15.大量発生
俺達が冒険者ギルドに着くと、中はバタバタしていた。
俺はジャドルさんを見つけた。
「ジャドルさん、何があったんですか?」
「イツキか。フォレストウルフが大量発生し街に侵入したようだ」
「え?」
「洞窟にいた兵士は怪我を負い、確認は出来ていないが洞窟の外にはまだ大量のフォレストウルフがいるみたいだ」
「なるほど。洞窟には誰か向かっているんですか?」
「ジルが数名を連れて向かっている。ミランも一緒だ」
「わかりました。俺達もすぐに向かいます」
「頼んだ」
俺とメアはフォレストウルフの入ってきた洞窟を確認し、向かった。
街の中には数匹のフォレストウルフがいたが、冒険者達が対処していた。
住民達は鐘が鳴った段階で家の中で隠れているようだ。
「メア、まだ着かないの?」
「侵入された洞窟は冒険者ギルドから一番離れてるところなの」
「てか大量発生って言葉通り?」
「言葉通り。原因はわかんないけど、魔力が多い場所で起きるって聞いたことがある」
「ってことは発生源がない?」
「いや、わからない。自然現象みたいなものだから」
「なるほど。メア、俊足薬を出せる?3本ほど」
「出せるよ。精製」
メアの手には小瓶が4つ現れた。
「これって効力は?」
「10分くらい」
「わかったとりあえず3個貰うね」
俺は俊足薬が入っている小瓶を貰い、1つ飲み干した。
メアも1つ飲み干し、急いで洞窟に向かった。
▽ ▽ ▽
洞窟の前に到着すると30名近い冒険者がフォレストウルフと戦っていた。
フォレストウルフは50匹近くいた。
俺は指揮をしているジル師匠を見つけた。
「師匠!」
「イツキか!ここをどうにかしないと一般人に被害が出る。だから私はここを離れられない」
「じゃあ俺もここで戦いますね!」
「いや、イツキ達は洞窟に入って来れないように洞窟の外のフォレストウルフを間引いてくれ。ここが落ち着いたら私も向う!」
「わかりました!」
俺達は洞窟に向かった。
洞窟の目の前でオータルが戦っていた。
「オータル!」
「お!やっと来たか!」
「洞窟の外に行くぞ。街に入って来れないようにするんだ」
「まじか!」
オータルと合流し、洞窟の中を通る。
洞窟の中にも大量のフォレストウルフがいた。
「オータル、道を開けてくれ!」
「任せな!メア、兜と薬をくれ」
「うん!」
オータルは俊足薬を飲み、兜をかぶった。
「よっしゃ!行くぜ!跳突」
オータルは、洞窟の壁にぶつかったと思ったら跳ね返りながら洞窟を進んでいく。
「おらおらおらおら!」
俊足薬の効き目もあって、洞窟の中のフォレストウルフがどんどんオータルに轢き殺されていく。
俺とメアはオータルの後ろを走りながら、討ち漏らしを処理していく。
「メア!オータルと一緒に洞窟の入り口で戦ってくれ」
「イツキはどうするの?」
「俺は大量発生の原因と発生源を探してみる」
「原因なんてないかもしれないよ」
「原因がなければそれでいい。今いるフォレストウルフを倒すだけだから。でも原因があったらフォレストウルフを倒しても倒しても数が減らない可能性がある」
メアは少し悩んだような表情をした。
「わかった。でも気をつけて」
「うん」
「これ持って行って」
俺はメアから2つの小瓶を受け取った。
「これは?」
「ポーション。売り物だから少ししか回復しないけど」
「ありがとう」
俺はポーションを収納の書にしまった。
洞窟の入り口に到着した。
入口の周りには100匹以上のフォレストウルフがいた。
「オータル、ありがとう助かった」
「おう」
「ここは任せたから」
俺はフォレストウルフが現れている方向に向かった。
行く道を塞ぐフォレストウルフを切り刻んでいく。
フォレストウルフは山の麓方面から来ているみたいだ。
「自然現象って割には、統率がとれてる気がするんだけど」
街中や洞窟の周りのフォレストウルフには統率を感じなかったが、山の麓から街に向かっているフォレストウルフには統率力を感じた。
ワオーン!
「ん?」
俺の目線の先にはフォレストウルフより2回りほど大きいフォレストウルフがいた。
「あいつが親玉か。エリートフォレストウルフってとこか?」
ワオーン!
エリートフォレストウルフが吠える。
俺に気付いたようだ。
周りにいたフォレストウルフが俺に向かってくる。
「やっぱりあいつが統率していたのか」
俺は攻撃してくる大量のフォレストウルフを切り刻む。
「さすがにきつい」
召喚絵巻からシラユキとゴウキを召喚した。
「2人とも、周りの雑魚を頼む!」
ガルルルルルルルル!
「ぎょいー」
シラユキは周りのフォレストウルフを前足で薙ぎ払い、ゴウキは自分より大きい棍棒を振り回して倒していく。
俺は全速力でエリートフォレストウルフに向かって行く。
「おりゃ!」
首を狙って筆剣を振り下ろすが、後ろに跳ばれて避けられる。
「さすがエリート、動きも速くなってるんだな」
ドゴーン!
後ろでものすごい音がする。
多分シラユキが氷塊を落としたのだろう。
俺は筆剣を構える。
エリートフォレストウルフは俺に跳びかかってきた。
さすがに流し受けできず、弾こうとするが体重も乗っているせいか弾けない。
俺は潰される前に横に飛び込んで攻撃を避けた。
「うわーやばいかも」
俺は俊足薬を飲み、筆剣を構え直した。
エリートフォレストウルフはまた同じように跳びかかってくる。
俺はギリ前足が当たらなそうなところに退き、着地と同時に前足を斬ってすぐ距離を取った。
「斬れたけど浅いな」
エリートフォレストウルフは斬られたことに怒っているのか、走って俺に突っ込んできた。
「ぐふっ」
俺は吹き飛ばされた。
筆剣で受けたから噛みつかれはしなかったが、ものすごい衝撃だ。
俺の身体は木にぶつかった。体中に痛みが走る。
「やばいかも」
エリートフォレストウルフは動けなくなった俺に跳びかかってきた。
「これはだめだ。避けれない」
俺は死を覚悟した。