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私が好きなのは妹の彼氏でロリコンのアイツ!  作者: 月宮流夏
春と暑さが暴れた一学期
5/21

5話 髪の毛の色おかしい問題

「お前ら頭おかしいぞ! 気づけよ!」


 生徒会室に響いたその声は、楓の人生終了の合図でもあった。


「なるほど。死にたいんだね」


「へぇ〜楓も言うようになったね〜彩那ちゃん感心感心〜ご褒美に消してあげるよ〜」


「…否定出来ないなぁ…けど、その言葉遣いは先輩的にアウトかな〜」


 朝、拓斗が地獄の時間を過ごした日の放課後。生徒会室にいる澪、彩那、莉音。その三人に笑顔で抹殺宣言をさせた楓は、頭を地面につけ、史上最大級の謝罪をする。

 今回は楓に非があるのだ。そして、その謎の空気感に包まれた部屋に入ってきた拓斗は、再びゆっくりとドアを閉めた。


「……カオスだ」


 そして、再び部屋を覗くと、三人が各々ハンカチやらペンやらを持って楓に振り下ろそうとしていた。流石にヤバいと思ったのか、拓斗はドアを開け、三人の前に轟速で移動する。


「ちょ! さすがにヤバいって!」


「拓斗。そこをどいて。コイツは殺らなきゃ」


「『殺らなきゃ』って! 楓は何したんだよ!」


 三人の殺意から、楓を守る拓斗。「またコイツはとんでもないことやらかしたな」と思う。

 楓は、友達として拓斗の秘密を知っている存在なのだ。だから拓斗にとっては大切な友達、いや、敵に回してはいけない人だ。なので楓を守る。いや、信用を勝ち取るために必死の思いで立ち塞がる。


「…楓はね。『お前ら頭おかしいだろ』に続いて、『おかしいことに気づいてないのかよ』って言ってきたの」


 澪がありのままの真実を伝えると―――


「よし。殺ろうか。確か筆箱にハサミが…」


「拓斗ォ?! 裏切りが早い! しかも息の根止めようとしてない?!」


 一瞬で友達を裏切る拓斗。楓を見る目は先程までとは違い、ゴミ以下を見る目をしていた。「ここで息の根を止めてしまえば言われる必要は無い」と危ない思考にまで陥っていた。


「違うんだって! 俺が言ってんのは『髪の毛』の話! 頭自体じゃないの! 分かって!」


「「「「……は?」」」」


 四人同時に『?』マークを伴った言葉が発せられる。


「見苦しい……」


と軽蔑する彩那。


「流石に無理があるかな〜」


と否定する莉音。


「とりま死ね」


と理不尽に澪。


「まあ…お疲れ」


と見捨てる拓斗。


 楓に人権はほぼ残っていなかった。だが、楓は諦めずに話を続ける。


「え、だって思った事ないの?」


 目の前で立っている四人に、正座の体型で話す楓。事の顛末を知らない人からしたらただの恐怖映像だ。


「俺らの学校って、髪色って相当クレイジーだよ?」


 そう。この学校、いや、この世界の日本は『黒目黒髪が基本』という固定概念が崩壊している世界なのだ。そして、みなの地毛の色が崩壊している世界でもある。


「まあ…少しばかりカラフルだなぁ。って思うぐらいだけど…こんなもんじゃないの?」


「全然違うだろ。カラフル超えてるだろ。もはや虹色だよ? 街歩いたことあるだろ? 目がチカチカして死にそうだよ。俺」


赤、青、黄、緑、黒、白、紫、茶、などのまだ許容出来る色に加え、青竹色(あおたけいろ)一斤染(いっこんぞめ)といった、日常生活では聞くことがあまりない色の髪の毛もある。種類はスマホに使われる画素ぐらい多い。なんならそれより多いかもしれない。


