なんて察しのいい…
「はぁ…」
「おかえりなさい。どうしたの美優?溜息なんてついて…」
優陽と別れ、帰宅と共にソファーにダイブしたあたし。
夕食を作りながら、心配そうに掛けてきたお母さんの声も、変なフィルターがかかったみたいに頭の中に入ってこなかった。
「別に…」
耳に響いた、気怠げな自分の声。
ズルズルと身体を引きずりながら、荷物を持って自室へ向かう。
ここままここにいたら、きっとお母さんにあたってしまうような気がするから…
「…そう?…それじゃあ、ご飯できたらまた声かけるから、そうしたら降りてきなさいよ」
お母さんの声を無視して、自室の鍵を閉める。
あたしってホント、我ながら身勝手な女…
「はぁ…」
再び、深い溜息。
口は災いの元って、きっとこういうことを言うのかな…
自分の気分がどんどん沈んでいく中、あたしが扉を背にして座り込むと、不意に床に置いてあったスマホが振動しだした。
『着信:未冬』
未冬、なんてタイミング…
画面に表示された文字を前に湧き上がった、得体の知れない安心感と、彼女に対する醜い嫉妬。
あたしの身体は、そんな自分の考える間もなくスマホに手を伸ばすと、脊髄反射でもするように通話に出ていた。
「もしもし…」
『あ、ミユちゃん!どうだった!?ユウヤとは上手くいった!?』
「あー…」
『…?──…ぁ…』
電話越しに聞こえる、若干興奮気味な恋敵の声。
しばらくの間を空けて、あたしの声音で何か感じ取ったのか、彼女はバツが悪そうに声を上げると、落ち着かせるように息を吸う音が聞こえてきた。
『えっと…その、なんかごめん』
「あ、いや…別に気にしてないからいいんだけど…」
『…そう?』
「うん。平気平気」
『そっかぁ~』
強がるあたしの言葉に、気の抜けたような声を返す未冬。
本当は平気じゃないけど、それを伝えたら何も進まない気がする…
『それで、結局何か進展あったの?…その感じだと、あんまりいい雰囲気って感じじゃなかったみたいだけど…』
「未冬、アンタわざわざ言わんでいいことを…」
『あはは…ごめんごめん…』
「はぁ…」
反省した様子もなく、軽い調子でそう返す未冬。こんな性格なのは今に始まったことじゃないし、別にいいけどね…
「優陽のさ、好きな人が誰か、告白されたんだよね…」
『えぇ…』
「それで、なんか協力してくれないかって言われて…」
『反射的にOKしちゃった、と…』
「うん…」
言葉を考えるよりも早く、口から漏れた自分の声。
相変わらず、未冬はこういう部分だけ察しがいいんだよね…




