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僕らは異世界で生きている  作者: モチ猫 芹香(もちねこ せりか)
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黒と異世界

 起き上がって見るとどうやら大聖堂の中のようだった。振り返って見ると見覚えのある女神の石像がそこに立っていた。立ち上がって周りを見渡すとステンドグラスも建物の装飾も立派に見えるのだが、木製の長椅子をよくみるとワックスは剥げ、危険なささくれが起き上がっていた。椅子も空気もほこりっぽくないところを見ると手入れはされているようだが、女神をあがめる聖堂にしては古っぽさが目立つ。


 (しかし寒な)


 傷だらけの大理石の床から伝わる冷たさにやっと気づいた。最初はよく見えなかったがステンドグラスの向こうでは雪が降っている。転生前に着ていたと同じ白の薄い上下服と裸足を見つめながら、なんて最悪なタイミングに転生してくれたんだと気転のきかない女神に心の中で怒りが沸々と沸き始めた。イライラしていると奥から誰かが出てきた。シスターの恰好をした20代くらいの女性が俺を見るなり驚いて、少しの間が出来たかと思ったら何かに気づいて慌てだした。


 「まぁ!なんてこと!少し待っててください!」


 そう言い残してまた奥に引っ込んだ。まぁなんてこと?俺、何かしたか?


 (これはやばいやつか?)


 少し待っててくださいと言われても異世界転生してまだ詳しい状況もわかってない。そんなところに面倒事に巻き込まれて、その上この薄着で連行されるのはなかなか辛い。悩んでいると誰かを呼びに行ったにしては長いなと思った。


 (やっぱり…)


 走ることにした。出口らしき扉へ向かいその重さを開くと、滑り込むように凍てついた風が服をすり抜け、その奥から絶望的な白い景色が目に入る。躊躇しながら裸足でこのまま行けるのかと踏んでみた。やはりきつい。しかし後ろからシスターの声が聞こえた。もう行くしかない。思いっ切り外に飛び出した。


 (走ったら温まるだろうしアドレナリンも出るだろうし!…)


 そう思いながら必死で走った。久々に走ってみると、堕落した生活を送っていたニートの頃とは違う体の為か普通に走れた。それでも吸う空気は肺に酷く刺さる。氷のように冷たい石畳の道とシャーベット状の雪と時々踏む小石が足の裏が激しく刺激する。


 痛みの辛さに耐えきれず足を止めた。さすがにシスターでもここまでは追ってこないだろうと周りを見渡すと商店街の景色に変わっていることに気づいた。最悪の場所に来てしまったと後悔する。奇異な視線が全方向から向けられているような気がして下を向いた。けど進むしかない。ここは異世界だから。もうこの世に俺を知っているやつなんて存在しない。誰も手を差し出してくれない。早歩きで進んでいると声をかけられた。


 「おい!」


 (びくっ)


 「白服の君、こっちにおいでよ」


 声のする方向へ顔を上げると、男が店の奥から出てきた。がたいのいい体格を見ると身の危険を感じてまた走り出した。面倒な場所にまた入り込むのは面倒だと、しっかり周りを見ながら走った。すると「INN」という文字を見つけた。


 (民宿だ!)


 助かったと思い夢中で駆け込んだ。息を切らしながら宿内を素早く見まわしカウンターを見つけた。その向こうに同い年か年下かの女の子がエプロンを身に着けている事を確認すると早歩きで彼女の方へと向かった。彼女は突然現れた俺を見て驚いた様子だったがそれを気に留める暇はなかった。


 「えぇっと…」


 慌てる彼女の前で俺は空中に円を描いた。光る黄色い線が繋がると俺が頭の中で出てきてほしいものが現れて、その袋をカウンターに叩きつけた。


 「一か月泊めてくれ!」


 「え!?は、はい!」

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