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僕らは異世界で生きている  作者: モチ猫 芹香(もちねこ せりか)
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白の旅立ち

 ギルド館を出てユナセラフィと郊外の草原を目指した。


 ユナセラフィ「そういえばティモシーさんの名前って本名ですか?」


 ティモシー「え?いや、本名ではないよ」


 ユナセラフィ「そうだったんですね。でも受付の人は何故か知っている風でしたね。お知り合いですか?」


 ティモシー「そういえばそうだったね。いや、今日初めて会った人だから僕も謎だよ」


 ユナセラフィ「受付の勘…なんて(ふふっ」


 ティモシー「そうだ。そろそろ敬語じゃなくてため口で話そうよ。突然だったとはいえ初対面でため口で話してしまって申し訳ないと思ってたんだ」


 ユナセラフィ「あ、じゃあ…これからよろしく(照れ」


 ティモシー「う、うん、よろしく」(なんでここで照れるんだ?変な勘違いしちゃダメだ)


 ギルド館を出てから気づいたが、冒険者については受付が説明してくれていて、ユナセラフィはここまで冒険者名について以外は何も教えてくれていなかった。冒険者の道に引きずり込んだ張本人の小さな反応には反応を返してはいけないと思った。


 ティモシー(これ完全にユナセラフィの罠にはまったってことだよね?僕なら騙されて冒険者になってくれそうなんて思ってたりしたんだろうな…本当になっちゃったし)


 横を歩くユナセラフィの様子を見てみたが特に他のそれらしい動きをしそうにないように思った。薄々気づいていたが知らないふりをするより聞いてみることにした。


 ティモシー「そういえば、今から初狩りに行くんだけど他に仲間とかはいないの?」


 彼女の顔が少しこわばった。


 ユナセラフィ「ええっと、その、実は私…一人なんです」


 これからお互いの命を預けて狩りに出る為、余計な隠し事はよくないと思ってわざと質問したとはいえ、地雷を踏んだことに申し訳なさがこみ上がった。おかげでユナセラフィがまた敬語に戻ってしまった。


 ティモシー(ん~、転生主人公につく初めての仲間あるある…)「そっ、そっか」


 ユナセラフィ「すみません!騙してしまいました!他のパーティーの募集では断られますし、自分で募集しても人が来ないんです。ティモシーさんのように冒険者に誘った人たちもどんどん私から離れていってしまって…その…」


 ティモシー「いやいや、どうせ迷っていてずっと悩んでいたかもしれないし、それは大丈夫だよ」


 ユナセラフィ「でも…」


 ティモシー「あと、敬語とさん付けはなしだって」


 ユナセラフィ「はい…あ、うん。本当に大丈夫ですか…あ…大丈夫?」


 ティモシー「大丈夫、大丈夫!あと、本当に何も知らない初心者だからユナセラフィしか頼れないんだ。これからよろしくね」


 ユナセラフィ「うん!私もよろしく!」




 それから王都から外の世界に通じる門をくぐり、その先には木々の少なく所々に岩が点々としているだだっ広い草原が広がっていた。奥には森も見えた。モンスターがよく出現しそうな場所にユナセラフィに案内してもらい、彼女に狩りの仕方を教えてもらった。弱点や急所をよく知っていて、ヒーラーの彼女だが剣の主な振り方も教えてもらった。


 ティモシー(よく観察しているんだな。それだけたくさんの冒険者と組んでたってことかな)


 簡単なスライムから小動物系や毒のない植物系のモンスター狩りに挑戦した。初日なので討伐率は低いがだんだん慣れてきていた。初めて倒したスライムは受付から聞いたように消えて数枚の金貨に変わった。それを見ると狩りをしているというよりリアルなゲームをしている感覚に近いと感じた。


 やっと一狩りに成功した僕らは一先ず休憩をとった。小高いところを見つけ、ちょうど生えていた木の影に座り、辿ってきたその景色を見下ろした。他にも冒険者らしき数人がモンスターを追いかけているのが見えた。苦戦しているところを見ると、彼らもどうやら初心者のようだ。


