体育祭といえば…?
遅くなりました、24話です。
「──はい、じゃあ障害物競走は男子が田中さん、女子が山口さんで決定ね。…よし、次は騎馬戦、男女4人づつだけど誰か立候補者いる〜?」
クラスでひとりノリノリで、次々と黒板に文字を入れる担任。
クラスメイト達が顔を見合わせる中、あたしは左腕で頬杖を付くと、優陽の方へと視線を移す。
…優陽は、何の種目に出るんだろうか?
今のところ、100m走と障害物競走が出たけど、未冬を見てるだけで手を上げてない。今聞いてる騎馬戦も出ないとなると、男子の競技はあとは借り物競走と団体の綱引きしか残ってないんだけど──
「はい次ー、借り物競走。誰か立候補者は──っと、矢部さんと暁さんね。よし、これで女子2人はこれで決定ね。男子は──」
勢いよく手を上げた未冬に驚いたのか、その後ろで目を見開いた優陽。
そんな彼のこともつゆ知らず、振り返った未冬は、ニマニマと口を歪めると、目が合った私に向かって親指を立ててきた。
…うん、これはアレね。未冬のことだし、きっと件の最新刊の影響で「体育祭といえば借り物競走だよね!」なんてノリで選んだんでしょ。
相変わらず、こういうことに関しては勢いだけはあるんだよね…まぁ、なんとなくわかっちゃうあたしもあたしだけどさ。
あたしの思考よりワンテンポ遅れて、視界の先で不意に手を上げた優陽。
男女別とはいえ、未冬と同じ競技に出ようとしていたのかな?…上げたときにはもう決まってたけど。
「ひーふーみーのー…よし!個人競技はこれで全員ね。残りの人達は丁度10人づつだし、男子は綱引き、女子は玉入れの団体競技で決定!」
もちろん優陽に気付くこともなく、黒板を見つめて頷く担任と、恥ずかしそうにそっと手を下げる優陽。
そんな彼の様子は、端の列だったおかげか、幸いあたし以外は気付いてないと思うけど。
どこか落胆している優陽を他所に、あたしはそっと視線を黒板へと戻した。
ーーー
テスト返却から一週間。
来月初めに控えた体育祭を前に、普段の体育も体育祭仕様へと変わっている。
グラウンドで障害物競走の模擬試合が行われる中、あたしは木陰に座り込むと、忙しく走るクラスメイトを遠目に眺める。
「ユミちゃーん!なに見てんのー?」
能天気な声と共に、突然背中に押し付けられる柔らかい感触。
あたしはまわされた手をくぐるように抜けると、その腕をつかんだまま振り返る。
「別に何見てたっていいでしょ、ね?あとあたしはユミじゃなくてミ・ユ!」
上下に腕を振りながら、未冬に向かって言い放つ。
…ま、わざと間違えてるってことは彼女のテンションが高い証でもあるんだけど。
あたしは呆れたように一瞥して、再びグラウンドへ視線を戻す。
視界の端に映る未冬も、釣られるように視線を動かしている。
「それで、ミユちゃんは結局何見てたの?ユウヤは障害物競走にエントリーしてなかったと思うけど…」
「いや、ぼーっとしてただけだから。別に優陽のことは…」
未冬の言葉を否定しようとして、無意識に言葉が詰まる。
見ていなかった、といえば嘘になる。でも、ぼーっとしてたのも半分事実。
…まぁ、普段鈍い未冬も流石にこれは気付いてるみたいだし。ニマニマしてるのはちょっとムカつくけど。
あたしは顔を動かして、未冬を視界から追いやる。
綱引きの待機列に並ぶ優陽は、大振りに腕を伸ばすとそのまま大きく欠伸をしていた。
あと2話くらいかけて体育祭編をやる予定です。
前回にも言いましたが、彼女達の関係に進展はありませんのでご了承を…