「…まあ、しょうが無いよね」


 今まで無言だった莉音が突如声を上げる。


「? どうゆうことっすか?」


「いい? この人達の髪の毛がカラフルな理由はね……」


いかにも真相を知っていそうな感じで話す莉音。他の人達は思わずゴクリと息を呑む。


「これが二次創作の世界だからだよ」


「「「「……は?」」」」


「いい?! この世界は二次創作、つまりは異世界なんだよ! 皆は洗脳されているんだよ! 『髪の毛がカラフルでもおかしくない』って!」


「…んなわけあるか」


 体をうねらせながら若干興奮ぎみに言う莉音。勝手にテンションが高くなっている莉音にズバッと真っ向から否定したらどうなるか。単純だ。


「…楓アウト〜」


 ニッコリ笑って2回手を叩く莉音。楓は「は?」という莉音の言葉への疑問の感情を分かりやすく顔に出している。

 すると、生徒会室のドアが思いっきり開き、そこから全身真っ黒スーツで、サングラスをした、いかにもという男達が出できた。


「ふぁっ?! 不法しん〜! ん〜!!」


 楓の言葉は、黒服の男の口を物理的に塞ぐ。という原始的な方法で塞がれた。この光景を見ていた拓斗は―――


「え、なに。誰この人達。全身真っ黒とかSPじゃん…ってまさか?!」


 初めて見る光景に驚愕しながら疑問を言葉に出し、整理しようとする拓斗。

 そして、何かに気がついたのか、莉音の方へ振り向く。


「そのまさかなのだ! 私はお姫様なのだぞ拓斗君よ!」


「うせやろ?!」


 腰に手を当て、偉そうに高々と言う莉音。わかりやすく驚愕する拓斗。わかりやすい二人を澪と彩那は仕事をするということでスルーする。


 彼女、莉音は簡単に言えば金持ちだ。彼女の父親は会社の社長。だが、一般的な企業とは比べ物にならない。数々の事業に手を出し、その全てを成功させた。会社の総資金は10兆円超え。海外シェア率もバカ高く、日本経済は彼女の父の会社が担っているとも言っていい。

 当然、そんな会社の娘が一人で居ていい訳無く、澪や彩那達さえも気が付かない距離から監視をしている。なので彼女の周りでの犯罪発生率は0%だ。だが、学校内は彼女の願いで監視されないようになっている。真相はどうだか分からないが。


「オタクが姫様…ラノベかよ!」


「だから言ったでしょ! ここは二次創作の世界だって!」


「すげぇぇ! 完璧なフラグ回収ぅぅぅ!」


 アホみたいな声を上げ、分かりやすい反応をする拓斗。莉音がお姫様ということも初めて知った。まあ莉音も少しだけ隠していたようなので、知らないのも無理もない。


 莉音がもう一度手を叩くと黒服の男達は音もなく帰っていった。楓の方を見てみると―――


「…死んでる」


 黒服達により、楓は死んでいた。実際死んではいないのだが、体を固定され、耳元で『莉音様万歳』と永遠に言われていたのだ。楓にとっては地獄以外のなにものでもない。故に精神が崩壊するという珍死をした。


「でも普通になんでしょうね。言われてみればおかしいですよね。まあ、ここが二次創作の世界ってことは置いといて…」


「……まあ、真剣に考えると分かんないもんだよね。そんなん『命ってなんやねん』って聞いてるようなもんだもんね」


「確かに…日常を解き明かそうとしてますもんね。俺ら科学者か」


 設定を追求されても困るのだ。髪の毛がみんな真っ黒だったら

不気味だし。別に髪色なんてなんでもいいだろう。それに、キャラの喋り方が似ていたらどう表現すればいいのだ。キャラの差別化としても必要な事案なのにそんなことも知らずに、愚直に疑問をぶつけてくる楓。残念な役どころと言われる由縁である。まあ、その辺はさじ加減なのだが。


「…! でも確か莉音先輩の親って髪色違いますよね? 雑誌で見ました」


「ん、そうだね。パパが青髪。ママが銀髪? って言うのかな?」


「…突然変異個体じゃねぇか!」


「「?!」」


 黒服の軍団に脳が洗脳されていた楓は、強すぎる自我により正気を取り戻し、完璧なツッコミを入れる。そしてツッコミを入れてから立ち上がった。普通逆だろうに。


「どんだけ頑張っても先輩の()()が出てこん!」


 そう。莉音の髪色は赤色。どちらかと言うと橙色っぽいが。まあ、どちらにしても両親からの遺伝では絶対にありえない色をしている。『青+銀(白)=赤(橙)』などこの世の誰が聞いてもビビるだろう。科学者が飛んで跳ねて驚くわ。


