男の想い(5)
39話、優陽視点です。
高校生男子の脳内って難しい…
ジリジリと肌を焦がす熱。
キラキラと水面に反射する光。
華の高校2年生、夏の海といえば何を想像するだろうか?
──答えはそう、水着だ!
俺とて健全な男子高校生、女子の水着という誘惑に視線が向いてしまうのは当然の摂理なのだ!俺は悪くない!(自己暗示)
パラソル下のビニルシートに立ち、無意識に天へ掲げた人差し指に気付いて、慌ててその腕を引っ込める。…大丈夫だ、落ち着け俺、見られては無かったらしい。
頭を冷やすように座り込んで、忙しなく、動く人波へとそれとなく視線を向ける。
老若男女、多種多様の水着を着た人達の姿。夏休みということもあってか、家族連れや俺達くらいの人が多い。眼福眼福。
閑話休題。
溶け切らなかった氷の残ったペットボトルを開け、冷たい水を胃袋に流し込む。
着替えと称してこの場を離れた未冬と美優達4人。
彼女達はもう着替え終わったかな、なんて想像して、俺は水着の上に着ていたパンツとシャツを脱ぐ。
「そういやふゆと美優の水着姿も小学校以来か」
ひとりそう呟いて、脱いだ服を自分の鞄にしまい込む。
今日、一緒に着た女子は4人。発案は俺ではあるものの、あくまでふゆと俺が進展するように美優がセットしてくれた為、他の男子は誘っていない。…まぁ、俺としては役得であるからいいんだけども。
幼馴染のふゆと美優、同じ学級委員で胸がデカい矢部さん、そして美優の友人である西条さん。4人とも美女美少女であるし、クラスメイトの男子にでも見られたら嫉妬と怨嗟で俺は刺され死ぬだろう。少なくとも、俺がそっちの立場なら確実にその男の玉を潰しにかかるまである。
それにしても、彼女達はどんな水着を着てくるのだろうか?
美優は…ビキニではないだろう。あのちんまりとした(誇張表現)体型ではプロポーションをもろに出す格好は意図的に避ける気がするし、ワンピースタイプのやつだろうか。
逆に矢部さんなんかはシンプルなビキニだとヤバそうだ。あの胸でビキニなら確実にエロい。うん。
西条さん、は…正直わからん。唯一俺との繋がりがほぼ無い人であるし、そこまで意識したこともないからな…パレオを着けた上品なやつだろうか?
最後にふゆ。一番新しい記憶はスク水(小6の水泳の授業)だが…何処とは言わないがあの時より確実に成長しているし、正直何を着ていても似合うと思う自信がある。彼女の趣味的にフリルのビキニだろうか。絶対可愛くてエロいな、うん。
ジリジリと照らす日差しの下で、4人のそんな姿を想像して、無意識にうんうんと頷き腕を組む。
そんな俺の妄想は、不意に近づいた「ザッザッ」という砂を蹴る音によって現実世界に引き戻された。
ーーー
「───っ!?──ハッ!?」
ぼんやりと、意識が覚醒する。
日陰となったパラソルの下。少し離れた位置で、腰まで海水に浸った美少女達がビニルボールで遊んでいる。
「そうだ、みんなの着替えが終わって…」
たしか、美優の拳が飛んできたような気がする。…いや、それらしい原因は心当たりあるけども。というか多分矢部さんを見て「エッロっっ」って心の声が漏れたことだと思うけど!
思い出したら痛くなってきた腹を抑えて、ぼんやりと眺めた視界に改めて意識を向け直す。
俺の妄想通りというか、花柄のワンピースタイプの美優にシンプルな黒ビキニの矢部さん。そしてラッシュガードを着た西条さんと、淡い桃の水着パーカー姿のふゆ。
伸びていた俺のことなど意に介さず、4人はキャッキャとボールを跳ね、水を掛け合っている。和む。
「あ!目が覚めましたか井口君!」
「あ!優陽ようやく起きた!」
不意に重なるふたりの声。
そんな言葉に釣られるように、こちらへ視線を向けてきたふゆと西条さんは、一瞬互いの顔を見合わせると、駆け寄るふたりの背中を追うようにこちらのパラソルへと駆け出してくる。
「おはよう優陽!」
「お、おう、おはよ…う?」
反射的に返した言葉に、うんうんと頷く美優。
…いや、よく考えたら俺がのびてたのは美優のせいだし、この反応はおかしくないか?
段々と回ってきた頭の中で、無意識に傾げた首を上げ、目前の美少女達へと視線を戻す。が、その視線は吸い込まれるようにして矢部さんの揺れる胸元へ──
「ユウヤ!」
「──っ!?見てない見てない!俺は何も見てません!」
ふゆの言葉にハッとして、勢いよく背筋を伸ばし立つ。
何処か冷ややかな視線。
ギギギ、と振り返ると、半面開いた美優と視線がばっちりと合う。
…なんだ、この浮気のバレた彼氏みたいな雰囲気は。視界に映らない他2人(ふゆ以外)の視線もなんか怖い気がするし。
──はぁ、と。
美優の口から漏れたため息が、しばらく流れる沈黙を破る。
どっと締め付けから解放されたような錯覚をすると同時に、そんな彼女に続くように、水着パーカーをほんの少しだけはだけさせたふゆが再び口を開け放つ。
「えっと…それで、ユウヤはお昼ご飯とかどうするの?私達は一応向こうの焼きそばでも買ってこようかと話をしてたんだけど…」
お昼ご飯。ふと周囲に目を向けると確かにチラホラと海の家へ集まる人が増え始めている。…こころなしか、少し痛む腹もすいてるような気もしてきたし。
それよりも──
ゴクリ、と。無意識になった音。
はだけたパーカーの隙間から見える、ふゆのこの引き締まった肉体。美優と違ってデカくなってたと思ってはいたが…矢部さんと違って筋肉質っぽいか…?だとしたら体育祭で振れなかったのも納得がいく。パーカーが体型に対してダボダボなせいか、そう、チラリズムってやつだ。隙間から確かに見えるしなやかなビキニ姿の美の曲線がシルエットとして映し出されていて、それはそれでとてもエ──じゃない!
ふゆの谷間に視線が吸い寄せられそうになるのをなんとか抑えて、俺は雑念を振り払うように大きく首を縦に振る。
「おっけー!じゃあえーっと──」
「真田さんと井口くんはここで荷物番をお願いしますね」
ふゆの言葉に割り込むようにして、そうこちらに目配せをする西条さん。
これは、俺が2人の胸元ばかり見てることに気付かれた、のか…?
頷く美優を横目に、嫌な汗を振り払うよう、再び大きく首肯する。
チラチラと、どこか有無を言わさぬ圧力を感じる中、俺は隣に腰掛けた美優と共に、人混みに消える3人の背中を見送った。
ちょっと変態っぽい気もするけど、友人曰く男子高校生は普通こんな感じらしい。(私自身が別ベクトルの変態なのでピンときてないが)
これ以上のは書けませぬ。
あと一話だけ水着回(海水浴回)です。




