8話 キャラエピ 柏木莉音の生徒会相談
時刻は3時半。生徒会室には一人の少女が居た。二十人以上の黒服の男達と一緒に。
「…帰りたい」
少女は顔を歪めながらそう呟く。すると、すぐそばに居る黒服の一人が即座に反応し―――
「お車を手配しましょうか?」
「ちゃうちゃう。例え話だから。私帰ったら拓斗君泣いちゃうでしょ? 私ったらやっさし〜」
彼女は、手をヒラヒラを振りながら、ヘラヘラと言う。彼女の名前は柏木莉音。
彼女の父親は大企業の社長兼代表取締役。その会社で作る製品は世界トップクラスのシェアを誇り、一代にして莫大な富と名誉を手に入れた。
そんな大企業の娘が、ノコノコと外を出歩いていいわけなく、常に護衛として屈強な体をした黒服の男達が、ずっと一緒にいる。莉音本人は邪魔で邪魔で仕方が無いのだが、親が心配性な部分もあり、仕方がなくいる感じだ。
「はい。莉音様はお優しいです」
「…」
と、色々と空気の読めない黒服達にも苦労が残るが、莉音には、もっと多くの悩みがある。
彼女の最近の悩みは、『友達(後輩)付き合い』だ。高校二年生になってこんなことで悩まされるとは思っていなかった。
原因は一年生ながら生徒会長の澪と、一年風紀委員の
拓斗の二人。ラブコメさながらの展開に、彩那や楓など、生徒会メンバーは、二人の行動に振り回さればかりである。
「はぁ…こんなピンチに他の二年メンバーは何をやってるのかね…」
莉音の心配は尽きない。澪と拓斗の関係もそうだが、問題は他にもある。
『二年生徒会メンバーが莉音以外来ない』というものだ。
通常、特別な用事がある以外は生徒会には来るべきだ。だが、『副会長』『二年会計』『二年風紀』の三人は生徒会にくる以前に、学校にすら来ていない。連絡も繋がんないし、電話に出たと思ったら「ごめん! 忙しい!」と切られてしまう始末。
そもそもバカ正直に生徒会に来ることがおかしいのだろうか。なんて考え始めてしまっている。
「すいません遅れました!」
「おっ、来たね」
莉音が頭を悩ませていると、タイミング良く拓斗が入ってきた。三、四日目は莉音と拓斗の番なので、拓斗がやってきたという訳だ。
先程まで部屋中にいた黒服の男達は、拓斗がこちらに向かっていると気が付くと、窓から飛び降りて行った。生徒会室があるのは、校舎の3階なのだが、そんなものお構い無しに飛び降りて行く。勿論完璧に着地し、生徒会室には塵一つ残っていない。
「……準備完璧じゃないですか。俺来る意味なかったんじゃ…」
拓斗が本来やるべきだった、掃除やレイアウトの変更などの仕 事は、入ってきた時には完璧に行っており、レイアウトも移動されていた。なので、拓斗の仕事は何一つ無い。
「あ〜…別の人に手伝って貰ったんだよね…話でもして待ちますか。後三十分ぐらい経ったら行動しよっか」
「そうっすね。…さっきまで誰かいませんでした?」
莉音は元々ソファーに座っているので、正面で向かい合うように、拓斗が座る。
『誰かが居たかもしれない』という、無駄に感の鋭い拓斗は置いておき、莉音には聞かなければいけないことがあった。そう―――
「んで? まだ付き合ってんの? 妹ちゃんと」
「ぐふっ! …その話にいきますか」
飲んでいたお茶を吹き出しそうになる拓斗。「汚いなぁ〜」と、またもおチャラける莉音。嫌な先輩である。
「…勿論ですよ。運命ですから」
「おぉう……恥ずくないの?」
「それ先輩が言うんですか?!」
恥じることなく堂々と言う拓斗。それを聞いた莉音は、逆に照れてしまう。たまにある、『聞いている方が恥ずかしくなる現象』。
しかも、二人で生徒会室という密閉された空間。誰もいないからこそ、かえって恥ずかしくなってくる。…決していかがわしい意味は何一つない。
「全く…『ふじゅんいせーこーゆうー』だねぇ。幼女はダメなんだよ?」
