表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が好きなのは妹の彼氏でロリコンのアイツ!  作者: 月宮流夏
春と暑さが暴れた一学期
6/21

6話 キャラエピ 勇村楓の生徒会相談 ①

キャラクター一人一人が活躍するキャラエピ第一弾。不幸な男が更に不幸になる話です。

「(やりたくない。帰りたい。ゲームしたい。ゲームダメなら勉強でもいい。だから―――)」


「引きずるのだけはやめてくれない?! 彩那(さな)?!」


「うっせ。時間無いんだよ。結局みんなやるんだから。ほら、観念しやがれ」


 高校生の男とは思えないほど、だらしない声を上げながら、廊下を引きずられる(かえで)と、生徒会役員とは思えない言動をしている彩那。二人は、昨日突如言われた、『生徒会相談』の第一日目のメンバーだ。

 彩那が受付と管理、楓が相談員役で行う。


「頼むから役職変わってくれぇ! マジで嫌なんだって!」


「うるさいなぁ! 私だって相談員ヤダ! でも二日制なんだって! だから二人組なの! 結局はどっちもやらなきゃいけないの! 文句は今いない先輩達に言って!」


 楓が相談員役をやりたくない理由は二つほどある。一つ目は―――


「だってさ! 相談する奴らってさ! 「彼女にプレゼント送ろうとしてるんですけど、何がいいですか?」とか聞いてくんだぜ?! 地獄だろ!」


「それ私も同じこと思ってるから!」


 このやり取り、非リアの楓には苦痛で仕方がない。楓は教室でイチャついていると、「何リア充キメてんの? 死にたいんですか?」とえげつない目線を送る。これほどまでに非リア拗らせているのは、そうそういないと思う。


「しかもあれでしょ?! 例えば「お揃いのペンダントにしたら?」とか言ったら、「いやぁ…ペンダントは古いっすよ。時代は指輪じゃないっすか?」とか言ってくるんだろ?! なら相談すんじゃねぇよ! 決まってんじゃねぇか! ぶち殺すぞ!」


「だからそれ思ってるから! リア充は理解できない生物なの! 生きてる次元が違うの!」


 恋愛難民の二人は、非リアを極め、被害妄想激しい二人になってしまっている。

 彩那は比較的モテるが、理想が高く、少しでも悪い頃があると 『あっ。別れませんか?』という『すぐ振る女』として、若干有名だ。

 楓はシンプルに非リアを極めている。彼に「彼女いる?」と聞くと、「うん。いるよ? 恥ずかしがり屋で、スマホから出てこないんだよね〜」と答え、毎回ドン引きされる始末だ。


「そいつはまだいいんだよ! 「なんかリア充やってんな〜。四肢もげねぇかなぁ〜」って思えるから。けど! 一番ヤバイのって『ガチで相談してくる奴』なんだよ!」


「わかりみ! わかりみしかない!」


 引きずられながら、二つ目の理由を説明する楓。先程から彩那は異様に賛同しているが、「まあ、分からんくもないけど、私には『モテる』って目標あるから。そうゆうのに対応してこそ完璧なんたよ!」と無駄に息巻いていた。


「マジで嫌なんだよなぁ……先行後攻変わらん?」


「…これは言いたくなかったけど…澪が「楓先ね」って言ってた」


「ぐがぁ! 嘘かもしれないけど確かめたら死ぬ! 疑ったら負け! 詰みだァ!」


 そんなやり取りをしていると、いつの間にか生徒会室まで来ていていた。


 彩那が言ったのは必殺技。澪は決してそんなこと言っていないが、疑われるのは彼女はあまり好きでは無いので、「え、何楓。疑ってんの? 知ってるよね? 私が疑われんの嫌いなこと。え?」と生命活動を終了させられて終わりだ。


「大人しくやります……嫌だァ!」


「情緒不安定か! 諦めろ! 私もいい加減疲れた! ……もうちょい身長あれば楽に運べるのに……」


「ん? なんか言った?」


「…! なんでもない! ほら! 早くゴミ落として!」


「俺がゴミだらけなのは、お前が俺をルンバにしたからだろ!」


 楓のゴミまみれの制服を綺麗にしながら、彩那は色々考える。悩んでいたり、嫌な事があるのは楓だけでは無いのだ。


「ほら! 準備あるから急ぐよ!」


「…おう」


 楓の目には、彩那が無理をしているように見えた。だが、楓は空気を読めない天才。ここで「どうした?」と聞いてこそ楓だが、さすがに聞いちゃダメなオーラが漂っていて、いくら楓でも聞かなかった。


