。
メアの鈍化薬をかけるが、あまり効き目がなさそう。
ミランの剣も効いていない。
唯一効いているのは、ゴウキの金棒だけだった。
「オータル、ダメージは?」
「捕まれて完全に動けないが、ダメージはない」
「わかった。余裕ありそうだから、魔物図鑑を使う!」
俺は魔物図鑑に岩のモンスターを描く。
魔物図鑑にはロックゴーレムと出た。
「ロックゴーレムだって!弱点は目みたいな宝石!」
「ぎょいー!」
ゴウキはロックゴーレムの目を金棒で壊そうと振りかぶる。
「ゴウキ!ダメだ!」
振りかぶった金棒を下すゴウキ。
「力で宝石を引っ張り出せるかやってみて。高く売れるみたいなんだ」
「ぎょいー!」
ゴウキはヘッドロックのように宝石を鷲掴みし、引き抜いた。
宝石を引き抜かれたロックゴーレムは動かなくなった。
「よし!ゴウキ残りのやつも頼んだ」
「ぎょいー!」
宝石が抜かれたロックゴーレムは身体がもろくなっているのか、オータルの力だけで壊すことができた。
「悪い!助かった。ゴウキもありがとな!」
「ぎょいー」
ゴウキはオータルに返事をし、召喚絵巻に戻って行った。
「オータル。気をつけてくれよ」
「まじで悪かった。気をつける」
「てか安全ルートの割にモンスターがいるな。これくらいは普通なのか?」
「そうだな。単純に俺達が見たことない奴が多いからそう感じるだけじゃないか?」
「そうかもな」
俺とオータルが話していると、メアとミランが俺達の後ろを見ている。
振り返るとロックゴーレムの大人サイズが3体も居た。