「ってことで俺は全人類突然変異現象が起きた世界だと主張する」


「む。なら私はこの世界が二次創作の世界だと主張する!」


 二人のしょうもない言い争いは5分弱も続くが、ある一人の仲裁で平和的に終わる。


「はい。うるさいので退場〜」


 と、生徒会長である澪がそう言う。退場と言われても自ら部屋を出ていくやつは余程の阿呆出ない限りは居ない。そしてそれは澪も当然わかっている。だから制服の襟を掴み、廊下に投げ捨てた。「アギャッ!」という楓の悲鳴と共に。


「そんでもって、拓斗も話に混じってたので退場〜。莉音先輩はいいで〜す」


 なぜか拓斗も追い出し、莉音は室内に。優しい表現をすれば自由気まま。悪意のある言い方をしたら理不尽。これが絶対王と言われる由縁である。


「ガールズトークに男子禁制だよ? そんなのもわかんないの?」


 と、彩那。どうやら二人の味方は居ないようだ。ドアを締められ、「ガチャ」とドアが施錠される音が聞こえる。


 静まり返った廊下に取り残された二人。先に口を開いたのは拓斗の方で―――


「澪は黒目黒髪。でも萌葉はピンクなんだ」


「? なに急に」


「…この前両親と萌葉で出かけてる様子を見たことがあるんだけど、両親の髪色がね…」


「ちょまて。それ本当にたまたまか?」


 澪の妹であり、拓斗の彼女の萌葉は桃色の髪の毛の色をしている。

 拓斗が萌葉を見かけた理由は、つけていたからではない。たまたまだ。多分。


「……勿論だよ。何言ってるのさ」


「じゃあなんで貯めたんだよ」


「……両親の髪色が、()()()()()なんだよね……」


「うわ。コイツ話ガン無視したよ」


 流石に拓斗もいらついたのか、一発殴る。


「いい?! 本題! 萌葉のピンクはどこから来たの! って話!」


「わかった! わかったから落ち着け! 目バキバキになってるから!」


 萌葉のことを語るとつい興奮してしまう。そのせいで目がバキバキだ。ハッキリいえばキモイ。結構。


「た、確かになんでだろうな……」


 普通に謎だ。楓の記憶上、澪の両親は双方黒目黒髪。遺伝的に澪が黒髪のは分かる。たが、血の繋がった妹が別の髪色をしているのは理解出来ない。から―――


「…ここは二次元だ。それでいいな?」


「…そうだね。沼に沈む前にさっさと結論を出そうか。俺達には結論は出せないからな」


 結局莉音の言う意見に賛同し、この話は結論を出せずに終了した。


―――――――――――――――――――――――


「二人とも! 大事なお知らせがあります! 特に楓!」


「うぉ?!」「ふぐっ! な、なに?!」


 廊下でボーッとドアに寄りかかっていた拓斗と、廊下なのに食べ物を食べようとしている楓。二人は急に勢いよく開いたドアにより吹き飛ばされる。


「あぁ……俺のメロンパン……」


「んなもんいくらでも買ってあげるよ。それより大切なことがあります」


「…?」「どーぞ……」


 楓は不満そうな顔をしているが、澪の後ろでは莉音と彩那がなにやら慌ただしく動いていた。


「明日から昼休みに『生徒会相談』を実施すると、校長から連絡が来ました。そして明日の当番は楓! 貴方です!」


「……待て。メロンパン食うからもっかい言ってくれ」


「いや、お前が待て。テンパって床に落ちたメロンパン食うなって」


 テンパって床に落ちた汚いメロンパンを口に頬張りながら、楓は廊下全体に響く絶叫を上げる。


「…なんで俺なんだよぉぉぉぉ!!!」


 恵まれない男は、髪色の件だけでなく、不運なことが山盛りです。

キャラ紹介のコーナー ③


拓斗の彼女『篠崎萌葉』


11歳。小五。140cm。桃色で紫紺の瞳。ミディアムヘア。


拓斗の彼女。小五にしては可愛すぎ。


この子も登場させたいですね。前話で少しだけ出てきただけなので、もう少し……

次からキャラクターエピソードに入ります。1話に1人登場します。是非。

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