16話 モテたいと願い続けた女の話3
*微エロ要素あります
「……ここは…」
「! 彩那! よかった〜起きて」
私が目を覚ますと、見知らぬ天井を見上げていた。
横には楓が座っていて、周りはやけに綺麗。あぁそうか。ここは病院か。私ぶっ倒れたんだった。
「楓? あの後どうなったの…ッ?!」
「! 大丈夫か彩那!」
起き上がろうとするが、少し頭痛がしてベッドに倒れ込んでしまう。
「ゴメン…大丈夫。それで?」
「…彩那が倒れてからすぐ救急車を呼んでここまで搬送してもらったよ。病室は莉音先輩がとってくれた。丁度澪達が着替えとか買いに行ってるとこ。入院だってさ。二三日程度だけど」
お医者さん曰く、過労の堆積による発熱と倦怠感だったらしい。確かにここ数日寝不足が続いていたけど、まさかこうなるとは…。
健康チェックの為に、二三日程度入院したら退院。その間は学校を休むように言われたって。我ながら馬鹿な事をしたものだ。
「なんかゴメンね楓。買い物の途中だったのに」
普通に申し訳ない。体調悪かったのに付き合わせて…こんなことに巻き込むとは…。
「…なんか珍しいな。弱気な彩那って」
「…バカにしてんの?」
せっかくこっちが謝ってるのに。
でも、私には分かる。こういう表情の楓は、私を元気づけようとしてくれているんだ。
「んな訳あるか。いつもは逆ナンとか、クールぶってるけど、昔はこんな感じだったよな」
「ッ! 昔はNG! 私は生まれ変わったんだよ!」
「ハイハイ。転生した彩那さんは疲労によって倒れたと。ダサいぞ〜」
ぽんぽんと私の頭を撫でる。子供かよ! って思うけど、不器用な楓なりの元気づけ方。
合間合間に楓の優しさが溢れ出ている。こういう所なんだ。私が楓を好きな理由は。
そっから数分話をした。盛り上がるにつれて段々と熱は上がるように感じてきた。
まともに思考が出来なくなり、「…今エッチしたらさすがに移すよね」とか危ないことを考え始めている。耐えて私の脳!
「…彩那の誕生日って明日だよな。って事で…プレゼント。お前に」
「……え? これって…」
「そう。彩那からアドバイス貰った日用系の雑貨。何買ったらいいか分かんなかったから、このぬいぐるみ買っといた。テディベア? てやつかな」
私がまだ比較的元気だった初めの頃に、楓が買ってたテディベアを貰った。そういや私の誕生日明日か。忘れるぐらい熱あるのかなぁ…。
でも、嬉しいな。楓からのプレゼント……もっと欲しい。
「……楓? テディベアついでに…もう一つプレゼントくれない?」
「ん? 何?」
私は体を起こし、瞬時に楓の首の後ろへ手を回す。そのままグイッと引き寄せ、楓の唇にキスをした。
「?! ぷはっ、彩那?! 何してんの?!」
「何って…キスだよキス。プレゼント嬉しかったからお返し♡」
もしかしたら私が風邪で、移すかもしれない。という考えは無くなった。今の私は欲望に忠実に生きよう。
目はトロンとして、口調もおぼつかない。だけど、楓の事だけはハッキリ話す。
「楓〜? 私、楓好きだよ?」
そう言ってもう一回キス。楓は悶絶して、「んーんー」言ってる。可愛い。
私は布団をベッドの上から降ろし、パジャマ一枚の無防備な姿を楓に見せ、体を引き寄せる。
「うおっ?!」
ベッドに仰向けになる私に対し、楓は覆い被さるような姿勢で四つん這いになる。私と楓の視線が合わさり、なんとも幸せな気分になる。
「……彩那は俺のことが好きなの?」
「うん。だぁい好き」
「…そっか…」
楓は、恥ずかしそうに顔を赤らめて、こう言った。
「俺も…俺も好きだよ。彩那」
それと同時に、今度は楓からキスをした。
そこからは皆さんご想像の通り、セッ…! のお時間です。
「彩那っ! 愛してるっ!」
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『こ、これ以上はヤバいよ楓!』
『大丈夫だって。アイツらも察してくれるよ』
「んな訳あるかバーカ。昼間の病院でヤってんじゃねぇよ」
「ちょっと黒江?! 主人の考えた設定に「バーカ」は言い過ぎでしょ! あとこれ全年齢向けだから「ヤってる」とか言わないで!」
「エロ同人作家が何が「全年齢向け」だ! 信憑性ねぇわ!」
真昼間のとある豪邸の一室。ボーイの少年と、主人の娘である少女が、ペンを持ち、下ネタを連発しながら揉めていた。
「だから! このヤるシーンの体勢おかしいって! 腰どうなってんだ! もろ直角だぞ!」
「はぁ?! なら黒江の担当したネームはどうなのさ! 私の指示した言葉と全く違うんだけど?!」
少年の名は霧浜黒江。この柏木家に代々仕える霧浜家の長男だ。
少女はの名は柏木莉音。ご存知の通り、大分ヤバめの女子だ。
莉音は、『高学歴腐女子』というペンネームで活動しているエロ同人作家だ。夜な夜な設定を考えては、それを使用人の黒江と共に寝る時間を返上して同人誌作成に労力を費やしている。
「俺思ったけど、クラスメイトのエロ漫画描いてるってバレたら学校内の居場所無くなるな。今からでも登場人物の名前変えないっすか?」
「変えないっ。こっちの方がリアリティーあるじゃん」
「はい、この瞬間校内での俺の立ち位置は無くなったと。GG!」
黒江は莉音より一歳年下で、楓、彩那と同じクラスだ。だからこんなことをしてるとバレた日には人生が終わる。
「…黒江、これを改稿して夏コミ応募するよ。私これ気に入った!」
「リアルの友人同士のイチャラブセッ…! 漫画をですか。相当頭イカれてますね。俺好きっすよ。そういう開き直ってるとこ」
「うるせーい。いいから早く手を動かせ〜」
こうして二人の同人漫画作りは続いていく。沢山の人を巻き込みながら。
「どうせなら拓斗と澪と萌葉の3ピーもぶち込むか」
「もうやめてくれ…」
楓、拓斗、黒江、この三人は、この作品の『三大残念な役割キャラ』だ。
*結局話は全て莉音の漫画のネタでした。
後日、このことを知った彩那は、とりあえず楓をサンドバッグし、莉音を怒りました。