「ほら! 後一時間ぐらいしかない! 急げぇ!」


「わかった! 分かったから取り敢えず手に持ってる棒を置いて!」


―――――――――――――――――――――――


「準備は?」


「オーケー! というか完璧! まだやりたくねぇ気持ち満載だけどな! この学校の生徒がマシなことを願う!」


 時間は少し過ぎ、放課後。六時間目の部分を、生徒会室のセットに使ったので、始まるのは約十分後ぐらいだ。そうなると、楓は授業サボってるのに、さらにサボろうとしていたことになる。


「はい! どーぞ〜」


 と彩那の裏声が聞こえる。「ガチもんの萌え声ってこんなんなんだ…」なんて思いつつも、気を引き締める。

 生徒会としての地位を守るためにもしっかりやらないと。後に(みお)に消されるやもしれん。


 彩那が生徒会室のドアを開け、一人目を案内する。一度廊下にいる彩那の所でクラスと名前を告げてから、生徒会室に入室する。そもそも、一般生徒は入れる機会がないので、これだけでも貴重な体験である。


 一人目は、二年生の先輩だった。そして、楓の願いは虚しく、一番初めからヤバいやつに当たってしまう。


「男と女。カップルかよ…ふざけんなよ!」


 一発目からカップル。しかも手を繋いで入室してきた。なんて引きのいい楓なのか。彩那は廊下でクスクスと笑っている。それを見て微笑んでいる人が居るのは秘密だ。


 カップル登場だけで楓の帰りたいメーターはどんどん上昇しているのに、さらに追い打ちがかけられる。


「ど、どうぞお座り下さい…」


「あっ、失礼します!」「お願いします」


 忘れていたが、生徒会メンバーは、ほぼ先生のような立ち位置で、話し掛けるのにも、生徒会室にいたら敬語で話す。タメ語を話した奴は澪により存在を消される。『居たら』の場合だが。


