夜の女子部屋、何も起きないはずがなく…
42話です。
───美優達のグループメンバー───
☆井口優陽 (作品によっては主人公ポジ)
・暁未冬 (幼馴染にして恋敵、筋肉の塊)
・西条最萌 (主人公の友人、そこそこある)
・真田美優 (本作の主人公、まな板)
・田中※ (優陽の数少ない友人、チャラ男)
・矢部雫 (学級委員、恋敵、でかい)
※下の名前未定、別で好きな子がいる。
☆はグループリーダー
数時間の飛行機に揺られ、目下の大地に到着したあたし達。
引率の先生に従って、那覇空港を出ては貸切ったバスにグループ単位で乗り込んでいく。
「これが、海…」
「みんなで行った海水浴場とはえらい違うな」
三泊四日の修学旅行、そして人生初の沖縄という舞台。
移動中、興奮覚め止まぬ口調で、未冬と優陽が次々と言葉をこぼす。未冬の反応が内陸に住んでいてはじめて海を目にしたようなリアクションなのはきっとわざとだろう。うん。
青い海に日を反射する水面。飛行機内で見た通り、窓越しの海は、たしかにこの前の海水浴場とは全く別物ね。…あれはあれで楽しめたからいいけど、美しさとかで見たら雲泥の差だし。そもそも、ウチの高校の修学旅行中に海に入る予定はないのだ。
閑話休題。ついに始まった修学旅行。
車酔いでダウンしている矢部さんを他所に、あたしはパンフレットへ視線を落とした。
ーーー
1日目の予定がつつがなく終わり、気付けば時刻は19時過ぎ。元々の予定だった資料館だとか、遺跡だとかは流されるままに過ぎ去っていて。ホテルの割り当てられた部屋にて、夕食を食べ終えたあたし、未冬、西条さん、矢部さんの4人は、クラス別の入浴時間を前にダラダラと過ごしていた。
「──でさー、ユウヤってばドラゴン?のキーホルダーを見て『あとで絶対買うッ!』って言ってたくせに旅館に忘れて帰ってきちゃってたみたいで。その後3週間もずっと引きずってたんだよねー」
嬉々として話す未冬の声。相槌を打つ矢部さんに並んで、西条さんが共感を示す。
修学旅行の夜…そして、女子だけの空間。こういう時、恋バナをするってそのつもりだったあたしのことなどお構い無しに、気付けば未冬による優陽の暴露大会が始まっていた。
…いやまぁ、ここにいる面子は海水浴で一緒だったし、共通の話題として優陽に焦点が当てられるのもおかしな話じゃないんだけどね。ただ、あたし達しか知らない優陽のことが知られるのは、やっぱりちょっと違うっていうか。でも、あの未冬が心を許している証拠でもある以上、無理にとめるのも違うっていうか。
「はぁ…」
口から漏れた溜息が、賑やかな笑い声に掻き消される。
恋愛と友情。よくあるラブコメにも出てくるこの問題は、思ったよりも深刻みたいで。優陽に対する独占欲と、親友に対する感情が、中途半端にせめぎ合っているのだ。…まぁ、ここで変に刺激したらあたししか知らない優陽の一面を話さざるを得なくなりそうで、語りたいけど語りたくないっていうか──そう、我ながら、中々面倒くさい性格をしてると思う。とにかくそれくらい、乙女心は複雑なわけで。
そんな思考の沼にはまりかけたとき、ふと、談笑する未冬と矢部さんに外れて、西条さんがこちらを覗き込んできた。
「真田さん真田さん」
「…ん?」
いつものように、あたしの名前を2回呼んでくる西条さん。
あたしは無理矢理思考を切り替えようとして、あたふたする彼女を前に自然と笑みが漏れる。
体育祭の時に知ったけど、こう見えて彼女は意外と鋭いのだ。…いやまぁ、正確には比較対象の未冬と優陽が鈍すぎるだけなんだけど、それはそれ、これはこれである。とにかく、朴念仁2人とは天と地くらい差をつけて鋭い。それに、友達になって半年だけど、未冬と同じくらいあたしのことを気にしてくれてるのも知っている。
「どうしたの?」
できるだけ自然なふりをして、落ち着かせるようそう返す。彼女は一呼吸入れてから、ゆっくりと口を開ける。
多分、あたしがモヤモヤしてるのを察してくれたんだろうなとは思う。たしかにそのとおりではあるんだけど、自らを落ち着かそうとしている彼女に、思わず毒気を抜かれる。
「その、無理をしてたりとか、は?」
「無理って…まさかぁ」
わざと腑抜けた声でそう言って、西条さんにそう返す。
そう、これは間違いなくあたしの本音。嫉妬とか、ぐちゃぐちゃした感情こそあれど、西条さんを見てたら別に無理するほどでもなくなったのだ。…まぁ、そうさせる彼女の気質のおかげといえばそうなのだけど。
しばらくの沈黙。
不意に、彼女は未だに優陽の話で盛り上がる2人を一瞥すると、何故か優しい表情をしてこちらに向き直った。
「えっと…西条さん?」
なんだろう、この痛烈な嫌な予感は。
あたしが考える間もなく、彼女は趣に自身の胸に手を当てると、聖母のように微笑みを強くする。
…いや、ちょっと待って!これじゃあまるで──
「大丈夫ですよ真田さん。私はその、小さいのは小さいので羨ましいと思いますから」
──「ぇ?」、と。
未冬か、はたまた矢部さんか。部屋に反響したその声が、視線の先をあたしに集める。
「〜〜ッ!!ち、違ッ、あたしはそんn──」
「大丈夫だよミユちゃんッ!!あのユウヤがそんな大小で優劣を付けたりしないって!!」
勢いよく、未冬の宣言するような言葉が部屋中に響き渡る。
何処か気まずそうに、西条さんに続けてあたしから視線を逸らす矢部さん。2人の視線が一瞬、あたしの胸に注がれたのを最後に、あたしの記憶はそこで途切れた。
その後の未冬達
未「あんなミユちゃん久しぶりに見た…」
最「その、私の勘違いですみません…」
雫「わたし悪くないのに…」←一番被害を受けた人
(※尚、筆者に高校の修学旅行経験はありません。筆者に高校の修学旅行経験はありません。大事なことなのでもry)
P.S.今更気付いたけど矢部さんの表現いつの間にかルビと逆になってたわね。台詞の方はモラルある方に各自脳内変換してください。




