14.リベンジマッチ
俺は目の前の2匹のエリートゴブリンに向かって行った。
筆剣でエリートゴブリンを斬りつけるが、剣で防がれる。
しかし前回とは違い、防いだ勢いでエリートゴブリンが体勢を崩す。
俺は脚払いをしてエリートゴブリンを倒した。
トドメを刺そうとすると、もう1匹が俺に剣を振り下ろした。
俺は剣で受け流して距離を取る。
その間に倒れていたエリートゴブリンが立ち上がった。
「2匹いるのはなかなかだるいな」
2匹が俺に突っ込んでくる。
1匹の攻撃を受け流し、もう1匹の剣を持っている手首を切り落とす。
グギャアアアアア!
1匹が痛みで叫んでいる間、懐に入り胸に筆剣を突き刺した。
「よし。1匹目」
もう1匹のエリートゴブリンは仲間がやられたことで激怒しているようだ。
ギャア!
剣を振り回しながら俺に向かってくる。
受け流すことが出来ず、筆剣で受けた。
「これならいける」
俺はエリートゴブリンの剣を弾き、足を払って倒した。
「同じ攻撃を受け過ぎだよ」
倒れたエリートゴブリンは叫んでいる。
グギャグギャー!
エリートゴブリンを倒して手首を斬り落とした。
「さすがに同じ手は喰らわないよ」
斬り落とされた手には緑色の液体の付いたナイフが握られていた。
俺はエリートゴブリンの額に筆剣を突き刺した。
「師匠の剣より軽すぎる」
俺は無事エリートゴブリンを倒した。
俺はオータルとメアの方を見てみると、エリートゴブリンを圧倒していた。
1匹は既に絶命している。
もう1匹はメアの鈍化薬が聞いているのか、動きが遅くなっている。
身体にはシラユキに噛み千切られた跡が多数。
オータルがエリートゴブリンに突進をし、兜の角が胸に風穴を開けた。
毒の塗られたナイフを持っている腕はシラユキに噛まれて、動かせなくなっていた。
「おつかれ。なんか思ったより余裕だったね」
「こんなにすんなり勝てるとは思ってなかったぜ」
「ほんとに!びっくり!」
ガルルルルルル!
シラユキは召喚絵巻に戻った。
「俺もこんなあっさり倒せるとは。師匠のおかげだ」
目の前に小さなウィンドウが出てきた。
[召喚絵巻(白雪)のレベルが上がりました。召喚絵巻を取得しました]
「ん?」
ウィンドウが消えると目の前に召喚絵巻が出てきた。
「それは?」
メアが聞いてきた。
「新しい召喚絵巻みたい」
「ということは、新しい仲間が増えるの?」
「多分ね。あとシラユキのレベルが上がったみたい」
俺はシラユキを召喚した。
シラユキの身体が2回りほど大きくなっていた。
「おー成長してる。まだ成体とは言えないけど、もうメアの膝には乗れないな」
グルルルルル…
膝の上に乗れないのが悲しいようだ。
「シラユキ、何か新しい技とかある?」
グワオオオオオ!
シラユキが雄たけびをあげると、空に水墨画タッチの雲が現れた。
そしてその雲から大きい氷塊が落ちてきた。
「おー魔法?なのかな?すごいぞ!」
俺はシラユキの頭を撫でた。
ガルルルルルル!
シラユキは召喚絵巻に戻って行った。
俺は召喚絵巻を収納の書にしまった。
「イツキ、この武器とエリートゴブリンの耳も頼む」
「わかった!」
俺はエリートゴブリンの死体のもとに行き、武器と耳を回収した。
▽ ▽ ▽
俺達は街に戻った。
冒険者ギルドに行き、報告を済ませるとFランクに昇格した。
俺はすぐに作業部屋に行き、召喚絵巻に描くものを考えた。
「なんかありえない組み合わせのやつがいいな」
俺はいろいろ元の世界で見たものを思い出していた。
変な動物図鑑、深海魚のしくみ、食虫植物図鑑、妖怪図鑑。
「あっ!鬼とか強そう」
俺は召喚絵巻に描く前に紙に描くことにした。
「鬼は鬼でも美男子系にして、角は1本で服は和服。武器は大きい金棒を持たせる」
いい感じの美男子鬼が描けた。
「うーん。美男子過ぎるな。うーん。顔の上半分隠すか」
俺は1本角の美男子鬼に2本角の強面の鬼のお面をつけた。
「角が3本みたいだけどいい感じ。金棒は丸みがあるやつじゃなくて、六角の金棒にするか」
イメージがある程度出来たので、召喚絵巻に描いていく。
「落雷の中で立ちふさがっている感じがいいな」
雷が鳴り響いている中で経っている鬼の絵を描いた。
「名前は…」
召喚絵巻に[剛鬼]と書くと召喚絵巻が光だした。
俺は手に取り、念じると召喚絵巻から煙が出てきた。
煙が晴れるとそこには俺が描いた鬼がいた。
2Dで5歳児ぐらいの。
20代ぐらいの見た目にしたんだけどな。
「まあレベル1ならそうなるよな。ゴウキ、よろしくな」
「ぎょいー」
なんかものすごくかわいかった。
▽ ▽ ▽
それから数日の間、訓練・討伐・絵の繰り返しだった。
Fランクになったが、あまり活動内容は変わらなかった。
あの日以降上位種に会うこともないし、新しいモンスターとも出会わない。
絵の仕事は、家族が集合している絵の依頼が多かった。
たぶん写真の替わりなのだろう。
そろそろ他の色を使いたくなってきた。
筆剣のレベルが上がることを願った。
冒険者ギルドで何回かミランさんを見かけた。
俺と目が合うと話しかけようとしている感じがしているので、歩み寄ると毎回逃げられた。
まだ整理がつかないみたいだ。
ゴウキは無事にレベル2になり、3Dになった。
俺自身のレベルはあまり上がらなかった。
上がりづらくなっているように感じる。
▽ ▽ ▽
今日も変わらず、メアが朝食の用意をしてくれている。
「オータルは?」
「なんか今日は朝から訓練らしいよ」
「そうなんだ」
俺達は2人で朝食を食べた。
「じゃあ今日は何しようか」
「絵の依頼は?」
「今はないかな」
「街でも見て回る?」
「あーいいね。同じところしか行ってないから、色々見たいな」
俺とメアは街の散策に行くことを決めた。
▽ ▽ ▽
商業地区は俺が描いた看板が増えた。
大口喰らいの売り上げがだいぶ上がったらしく、店主が宣伝をしてくれたようだ。
「イツキはどこに行きたい?」
「うーん。居住区とか行ったことないな」
「じゃあそっちに行こう!」
俺はメアに引っ張られ、居住区に向かった。
カンカンカンカン!!
街中に鐘の音が鳴り響いた。
「え?これ何?」
「緊急事態が起きた時になる鐘だよ!」
メアは顔が強張っている。
「どうする?」
「とりあえず冒険者ギルドに行こ!」
俺とメアは冒険者ギルドに向かった。