「そ、相談というのは……」


「はい……実は俺達明日で付き合って一ヶ月なんです。それで、互いにプレゼントを送ろうってなって。そのプレゼントがいいのか、判断して欲しいんです!」


「…ごめん言ってる意味が理解できない。もっかい言って?」


 不意打ちを喰らい、楓の脳は、一瞬で限界を迎えた。


「あの…一般的に、そうゆうのって一人で来るもんなんじゃないの?」


「まあ、そうなんすけど。やっぱ……」


「(タメ語かよ……まあ、別にいいんだけど…)」


「離れたくないんですよ! 可愛すぎて!」


 二人は頬を赤らめながらそうゆう。それを聞いた楓は―――


「よし。今すぐぶっ殺してやる!」


 などと言えるわけなく、実際のところは―――


「なるほど。なるほどねぇ! そうゆうことかァ! なるほどなるほど……」


 と、思考が停止していた。頭を抱え、首を上下にブンブンと振りながら楓は悶絶する。


「……因みに先輩(男)は、何を渡すんですか?」


 少し時間が経ち、落ち着いたのか、楓は真面目に相談に乗る。なんだかんだ優しいし、真面目なのが楓だ。失われた人権は、ここで生き返る。ほんの少しだが。


 先輩(男)は、楓の方へ移動し、耳元で小さな声で話す。


「まあ…ペンダントとか?」


「逆パターン!」


 後ろに仰け反り、椅子の背もたれに大幅に寄りかかる。先程言っていた、『ペンダントは古い』といったすぐ後にペンダントが出てくる。

 楓はこの瞬間に一級フラグ建築士の仲間入りだ。


「なんですか?! 急に?!」


 男の先輩はビックリし、1歩…いや、4、5歩距離をとる。


「なんでそうなるんすか!」


「えぇ…良くない?」


「良くない! 1ヶ月でペンダント(小声)は早い!」


 すくっと立ち上がり、男の先輩に向けて指をさしながら言う。男の先輩はとても困惑した表情だった。


「因みに先輩(女)は、何をあげるつもりで?」


「私は…」


今度は楓が近づき、女先輩が耳元で小さな声で話す。


「まあ…ペンダント…とか?」


「アンタもかァ!」


デジャブを感じ、超大声で膝から崩れ落ちる。床に四つん這いになった光景を見て、先輩二人は―――


「なんかイメージとは違うね」「うん…」


 清楚な生徒会をイメージしていた二人は、持っているイメージとの差に衝撃を受ける。

 廊下から彩那が部屋の様子を伺っている。楓は絶体絶命の大ピンチ! だけども彼は我が道をゆく。


「…! いいですか二人とも! そのプレゼントはダメです。早すぎます!」


「「早すぎるって…」」


「いいですか?! プレゼントにはスリーステップあってですね。一つ目は『日用品』。まあ、雑貨ですね。ペンとかノート、日記とかです」


 楓はめちゃ真剣な顔をして、専門家風に言ってる。だが、この言っていることは全て嘘だ。そもそも確証なんてあるはずがない。

 だが、楓が超真剣な顔で言っているので、二人も何故か真剣な顔で聞いている。時折頷き、何故かメモもとっている。


「二つ目は『ペンダント』。まあ、付き合って1年ぐらいのリアじッゥン! ……付き合っている人達があげるプレゼントですね。センスが問われ、ダッセェものにすると「なにこれ…センス無いな。別れよっ」と破局の危機にもなりかねない、危険な品です」


 楓がズバッと言うと、二人はどんよりオーラを出しながら、わかりやすく凹む。

 さすがに言いすぎた自覚があるのか、楓は弁解に励む。


「ま、まあ例外もありますけどね! 渡した相手に注目したら、デザインなんてどうでもいいんですよ。ホントに好きならね!」


 と、言うと二人は勢いよく顔を上げ、見つめ合う。


「デザインダサくても喜んでくれるか?」「勿論…貴方のくれるものなら全部嬉しいよ!」


 そう言ってハグをする二人。それに楓は―――


「うぜぇ〜。目の前でイチャつくなよ。刺し殺すぞ」


 と内心思いつつも、顔に出さないのは楓の凄いところだ。自分のアドバイスでこうなったのに、不幸を願っている。常人には理解のできない行動を起こしすぎている。


「時間でぇーす」


 彩那の面倒くさそうな雰囲気満載の萌え声が生徒会室に響く。 「ナイスタイミング! イチャつくな。帰れ。そしてなんならベッドまで行け」と謎の感情を持っている楓は、最後の最後に自分の思いを告げる。


「…三つ目のプレゼントは女性にしかできません」


「「?」」


 楓は女の先輩の方へ行き、耳元で小さな声で話す。


「それはですね…「プレゼントは私」です。これを言って堕ちない男はいません。頑張ってください」


「後輩君…! ありがとう! 私頑張るね!」


 そして先輩二人は手を繋いで部屋を退室した。誰も居なくなった部屋で楓は―――


「あ〜彼女欲しい……」


 神様に人間を願っていた。


「ホイ。次行きま〜す。よろしくね」


 休憩する暇もなく、次々と相談者が入ってくる。楓は「もうカップルじゃないように! もうカップルじゃないように!」と願いながら、入室してくるのを待っている。そして入って来たのは―――


「うぃぃ! やってるかい?!」


「…なんでオメーなんだよ」


 生徒会室のドアの前には、現生徒会長の(みお)が立っていた。


「相談者わ・た・し!」

今回のキャラクター紹介のコーナー④


裏主人公『勇村楓』


15歳。生徒会会計。身長174cm。緑色の髪。エメラルドグリーンの瞳。


恵まれない役どころ1号。

彩那からは『喋るおもちゃ』。澪からは『歩くサンドバッグ』。莉音からは『うるさい隣人(?)』。拓斗からは『絶対に裏切ってはいけない友達』。様々な認識がされている。



もう悲しすぎますね。楓はこの先もずっと大切な立ち位置なので、大切にしていきたいと思ってます。思ってるだけです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