12.魔物図鑑
あれから探索を続けたが、ゴブリン2匹しかいなかった。
山の中で数組のパーティとすれ違ったから、その人達が討伐をしたんだろう。
「よし。今日は帰るか!」
「そうだね」
「わかった。収納の書に入れてる素材とかは売れるの?」
「売れるぞ」
「俺、街に来る前に倒したモンスターの分あるんだけど」
「本当か?それを売って、今日は大口喰らいで飯を食うぞ!」
「いいねー」
「じゃあ街に戻ろう」
俺達は街に戻った。
洞窟で止められなかったので安心した。
▽ ▽ ▽
昨日の夜は大変だった。
酒を飲んだメアは甘え上戸、オータルは泣き上戸だった。
しかも酒に弱く、すぐデロンデロンになってしまったのでシラユキと一緒に2人を家まで運んでリビングで寝かせた。
「あれ?ここは?」
メアが起きた。
正直、あの甘え上戸のメアは思春期の俺にはつらかった。
すぐに潰れてくれてよかった。
「おはよう」
「え?あれ?オータルも寝てる」
「2人が潰れたから、うちに連れて行ったんだよ」
「ごめーん。私もオータルもお酒弱いんだよ」
「俺は良いから、運んでくれたシラユキと今度遊んであげて」
「わかった!じゃあ朝食を取りに行ってくるね」
メアは家を出て行った。
オータルはまだイビキをかいて寝ている。
▽ ▽ ▽
メアが朝食準備を終えた。
「準備できたから、オータルを起こして」
「了解」
俺はオータルを叩き起こした。
「ん?何で俺はここで寝てるんだ?」
「酔いつぶれたんだよ」
「あーまたやっちまったか」
「しかもすごい泣いてたぞ」
「うわーまただよ。くそ!二度と酒は呑まない!」
悔やんでるオータルを見て、メアが口を開いた。
「オータル、前もそんなこと言ってたよ。どうせ呑むんだから」
「あーわかったよ。呑むけど量を気を付ける」
「まあ俺がいるときはまた運んでやるから」
「いいのか?イツキーありがとよー」
オータルは喜んでいた。
「てかメアは平気だったのか?」
「「え?」」
変な空気が流れた。
「酔ってめんどくさいのは俺よりメアだろ?」
「イ、イツキ。私、なんか変なことした?」
「あー。いや、普通だったよ」
「よかったー」
メアは安堵の表情を浮かべた。
オータルは不満な表情をしていた。
「オータル、とりあえず朝食を食べよう」
俺達は朝食を食べ始めた。
「今日はどうするんだ?」
「うーん。昨日倒したモンスター達の絵を描いておこうと思うんだけど」
「わかった。じゃあ俺はギルドで訓練でもするかな」
「私はシラユキにお礼を言いたいんだけどいいかな?」
「いいよ」
「明日はイツキが訓練だから、次に町の外に行くのは明後日か」
「そうだね」
俺達は朝食を食べ終わり、オータルは家を出て行った。
俺は召喚絵巻を手に持ち、念じた。
シラユキは出てくるなり、メアの膝の上を占領した。
「シラユキ、昨日はありがとね」
メアはシラユキを撫でながら話しかけていた。
シラユキのサイズだとほとんど引き摺って運んでいたことは黙っておこう。
「俺は作業部屋にいるから、なんかあったら声かけて」
「うん」
俺は作業部屋に向かった。
▽ ▽ ▽
俺がゴブリンの三面図を描き終ると目の前に小さなウィンドウが出てきた。
[異世界の絵師のレベルが上がりました。魔物図鑑と複写を取得しました]
「お?」
目の前に収納の書の色違いの本が現れた。
パラパラめくるが、中身は白紙だった。
「全然図鑑じゃないじゃん」
俺は魔物図鑑を収納の書にしまった。
俺はリビングへ行き、メアを探した。
「メア、新しいスキルを手に入れたんだけど使い方が分からなくて」
「ステータスを出して、触れると詳細が見えるよ」
「え?そうなの?」
「うん」
「ステータス」
俺は魔物図鑑と複写に触れた。
○魔物図鑑
魔物の詳細が分かる図鑑。
左のページに絵を描くと、右のページに名前などの情報が出る。
○複写
複写したい文字や絵に右手で触れて、模写したい場所に左手で触れた状態で念じると複写が出来る。
俺は試しにゴブリンの三面図を右手で触れて、左手で魔物図鑑の左のページに触れて念じた。
すると魔物図鑑にゴブリンの三面図が複写され、右のページに詳細が出た。
「お!これは良いぞ。」
俺は作業部屋に戻り、魔物図鑑にいままで出会った魔物の三面図を描いた。
魔物図鑑にはしっかり詳細が右のページに書かれていた。
▽ ▽ ▽
作業を終えて、リビングに降りるとメアがシラユキを抱いて寝ていた。
「メア!そろそろ時間だよ」
「あ、寝ちゃってた」
「シラユキと遊んでくれてありがとう」
「どういたしまして。それじゃあオータルもそろそろ帰ってくると思うから、夕食を取ってくるね」
「うん。いつもありがとう」
メアは夕食を取りに向かった。
▽ ▽ ▽
3人で夕飯を食べていると、オータルが口を開いた。
「そういえば、イツキは防具をつけないのか?」
「あ!着たいって思ってたんだよ」
「それなら、明日の訓練前にゲン爺の店に行こうぜ?」
「良い防具があったら買うか」
収納の書にはお調子者神様がくれたお金が入ってるから、予算の心配はないはず。
「買うんじゃなくて、せっかくならイツキ専用の防具を作ってもらおうぜ」
「え?」
「せっかく絵を描けるんだから防具のデザインをして、ゲン爺に近いものを作ってもらおうぜ」
「そんなこと出来るの?」
「たぶん。ゲン爺なら面白がってくれる」
「わかった。あとで防具のデザインを描いてみるよ」
「じゃあ明日は早めに朝食だな」
俺は夕食を食べながら自分の防具のデザインを考えた。