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私が好きなのは妹の彼氏でロリコンのアイツ!  作者: 月宮流夏
春と暑さが暴れた一学期
7/21

7話 キャラエピ 勇村楓の生徒会相談②

「純粋に。なんでお前がいるん?」


「ふぇ? 相談者に対してその態度は減点だよ?」


 左手で自分の左頬をツンツンしながら言う。このポーズは、まあ、少なからず可愛いのだが―――


「そのポーズ可愛くもなんともないからな」


「えぇ?! さっき10分かけて考えたのに!」


「だとしたらセンス無さすぎだ! やめとけ!」


「さ、茶番はそこまでにして? 貴方生徒会役員でしょ?」


「情緒不安定かよ…」


 楓に対し、相変わらずの態度を見せる澪。拓斗が生徒会に加入してから、楓も心がだいぶ強くなった。前とは大違いだ。


「私今回ガチだから。やる気ないなら帰るよ?」


 と何故か逆の立場から言ってくる澪。それ対して楓は―――


「彩那ぁ〜? 澪帰るって〜!」


 嬉しがっていた。超嬉しがっていた。


 声質には出ていないが、「はよ帰れ。お前がいると命危ねぇから。しかも相談とか、下手したら消されるじゃねぇかよ」とか思っていた。


「ちょ! 誰が帰るって言ったよ!」


「オメーだよ」


「…またまた〜。とりま座りなさんなって」


「逆な。普通」


 立場が逆転し、澪に催促され、楓は椅子に座る。


「まあ、最低限度は対応するけど…五分な。時間守れよ?」


「モチのロンよ。私を誰だと思ってんの?」


「え? 権力乱用している犯罪者」


 などとは言えるはずもなく―――


「…生徒会長様です」


「よろしい!」


 珍しく空気を読んだ楓であった。


「そんで? 相談って?」


「ん。実は……」


 澪の相談事。楓にはどんな内容が何となく分かっていた。そして、それと同時に超めんどくさくなっていた。


「拓斗を奪う方法を教えて欲しいんだよね」


「お前の思考ってやっぱ狂ってんの?」


 すっかり忘れていた『澪が拓斗を好きなこと』。これが本当に面倒臭い。

 そもそも『奪う』って発言がよろしくないのに、真顔かつ本気で言ってくるので、楓は恐怖すら感じる。


「…まあ聞くだけ聞こうじゃないか」


「サンキュー。まあ、ご存知の通り、私は拓斗が好きな訳ですよ。それで…」


「はぁ…」


 実は楓はこの話を、割とガチ目に二十回以上聞いている。しかも、会って話すだけでなく、家に帰ってからも電話されたり、メール等で死ぬほどこの話題にされている。


 楓としては早期解決を願っているのだが、澪も拓斗も面倒臭い人種。後一年ぐらいは平気でこの状況が続くと思っている。楓には、この地獄があと一年以上続くという事になる。


 なので、この相談で『諦めさせる』か『無理やり付き合わせる』の、どちらかの意見をハッキリ言うつもりだ。そう。あくまで()()()だ。


「…ってこと。知ってるよね?」


「とっっっっても知っております。お前の次ぐらいに知ってるわ」


『二十一回』


 心の中でカウントする楓。見事記録更新を成し遂げた後、楓はどちらの選択肢を取るかを悩む。正直どっちを選んでも、何らかの方法で楓に危害が加わりそうだが、殴られる事を覚悟して言う。


「もし拓斗と付き合える事になっても、妹ちゃんと別れるんでしょ? それって姉としてどう思うの?」


「ん? 別にどうでもいいよ? 萌葉の魅力に私が勝っただけじゃん」


「お、おぉ…」


「(怖ぇよ! 何言ってんのこいつ?! 姉としての威厳とかないの? サイコかよ!)」


 と、ただ純粋に恐怖を感じていた。

 妹を蹴落としてでも自分の欲望に忠実な澪。「姉ってなんだっけ」と、終わることない迷宮へ足を踏み入れた楓。開幕早々限界を迎えていた。


「もし仮に澪が告ったとして、拓斗が振ったらどうするの? 生徒会もあるし、妹ちゃんとの関係も険悪になるんじゃ…」


「う〜ん…そうだね…そうなったら…殺すかな」


「……ごめん俺耳腐ったかも。もっかい言って?」


「え? だから、殺す。kill。分かる?」


「……」


 笑顔で殺害予告をする澪。いくら楓でも言ってることが理解できなかった。


「こ、殺す? 誰を? 自分自身を?」


 震え声で尋ねる楓。澪の言ってる意味が理解出来ずに完全に脳がバグる。そのせいで言うことのおかしくなっている。


「何言ってんの…拓斗に決まってんじゃん」


 「当たり前でしょ?」と言ってくる澪。楓は心の底から「帰りたい」と願っていた。


「…これ俺が相談に乗れるレベルじゃないんだが」


「ん? なんで? おかしくないじゃん」


「あっ、この子ダメだ」


「それより! 相談への返事は?!」


 その後、彩那から終了の合図が来るまでひたすら澪のサイコパス発言を聞かされた楓は、精神に多大なダメージを負い、頭のネジが何本か吹き飛び、頭がおかしくなってしまった。

