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上手くいかない…

「ねーねー」

「ん?なんだよふゆ?」


 学校に向かう途中、あたし達が信号待ちをしていると、不意に未冬が優陽の肩をつっついた。

 優陽もなんかデレデレしてるし…


「ユウヤって好きな人いるの⁇」

「…えっ⁉︎はっ⁉︎な、なんだよいきなり⁉︎」


 あからさまに動揺する優陽。

 …って‼︎何がさりげなくよ未冬‼︎ドストレートじゃない⁉︎


「えー…なんでって言われても、気になるから聞いただけじゃん」

「えっ…それってもしかしt…」

「ねーミユちゃん‼︎」

「えっ⁉︎あ、うん‼︎気になる気になる‼︎」


 突然の未冬のフリに慌てて合わせたあたし。

 あの反応…優陽、絶対一瞬自分のことだと思い込んだよね…例の如く未冬は気付いてないみたいだけど。

 優陽は途中まで言いかけた自分の言葉が恥ずかしくなったのか、あたし達から視線を逸らすようにそっと信号へと目線を戻した。


「いるよ…好きな人…」

「えぇ⁉︎そうなの⁉︎」

「うん…今更こんなことで嘘つかないよ」


 優陽の言葉に本気で驚く未冬。

 照れ臭そうにポリポリと頰をかく優陽を前に、未冬はあたしの肩を掴むと、優陽に背中を向けるようにしてあたしに顔を近づけた。


「どうしよミユちゃん‼︎ユウヤ、好きな人がいるって…」

「あ、うん…」


 真剣な表情で作戦の失敗を悟った未冬。

 あたしは未冬のことだよ‼︎って思わず叫びたくなるけど、それを言ったら終わりな気がして喉まで出かかったその言葉を飲み込んだ。


「ん?どうしたんだ2人して背中向けて…もう信号変わったぞ?」

「うぇ⁉︎あ、そうだね…」


 優陽の言葉に慌ただしく振り返った未冬。

 言葉通り信号は青へと変わっており、あたし達は横断歩道を渡り始めた。


「えっと…もしよかったらでいいんだけどさ、ユウヤの好きな人ってどんな人なの?」

「えっ⁉︎」

「あ、いや、その…なんとなくだよなんとなく!ね?」

「あ、あぁ…」


 優陽の好みを聞き出したいのか、話題を広げた未冬。しかし、その辿々しい言い方のせいで、優陽は別の意味を孕んでいるように捉えたのか、その顔を赤く染めた。

 もしかしなくてもこれってより未冬を意識させてるだけなんじゃ…?


「ユウヤが言ったら私とミユちゃんも教えるからさ、お願い‼︎」

「えっ…」

「ダメ…?」


 ちょっとーあたし蚊帳の外なんですけど。あれ?これって未冬があたしの為に立ててくれた作戦だよね…⁇なんか2人の距離近くない?

 てか優陽やっぱり未冬のこと大好きじゃん…未冬が好きな人教えるって言った瞬間、あからさまに落ち込んでるじゃん…


「た、タイプだけなら…」

「やった‼︎ね、ミユちゃん‼︎」

「え、えぇ…」

「それでそれで‼︎ユウヤの好きな人ってどんな人なの⁉︎」

「えっと…」


 グイグイと距離を縮めて問い詰める未冬。照れ臭そうに視線を逸らす優陽を前に、あたしはこのポジションを動くことができなかった。


「明るくて、可愛くて、人見知りで、家族想いで、家事が得意で…実はめっちゃ強くてカッコいい、ちょっと変わってて2人がよく知ってる人」

「うわ、めっちゃ喋るじゃん⁉︎ユウヤその人好きすぎ‼︎…って私達が知ってる人…?」

「うん…その人も最近、好きな人がいるらしいんだけどね」


 案の定というか、めっちゃ未冬なんだけど…これで気付かない未冬ってほんと…羨ましい。

 心の中にあるこのモヤモヤはきっと、未冬に対する嫉妬心なんだろう。優陽から好意を向けられた未冬への。

 そんなあたしの不安も露知らず、未冬はどこか動揺した様子であたしの方に視線をよこした。その瞳は「どうしよう、思ったよりガチだった」とでも言っているようで、あたしはどうしようもなく心が締め付けられるのを感じた。

 …不幸中の幸いなのは、未冬自身がその好意に気付いてないってこと。


「どうした美優?なんか調子悪そうだけど…」

「別に…なんでもない…」

「いやでも…」

「なんでもないって言ってるでしょ‼︎」

「そ、そうか…」


 予想外に顔を近付けられたせいでつい叫んでしまった…人の気も知らないで。

 なんでこういう時に限ってあたしを心配してくるんだ優陽は。こういうところってほんとズルイと思う。


「じゃ、じゃあユウヤはその人のどこか好きなの⁉︎告白とかする気はあるの⁉︎」

「えっ…いや、それは…全部…気付いたら好きになってて…って!なんで俺がまた答える側なんだよ⁉︎ふゆ達も教えるって約束だろ⁉︎」

「あ、ばれた」

「お前なぁ…」


 もはや2人の会話に追いつけないあたし。いや、確かに自分が空気悪くしたようなもんだけどさ…納得がいかない…

 未冬の台詞はきっとこの空気を突破するためなんだろうけど、それで優陽と2人の会話に入られたらあたしはどうにもできなくなるじゃんか…

 あたしがそんなことを考えていると、不意に未冬がこちらへと視線を向けてきた。


「じゃあミユちゃんから言っていいよ」

「なんで上から目線なのさ⁉︎てかあたしが言うの前提⁉︎」

「おいふゆ、それはちょっと…」

「ミユちゃんが言ったら私もちゃんと教えるから安心して‼︎私、これでもちゃんと約束は守る女だから‼︎」

「いやでも…」

「あーあー…あたしが言えばいいんでしょ?いいじゃない、教えてあげるよ」


 未冬の言葉になんとか流れに乗れたあたし。

 実際、優陽の目にどう映るかはわからないけど、なんとか打ち合わせ通りに会話を修正できた。一瞬庇おうとしてくれた優陽にちょっとドキッとしたのは言うまでもないけど。


「美優、別に無理して言わなくても…」

「大丈夫大丈夫。あたしが言っても損はないし、それにあたしも未冬の好きな人になるからね」

「うぇ⁉︎」

「優陽も気になるよね?未冬の好きな人」

「えっ、あ、あぁ…俺も知りたいな」

「ユウヤまで⁉︎」


 あたし達の返しが予想外だったのか、慌てふためく未冬。まぁ未冬のことが好きな優陽なら乗っかってくるとは思ってたけど…これはこれでなんか複雑。

 あたしはそんな気分を振り払うように頭を振ると、今は慌てる未冬を見れたことで満足することにした。

 尚、未冬は自分のことなんて微塵も思ってない為、優陽が自分達と違う誰かが好きだと思い込んでる模様。

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