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ぐわははは、今日よりこの町は我が物とするのでアール

ごめんなさい、遅くなりました。

「うおおおおおおおおおっ!!」



今、俺は町にいる!!



異世界に転生してから苦節15年。



ばかでかい畑で終わりの見えない畑仕事を人生が終わるまで続けるなんてやってられない!


そう思いたち、生まれ育った田舎村を飛び出て俺はこのピストルの町にやってきた!



本当の目的地は、ここじゃなく侯爵様が直々に納めるサザエル市だったんだが…



天下の侯爵様が納めるサザエル市なら、街道を通れば安全に迷うことなく行けるんだが、誰にも何も言わずに脱獄犯の様に村を飛び出した俺は金目のものは全くない。



整地されていて安全な街道とは、誰かが整地し安全を保っていると言うことで、関所の多いこと多いこと。



1つや2つなら関所の手前で脇にそれて掻い潜っても良いと思ったんだが、その数の多さからずっと脇道を進まなくてはならないくらい関所があった。



定期的にうちの村に来てくれる行商の兄ちゃん、この関所全部に通行両払ってたのかと思うと、行商人も大変だ。



まあそれで、どうせずっと道なき道を進むのならもういっそサザエル市まで一直線で向かえばいいじゃん俺ってマジ天才!と、街道沿いから外れて森を横断し始めた。



それが一ヶ月前のことで、案の定森をさ迷い、命からがら森を抜けてこのピストルの町にたどり着いた。



そして、捕まった……。



なんでぇぇぇぇぇ!?




「で、君は本当に人間なんだよな??」



「だからちゃんと同じ王国の人間ですよっ!!幾らイノシシの毛皮を被っていたからって、いきなり武装したおっさんたちに袋叩きにされそうになった僕を哀れんでください!」



こいつ、絶対俺のことをいじってる!!いじられてる!!



「いや、そりゃ大イノシシの毛皮を被った蛮族が町門に向かって雄叫びあげて走ってきたら警戒するよ、それが仕事だもん。むしろあんな紛らわしい真似して警備隊に迷惑をかけたんだ、君はもっと反省するべきじゃない?」




あまりの正論に、ぐうの音もでない。




「君の居た村から考えるとサザエル市までは結構逸れた位置にこの町はある。まあ、西の森で1ヶ月暮らした君だ、どうだい?これから僕と一緒に冒険者ギルドに行かないか?」



これが俺とこの町1番の冒険者であるラジールとの出会いだった。


◇◇◇




ピストルの警備隊に囲まれても俺に危機感はなかった。



体力を出来るだけ失わないように歩いて森を出た俺は、この町が目に入った瞬間に駆け出した。



それは喜びや安堵、空腹とかいろんな思いに突き動かされたもので、正直、今考えても同じ行動をしただろうなあって思うし、しかたないことだった、うん。



途中でなんとか手を尽くして美味しく頂いたイノシシの毛皮は、綺麗に剥ぐことができなくて品質は悪いが、幾らか金になるだろうと持ってきた。



今は渇いてかすれた喉を潤し、腹と背中がくっつきそうな程の空腹をどうにかせねば!



