親友の思い(3)
32話、未冬視点です。
更新遅くなった上に短い内容ですみません。
「それじゃあ未冬、あたしは先に戻ってるから」
騎馬戦が終わり、部活対抗リレーが始まるのと同じくらいの時間に、私にそう言い残して救護テントをでていくミユちゃん。
ぬるくなっている濡れタオルを受け取った私は、水の入ったバケツにソレを軽く押し入れると、養護の先生に断って自分の水筒のフタを開ける。
「はぁ…失敗したなぁ…」
冷たい水の胃袋に流し込んで、ポケットに突っ込んだリボンを手に取る。
ミユちゃんの友達が作ってくれた、クラスの女子が共通で身に着けてるこのリボン。
よかれと思って退散したとはいえ、わざわざ探させるという手間をかけさせた手前、今回は私の行動が裏目に出たのは間違い無い。
「どうしたんだ?溜息なんかついて?」
ボーっと突っ立っている私の顔を覗き込むように、不意に視界に現れた柳沢くん。
私の記憶だと、まだ柳沢くんの担当する時間じゃ無かった気がするけど…まぁ、今この際はどうでもいいか。
「いや、うーん…ちょっとね。ただ2人きりってだけじゃ恋愛は進展しないんだなって思って」
「2人きり!?恋愛!?そr──」
「そそ、条件を整えても不確定要素があるとそれどころじゃないって気付いてさ。やっぱり無理して2人きりって状況を作るべきじゃないのかな…?」
今回の件に関しては、明らかに連絡不足だった私にも原因はあるんだけど、このリボンを渡すという工程さえなければ上手くいっていたのでは?なんて否が応でも邪推してしまう。
…まぁ、そもそもそんな不確定要素を探し出したらヤベちゃんの存在を想定してなかったってことこそ大きな問題だと思うけど。どうもユウヤと同じ学級委員みたいだし、自然に彼女を引き離すのは難しいかもしれない。
「はぁ…」
「──ッ!いや、違うんだ聞いてくれ暁さん!これはその、そう!親睦を深めるって意味でさ!ね?俺のこと下の名前で呼んでいいからさ、だから俺も暁さんのことをその、み、未冬…って下の名前で呼んd──」
何度目かの溜息を吐いて、思考を切り替えるように大きく首を横にふる。
…どのみち、今考えたところで今回のことがやり直せるわけじゃないしね。ひとまずコレは今後の課題にするとして、このあとは体育祭に身を入れよう。うん、そうしよう。
「──じゃ、じゃあ名前はまだ早いってことで、とりあえず恋人…は難しいと思うからその、友達…でもなくて、えっととにかくこう、互いに踏み込んだ関係n──」
キーンコーンカーンと、私が気持ちを切り替えるのを見計らったかのような、昼食休みを知らせるチャイムの音。
とりあえず、私が担当する委員会の仕事はこれで終わりだし、あとはタオル洗いとバケツの水替えしたらお弁当を食べにミユちゃん達のところにいこう。
「ん?」
私がタオルの浮いたバケツを広い上げるのと同時に、突然目の前に差し出された柳沢くんの手。
「──だからその、俺の…じゃない、俺に──」
「『俺に』…?──あー!そういうこと!はい、これ!」
「俺と──ぇっ?」
「じゃあ私はこれで上がりだから!柳沢くん午後は頑張ってね」
「あっ、ちょ─」
タオル洗いとバケツの水替えを申し出てくれた柳沢くんにバケツをそのまま手渡して、養護の先生に一礼を済ませた私は、そのままの勢いで救護テントを後にする。
たしか、お弁当を食べたら玉入れ、借り物競争、綱引きの順番で種目が残ってたはず。
奇しくも私だけでなくミユちゃんやユウヤの出場する種目も午後に固まってるし、ある意味私達の体育祭はようやく始まると言っても過言じゃないと思う。
リボンを左手首に括り付けた私は、物語のような展開を頭の中に思い浮かべながら、軽い足取りでミユちゃん達の待つクラスのテントへ向かって地面を踏み込んだ。
※未冬が考え込んでいる間、柳沢はずっと一人で喋ってた。(これからの関係に一切の影響が無いので内容はご想像にお任せします)




