白と武器①
受付「失礼ですが、お見受けしたところ装備などがないようですが…」
ティモシー(あっ、そういえば忘れてた。なんて言えばいいんだろう。一文無しなんて言ったら変な心配かちゃうかな)「あっ、えーと…」
受付「ああ、大丈夫ですよ。念の為に確認しただけです。こういうことは珍しくないので、未装備の初心者さんにはこちらから武器と防具を上げてますよ。ただ最低限のものなので、あまり強いモンスターを狩るなんてことはしないでくださいね」
ティモシー(助かったー。転生後に女神がお金渡してくれなかったことに気づいたけど、こういうことを見越して…尾行したこと以外は僕のペース関係なくここまで来ちゃったけど、うん、やっぱり僕は冒険者になるようになっていたのかな…)
受付から防具をもらって、その場で身に着け方を教えてもらいながら装着した。剣を利き手と反対の腰に下げると、なんだか不思議な気持ちになった。
ティモシー(鏡が欲しいな。僕、今防具に着せられてないかな?)
ユナセラフィはそれに気づいたのか。
ユナセラフィ「似合っていますよ」
ティモシー(お世辞でも嬉しいな)「ありがとう」
ぶっきらぼうな笑みがこぼれた。
受付「では、軽い説明と行きましょうか。まずは、改めておめでとうございます。ご存じの通りこの王都のみならず、他の街や村でも魔女様のご加護でこの街は守られています」
ティモシー(魔女!?)
受付「しかし、一歩外に出ますとモンスターに襲われる危険性がありますので、冒険者登録をしていない一般の方々からの依頼を受け、その討伐をお願いしています。ギルドに所属となれば先ほども説明した通り基本的にこちら受付から依頼を受けます。しかしティモシーさんは登録しませんでしたので他の一般の冒険者と同じようにこのギルド館の一番広い壁一面に貼られている張り紙や、宿屋や酒場にも貼られている張り紙の中から選び依頼を受けます。他の村では掲示板を設置しているところやお店の外壁に貼っているケースもありますが、王都では景観の為に王様より外の張り紙は禁止されていますので見つけましたら依頼を受けずに剥がしてギルドに報告をお願いします」
魔女の存在が気になり、あまり内容が入ってこなかった。
ティモシー(女神から魔女のことを一言も聞いていないけど…聞き逃した?いや…)
受付「次にモンスターの討伐方法ですが、それには二通りあります。その前に一先ずは初心冒険者に自分の武器に「名付け」をお願いしています」
ティモシー「な、名付け?」
考え込みそうなところに突然武器の名付けをお願いされた。武器に名前。普通ならば自分の冒険名を考えるより難しそうだが、ティモシーはその名前もあの絵本から取ることにした。ティモシーの冒険の相棒と言えばもちろん…
ティモシー「チェイス」
受付「ティモシーさんは本当に名付けが上手いですね。ではこのペンでブレイドの方に名前を書いてください」
名前を彫るのかと思ったらペンを渡された。さっきの冒険者登録で自分の名前が光ったように、この世界は名付けに特別な意味を含んでいるに思った。まるでこれからこの名前で生きていくのだというように、渡されたこのペンもきっと特別な事が起こるのだろう。そんなことを期待しながら鍔つばよりにブレイドにペン先を当てた。緑色のインクが滑り【CHASE】という字を刻んだ。想像したように緑色に光り、この剣に名前が与えられた。そして飲み込むように文字が消えた。
ティモシー「消えた」
受付「はい。冒険者の中には武器の名前を気に入り過ぎてしまい、使わなくなってしまうので、魔女様が消えるように改良しました」
出た。魔女。「様」をつけるほどにこの世界において魔女は特別な存在らしい。一体どういう存在なんだろう。後でユナセラフィに聞くことにした。