そうして町に近づき町門が見えてきた頃に、金属の槍で武装した男に町までの道を塞がれ、甲高い笛の音がならされた。



するとたちまち、同じく槍で武装した町の警備隊だろう男達に囲まれてしまった。




「この町にいったいなんのようだ!返答次第によってはここを通すわけにはいかない!」




ここしばらく人と会話などする余地もなく、喉は葉に水分を多く含んでそうな草をはみはみしてなんとか耐えしのいだ俺は当然のように上手く話すことがなくて……。




「ぐ、ぐいもの……」



いや、アレだよ、授業中に急に当てられたときに、むっちゃ痰が絡んじゃったアレだよ。



「「「!!!!!!」」」




背中に冷や汗が滴る。



なんだか嫌な予感がするな、なんてものじゃなく明らかに風向きは悪い方に変わったのがハッキリとわかった。



しかし一縷の希にかけて、俺はそそくさと警備隊員たちの間を抜けて町に向かおうとするも……



当然そんなことを許してはくれない。



そして、いざ行動に移した彼らの動きは速かった。




「フンッ」




警備隊を無視して町に向かった俺に、俺から見て右側の警備隊員が槍の石突きをつき出す。




「!!」




まさかいきなり攻撃されると思ってなかった俺は、それでもなんとか右から来る石突きを辛うじて避けることができた。



彼の行動に合わせて俺と町の間の警備隊員は一歩下がって槍が有利になるよう間合いをとり、そして左の警備隊員が距離を保ちながら今度は穂先で突きを放つ。



しかし俺は俺でやられてばかりいるわけじゃない。



生まれてから何度も使ってきた地属性の魔法を発動する。




「はぁぁ!」




そして俺は、槍を突きだす警備隊員の踏み込んだ左足の地面をふかふかに耕してやる。



すると、急にふかふかになった地面にバランスを崩した警備隊員が正面である俺の方に倒れてくる。



当然、普段から訓練を行って居た彼はこけてしまうようなことはなかった。



が、しかし、よろけてしまった彼の槍は的を穿つ事はあたわず。



そして、正面によろめいた彼にこちらから1歩踏み込めば、槍の長所である間合いが潰れ俺は上手く彼の懐に入り込む。


そして流れるように彼の脇差しの剣を引き抜き、彼の首筋に当てる。



今度は右でもなく左でもない、正面から、そしてその次にはまた右からと、連携して当たり確実に俺を追い込むはずだった警備隊員たちの動きは止まる。




「……んっうん、んうん。えっ、なんでこうなったの?」




喉に絡まった痰を咳き込んで飲み込み、久しぶりにまともに言葉を発した。



そんな俺の声は、成人男性にしては少し高めで、そして腑抜けた声であった。



それに警備隊の面々も一瞬呆ける。




『『『『いかれた蛮族じゃないのか?もしかしてただの迷い人だったのか?』』』』





その後、特に敵意がないことを伝えて誤解は疑いにまで落ち着いた。



そうして俺は10人を越えるむさ苦しい武装した警備隊に囲まれて町の入り口まで歩く道すがら、世間話を装った事情聴取を受けることたなった。



サザエル市に向かうはずが森で迷うこと1月。命からがら森から出て来ることができた。



そゆな状況でこの町が目にはいって、嬉しさのあまり雄叫びをあげて駆け出したらやべえ蛮族に間違えられて一悶着。



俺のあまりにもあんまりな行動に、さんざん警備隊のおっさんどもから説教をくらったのだが、何がきっかけか俺はこのいけすかない金髪野郎がこの町で俺の面倒を見てくれることとなった。


そして話しは冒頭に戻る。



「冒険者ギルド!?この町にあるのかっ…いや、あるんですか、ダンジョンが?」




「ふふっ、知らなかったのか。そうだよ、ここは【ピッケルの迷宮】を中心にできた迷宮都市ピストルさ!!残念ながらピッケルの迷宮の上位互換に当たるダンジョンが別にあるから、ここは都市って程大きくはなくて町レベルだけどね。」




この世界には、ダンジョンが存在する。



それは多種多様で、洞窟であったり、建物であったり、島そのものがダンジョンになっていることもある。



ダンジョンは、ほぼ無限にモンスターを産み出し続けるため、モンスターの素材や鉱物・塩・薬草などを比較的簡単に、かつほぼ永続的に手に入れられる宝物庫に等しい。



当然、ダンジョンに住み着くモンスターや勝手に生成されるトラップは危険で命がけだが、ハイリスクハイリターンを体現するのが、この世界のダンジョンだ。



そんな宝の山に群がるように人は集まり、大きな都市にまで発展する。



それが、迷宮都市と呼ばれる。



そしてそんな迷宮都市に集まった命知らず達が、ダンジョンの情報を共有しあえる組織が生まれ、それが冒険者ギルドと呼ばれるようになった。



つまり冒険者ギルドがあると言うことは、イコールダンジョンがこの町の近くにあると言うことでもある。




「見てたよ、さっきの。いきなり槍で突いてこられたのに直ぐに反応して避けてたし、その後の地魔法での妨害も上手かった。それにあの時被ってた毛皮は大イノシシの毛皮でしょ?へったくそな処理で半分以上腐ってえげつない匂いしてたね。大イノシシを狩れるなら腕っぷしは十分だ。今なら僕の推薦まで付いてくる!どうだい!?」




急に早口で喋りだした!?



悪意とかは全然感じないし、それに……




「いえ、それほどでもありません。冒険者ギルドに推薦していただけるなら、ぜひお願いします。と言うか、警備隊の身元保証人になって貰った貴方の誘いを断れるほど懇願無知じゃねえことわかってるだろ……。」




「なんか言ったかい?」




「いっ、いえ、大丈夫です」




「だよね!じゃあ早速ギルドに向かおう!」




初対面の人間にああも恩を与えられてはなかなか断りずらい……。



井の中の蛙かもしれないが、正直自分の実力にはかなり自信がある。



もとより、退屈が嫌で、嘘か誠か身分経歴を問わず侯爵家が失脚を集めていると聞いて飛び出したのだ。


俺は自信が多少は猪突猛進な気があることはわかっている。


だから冒険者になってダンジョン探索して、周りからちやほやさる自信もあるし、ちやほやされたいとも思ってる!!



そんな冒険者になりたい気持ちがあるから、この誘いはやぶさかではない処か渡りに船、正直空腹で目が回るような気がする。



なんか急にことわざばっかり使って頭が疲れた……。



喉が乾くと唾液が泡になるって経験があるんだが、実はさっきから泡の様な涎すら出てこないほど喉が乾いたぁぁ。



それなのになんだあの金髪野郎、さっきから食事処の看板や市場にパン屋と食いもん屋の前ばかり通りやがって!!


こんなの、生殺しだ。



目の前の楽園を見ていると理性を失ってしまいそうだ。



だからなんとか目をそらそうとするもどうしても吸い寄せられてしまう。



なんだあれは異世界にもケバブがあるのか!?ああ、なんてみずみずしそうな果物だ。見た目は桃位のでかさのマスカットだ。絶対上手いだろアレ。ここは内陸じゃなかったか、鮮魚が並んでる!もしかして深い川か湖畔でもあるのだろうか?ああ、ワインなんて飲んだことないけど、飲料と言うだけで喉から手が出るほど欲しい……



なんて、キョロキョロしていると諸悪の根元が




「こう言う大きい街は初めてかい?ふふふ、そりゃそんなキョロキョロしていたらわかるよ。僕も昔はそうだったなぁ。まあ直ぐにこんな町並みにも慣れるさ!」




ブチッ



おんどりゃぁぁぁぁ!!!!!!!!











1話はこれから何度も修正が必要だと思いました。

ですが、あえて1話はそのままで置いておこうと思っています。

それは、物語が1話の時間軸に追い付いた時に、1話と同じ内容を加筆して矛盾をなくして再び書くつもりだからです。

その時皆さんは、見きり発車の恐ろしさを思い知ることになるかもしれません。

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