あたし達の体育祭(美優)
33話、タイトル通り美優視点です。
戻って来た未冬と合流して、西条さんと、何故かおっぱい女も参加した5人で昼食を済ませたあたし達。
食事中、あたしの言葉を気にしていたのか、頻りにおっぱい女を監視するようにしていた未冬が率先して優陽の隣を陣取っていたこと以外は、まぁ特に問題は無かったと思うけど。
なにはともあれ、無事に始まった午後の部。
残った競技の中では一番最初である玉入れに参加するため、あたしと西条さんは他の女子8人と共に入場ゲート前の待機列へと並び始める。
「真田さん真田さん」
「ん?」
1年生が入場を始めたのと同時に、肩を叩いてこちらを呼び掛けてきた西条さん。
カチューシャの要領でリボンを身に着けている彼女は、膝前で組んだ手をモジモジとさせると、頻りに周囲を気にしながらおずおずと言葉の続きを紡いでいく。
「あの、間違ってたら申し訳ないのですが…真田さんの好きな方って、もしかして井口さん、ですか…?」
「えっ?ぁ、うん…」
思わず口から漏れた、拍子抜けしたようなあたしの間抜けな声。
言葉通り申し訳無さそうな彼女の言葉に、思わず肯定してしまったけど…あたしが優陽を好きなのは事実だし、何を言えるわけでもない。
…しかし、まさか西条さんにも気付かれてるとは、ね。西条さんは恋愛に疎い(自己申告)から詳しく話をしたことはなかったけど、バレていたとは…
「真田さーん…?なんかすごく失礼なことを考えられてるような気がするのですが、普段の態度でそれくらいわかりますからね?」
「うそ…」
「嘘、じゃないですよ。むしろあれだけ好意を漏らしていたらいくら鈍くて恋愛に疎い私だって普通に気付きますよ」
鈍くても普通に気付く、ねぇ…肝心なあたしが好きな人は、そのあたしからの好意に全く気付く気配が無いんだけどね。
…いや、優陽が変に気付いたら気付いたで関係が悪化するかもしれないけど。少なくとも本人の気持ちが未冬に向いている今はまだ、知られる訳にはいかない気がする、し?
あたしがそんな思考を回らせていた一方、先程とは一転して、腰に手を当て怒るような仕草の西条さん。
ふと目が合った彼女は、一瞬呆れたような表情を浮かべた後、あたしの肩を引き寄せてその口を耳元に近付けてきた。
「先程の昼食時、井口さんの隣を陣取っていた暁さんはともかく、学級委員の矢部さん…あの人は気を付けたほうがいいかもしれません」
「えっ?それってどういう──」
──パンパンッ…と。
あたしの言いかけた言葉を遮るように、グラウンド全体に響き渡ったピストルの音。
気付けば数え始めているし、どうやら1年生の玉入れが終わってしまったらしい。
誘導の実行委員と先生が、進みだしたあたし達の列を1年生と入れ替えるようにグラウンドの中へ中へと急かしていく。
「真田さん」
「うん…とりあえず、今は玉入れに集中、だよね」
「はい!」
ーーー
特にトラブルも無く、7クラス中2位という結果で終わった玉入れ。
残る種目は借り物競走と部活対抗リレー、綱引きの3つだけ。帰宅部であるあたし達にとって部活対抗リレーは関係ないとして、実質残るのは未冬の出る借り物競走と優陽の出る綱引きでいよいよ終わりね。
ウンウンとそんな思考を巡らせながら、あたしは西条さん達と共に誘導に従って応援席に戻る。
道中すれ違った未冬は、いつもに増してハイテンションでサムズアップをすると、おっぱい女の影に隠れて既に準備運動を始めている。
「あ、そうだ」
「んー?」
あたしが声を上げると同時に、浮ついた声で振り返る西条さん。
そういえば彼女、玉入れが始まる前におっぱい女がどうとか言っていたのよね…
「西条さん西条さん」
「はーい?」
「あのおっぱい女に気を付けたほうがいいって、一体どういうことだったの?」
「あー…それはですね──」
一瞬思い出すような動作を見せ、人差し指を立てて話を始めようとした西条さん。
そんな彼女が言葉を続けようとした瞬間、不意に背後から足音が聞こえてくるのと共に、その表情は気まずそうなものへと変わった。
「よっ!おつかれ美優!」
「優陽!?」
彼女の表情が変わると同時に、あたし達の間に現れた優陽。
友人との会話を遮られたモヤモヤとした感覚と同時に、わざわざ労う為にこっちに来てくれたことに喜びを感じてるあたしが今はどうも憎めしい。
一瞬優陽に取られた意識を戻して、西条さんに視線を向け直すも、既に彼女の気配は無く、他の女子達の方へ向かう後ろ姿がチラリと見える。
…気を、使わせてしまったのだろうか。
ひとまず目前の朴念仁に視線を戻したあたしは、おっぱい女のことを忘れて今の喜びを噛み締めることにした。
34話、35話はそれぞれ矢部視点、優陽視点の予定です。