 それも、『生徒会役員の威厳』なんてものは微塵も感じれないぐらいに。


「次の人〜入って〜」


 相変わらずの萌え声の彩那。そのアナウンスで部屋に入ってきたのは―――


「お願いします…」


 負のオーラ満載の同級生だった。

 絶対に「何があった?」って聞いちゃダメなのに、頭のネジがぶっ飛んでる楓にそんな常識は通用しない。


「何があった? 負のオーラ満載だけど。振られた?」


 相手が相手だったら今すぐ殺されてもおかしくはない発言だが、相談者は聞こえなかったのか、無言のまま席に着く。彼も相当イカれている様だ。


「……何があったの?」


「実は…彼女にフラれまして…」


「ほう! それはおめでとう!」


 「ぶち殺しますよ?」と殺意の籠った目で楓を睨む相談者君。今のは完全に楓が戦犯なのだが、頭のネジがぶっ飛んでる楓にはそれが理解出来ておらず、反省なんてしないまま話が進む。


「……んで。なんでフラれたか分かんなくて」


「ほう。なら、最近君がその彼女さんにしたことを言ってみなさい」


 凄く上からものを言う楓。実際生徒会役員なので上からでいいのだが、相談者君は少しムカッとくる。


「…そうですね…誕生日プレゼントに指輪…ペアリングなんですが、それを送ったら『思いが重い』って、返されまして…」


「……」


 楓には反論することが出来なかった。自身の考えるがことごとく否定され、楓はこれ以上物事を言う気になれなかったので、早めに相談を終わらせることにする。


「あのなぁ…誕生日プレゼントに指輪は早えぇ!」


 楓は過去の自分を殺した。


「こうゆう時は指輪じゃなくて日用品を送るんだよ! てゆうか彼女なんてつくるな! いい事ねぇから!」


「は、はぁ…」


 いい事ないのは楓や非リア勢の人達だが、わざわざ立場を悪くする必要は無いので、適当に言葉を並べておく。


「彼女なんて作っても、金喰われるし、男友達にイジられるし、挙句の果てにフラれるんだろ? いいことないじゃねぇかよ!」


「確かに…彼女にはブランド物をせがまれたから買ったり、食事だって毎回僕の奢りで、友達はイジられるし、フラれる時は「別に好きな人できた」とか言われるし…確かにいい事なんて何も無い!」


「だろ?! それでこそ君だ! それにしても不運だね君!」


 二人は立ち上がり、ガッチリと握手する。丁度時間になり、彩那からアナウンスが来る。


「ありがとうございました…! 僕は強く生きます!」


「おう! 頑張れ!」


 この後、楓は『非リアの王子』という全く名誉が無い称号を与えられる。その時、楓は「嬉しくねぇ!」と喚くのだが、それはまた別の話……


――――――――――――――――――――――


「おつかれ。今日の分はこれで終わり」


「ふぃぃ…疲れたぁ」


 初日の相談が終わり、やっと一息つく。

 楓が洗脳した同級生の後、イタリア語しか話せない人だったり、ガチの相談をしてくる人だったり、またも澪が来たり、大波乱だったのだが―――


「でも、なんだかんだで楽しかったな」


 『人の役に立つ』。楓があまりしてこなかったこと。実際役に立ったかは分からないが、生徒会活動ではあまり体感することが出来ない充実感を楓は噛み締める。


「なんだ…初めのあの時が嘘みたいじゃん」


「だな。まあ、でももうやりたくはないな…疲れるのは勘弁」


 外はすっかり暗くなり、生徒会室の窓から外を眺める楓。夜風に吹かれながら、すっかり雰囲気に酔いしれる。が―――


「…あんたに感動はいらないな。似合わない」


「なんでだよ!」


 やはり、楓が人権を取り戻すのはもう少し先になりそうだ。

???「彩那さんすいません」


彩那「は? あんた誰?」


???「あっ、作者の流夏です」


彩那「はぁ……それがどうしたの?」


流夏「次は彩那さんの番なのですが、パスさせてもらいます。設定上の理由で」


彩那「………は?」



次回! 莉音の相談!

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