「いやっ、澪に…姉に許可貰ってるんで合法です」
「んだそれ。異質な関係だねぇ…」
「女性(子供)と付き合うのに、家族の許可が居るなんて…」と、莉音は少し衝撃を受ける。
莉音は家族の許しなんて許しを乞う必要が無く、自由気ままに生活できる。本来は許可あった方がいいのだろうが、莉音が勝手に「いらないっしょ!」と思っているだけ。
「でも、先輩も居るんでしょ? 彼氏。元彼十人でしたっけ?」
「ぐふぅ!」
先程の仕返しか、今度は拓斗が莉音に『口撃』する。拓斗は、ニヤニヤしている。
実際、莉音には元彼が十人いる(1話参照)。澪から十人以上居ると聞いた時には、「大企業のお姫様がそんなに男性経験豊富でいいの?!」と、衝撃を隠せていなかった。
「先輩に向かって言うようになったねぇ…これが成長ってやつか…」
「いや、別にそうゆう訳じゃ…んで、結局どうなんすか? 十人。居るんですか?」
ニヤニヤしながら聞いてくる拓斗。
「なんだコイツうぜぇ。イケメン台無しだな」と思いつつも、聞かれた質問にはしっかり答える莉音。実際の所は二十人以上居るのだが、十人という都合のいい数になっているので、そのまま話を押し通す。
だが、莉音とてこの話が永遠と続くのはダルい。その為、嘘を全力でつくことにした。
「拓斗君…これは誰にも言わないかい?」
「? は、はい……」
「実はね……」
莉音は、実際してもいないことを次々と話す。ただ嘘を押し通うそうとしているだけだが。
莉音の口から次々と告げられる放送禁止用語。これが高校生のする行為なのかと、莉音も言いながら恥ずかしくなってくる。もしこれが生中継されていたとしたら、世界最高の放送事故だっただろう。
「……」
話を聞いた拓斗は、顔を真っ赤にし、心臓が張り裂けそうなぐらい鼓動が早かった。そして、拓斗の他にも、心臓が張り裂けそうな人がいて―――
「おい…どうする?」「いや…旦那様に言えるはずがないだろ…」「童貞殺し……」
こっそりと部屋に盗聴器を仕掛けていた黒服の人達だ。部屋の会話を盗み聞きしていた彼らは、本当なのか、嘘なのか判別することが出来ず、深い混沌の中をさまよい続けていた。
遂に、楓だけでなく、莉音にも悪い通り名ができてしまった。
これは、後日談であるが、その日、拓斗は寝れなかったらしい。「目を瞑るとその光景が脳裏に浮かぶ」と苦情を言うのだが、それはまた後の話。
「…というか、ふと思ったんですけど。俺副会長に挨拶してないんすよね。いないんですか?」
本当に唐突な拓斗。
拓斗が生徒会に無理矢理入れられてから、約一、二週間。未だ副会長には挨拶をしていない。なんなら莉音以外の先輩と会っていない。
「んぁ。今居ないんだよねぇ…」
「居ない? 休みですか?」
「いや、私にもわからん」
「へ? どうゆうことっすか?」
拓斗の疑問をぶつけられた莉音は、とても困った表情をしながら、返事をする。
実際莉音にも分からないから何も言えないのだ。だが、タイミングがいいのか、悪いのか、莉音のスマホが振動した。画面を見ると、ニヤリと笑い、画面をタップした。
「(…? 電話かな?)」
「もしもし〜! あ〜! これはこれは! 副会長さんじゃないですか!」
唐突に掛かってきた電話の相手は、現時点で学校不登校の生徒会副会長『星野梓』だった。
キャラ紹介のコーナー⑤
裏主人公『柏木莉音』
16歳。生徒会二年書記。身長160cm。橙色のショートカット。透き通ったオレンジ色の瞳。
大企業のお姫様。金持ち。先輩としてはいい人だが、性格に難あり。妄想癖があり、下ネタをバンバン言ってくる。めっちゃモテる。
彼女は自分でも、どうゆう立ち回りにするか不明です。ただ、妄想癖は自分と同じなので、好きなキャラにしていきたいですね。