フードワーク
食に関連するお仕事とは、料理を創るだけではなく、家庭的なものから、専門知識や技術が必要なもの、接客や、配達、送迎といろいろある。
人を食い物にすることもまた、フードワークだ。
焼き肉屋、寿司屋、ラーメンに、配達デリバリー、ファミリーレストランに、介護職員、資材を決められた場所に移動させる?
これは違うか。まあとにかく沢山あるのだ。
「麻衣子さん」
「はい。なんですか」
麻衣子は喫茶店で働いている。少し注意欠陥があるものの、最近はタンパク質をとりすぎないように気をつけている。
甘いもののとりすぎなどもよくないと言われているけど、これは無視。というより、つい我慢できずに食べてしまうので、よく叱られている。
仕事が落ち着いたからカウンターのそばから離れたら、宇佐美さんから声がかかった。
「あなたまた、甘いもの食べたでしょう。お肉も。だめよ、タンパク質ばかり食べ過ぎたら……カルシウムが不足してしまうわよ」
麻衣子には、なんのことだかわからず、はあ、そうですかと淡々と答えるのがやっとだった。 宇佐美さんは少し年上のスタッフだが、なにかと麻衣子に構いたがる。身体についてを理解してくれたのは、いいような悪いようなだが、基本は悪い人じゃないらしいので、邪険にするばかりなわけにもいかず、ただうろたえるだけだった。
で、なにかあって落ち着くと、
「わかる、DHAよ、DHA」
なんて、バカみたいなことを言う。
なにがわかる、だ。
麻衣子にもわからないが一番わからないのは、この謎のすすめかた。
「私をバカにしないでよ」
麻衣子は、だから、つい言ってしまう。
「バカにしてる、決まってるんだから、私をバカにして」
「バカになんか、していないわよ」
しかし一度、悪い、と思うと、なぜだかそれがそうにしか見えない。
麻衣子は苛立ちでいっぱいになった。
「バカにしたわ。悪口言った!」
宇佐美さんはごめんなさいと謝ったけれど、麻衣子は、それさえパフォーマンスな気がするくらいに、イライラした。 家族が頭悪い、ペットが気持ち悪い、血液型が変と、あらゆる思い付く限りの悪口が止まらなかった。
相手が悪いのだから、このくらい言ってやらないといけないと、麻衣子の脳内はそれで埋め尽くされた。注意点として、悪気は無い。努力のみでどうにかなるものでもなく脳の抑制という部分に何かがあるのだというのだ。
「店長」
ただ、どうしていいかわからない宇佐美さんが思わず、店長を呼ぶと、店長は「休憩に」と手にしたチョコレートケーキの箱をもったまま、入り口に入るところで固まる。
「おや。どしたね」
「いえ。なんでもないのです」
「あ、ケーキだ。やったぁ」
いつのまにか、麻衣子の機嫌はすぐによくなっていた。
「なにかあったか?」
店長に聞かれて、宇佐美さんはふるふると頭を振った。
「別になにも、ないですよ、本当」
本当になにもなかったのだから、店長はすぐに信じた。
「少し、空気を吸いたくて」
宇佐美さんは一度、外へと出ていくことにした。気を取り直そう。