 彼らが振り回している剣が目に入り、ふと思い出して腰に下げた剣が気になった。鞘から抜き取り、その十字の交差するところを眺めた。


 ティモシー(この魔法石を魔女が…)


 女神から一度も説明を受けなかった”魔女”。この剣のちょうど十字のところに埋め込まれた魔法石を眺めてみても特に特別な何かを感じない。


 ユナセラフィ「その魔法石が気になるの?」


 ティモシー「うん、魔…」


 魔女の存在が気になってと聞きかけたが、よくよく考えればこの世界では魔女は常識。ここで聞いてしまうと面倒なことになってしまうと思って質問を止めた。


 ティモシー「魔法石について詳しく聞いていい?使い方ってどうするのかなぁって」


 ユナセラフィ「あぁ、そうだった!そのままの状態では特に能力はないんだけど、魔女様に会ってご加護をもらってから能力が出てくるようになるらしいよ」


 ティモシー「へー。火の魔法とか水の魔法とか?」


 ユナセラフィ「それは主に魔法使いが使う能力…かな?私も剣士でも使えるのかどうかまではわからないな。魔女の…魔女様のご加護を受けるほど冒険したことがないので」


 ティモシー「ふむ…ご加護ってどこで受け取ることが出来るの?」


 ユナセラフィ「一番最初のご加護はここの草原から森を抜けて一番近い小さな町でもらえるって聞いたことがある。私は森に入ったことはあるけど奥まで言ったことはないんだ」


 ティモシー「そっか。じゃあ頑張ってその町に行けるくらいに強くならなきゃね」


 ユナセラフィ「う、うん…」


 ティモシー「どうかした?」


 ユナセラフィ「いや…」


 ティモシー「一緒に行くよね?」


 ユナセラフィ「…うん!」


 ティモシー(たぶん、他に組んでいた人達に置いて行かれたんだろうな)


 彼女の事情は知らないが、きっとまだ信じていないんだろうと思った。絶対一緒に強くなろうとひそかに心の中で誓った。


 それからまたモンスター狩りに出たが、残念ながら二匹目のスライム以降の狩りには成功しなかった。夕暮れにはもう引くことにし、その日の夕飯はスライム二匹ではお金が足りず、ユナセラフィのおごりをいただいた。異世界の宿屋の飯は焼いて塩を振りかけただけの肉と芋のプレート。この世界はアルコールに年齢制限はないみたいだが、やはり良くないことだと思い飲み物は日替わり果実ジュースにした。ユナセラフィもアルコールは得意ではないみたいで同じものを頼んだ。食事しながら狩りの反省と改善を話合った。話を終えるとそのまま上階のそれぞれの寝室へと向かった。


 ユナセラフィ「おやすみ」


 ティモシー「おやすみ。明日も頑張ろうね」


 ユナセラフィ「うん」


 陽だまり咲くような笑顔のユナセラフィの顔はまだ心の底から笑ってないらしい。それでも言葉で言うよりは行動にする方が伝わると思っていた。


 風呂から上がりベッドに横になるとやはりあの魔法石が頭から離れなかった。


 ティモシー(まだ情報の少ない今では考え続けてもしょうがない、とりあえず狩りに慣れることに集中して、今日はたくさん寝よう…)


 とか考えているうちに一日の疲れが押し寄せるように意識が眠りの底に引き込まれた。




 魔女と魔法石の存在への違和感を持ちながら数か月過ぎた。冬のモンスターが増え、狩り方に変わりはあるが二人はどんどん慣れていった。その間にユナセラフィの欠点が目に付くようになったが、パーティーを解消するほどの欠点には思えなかった。ヒールを使うタイミングがずれることがよくあり、これが強いモンスター討伐だったらと考えると致命的になってしまうが、それは単に彼女の経験不足のせいだろうと思った。現に彼女との呼吸も合うようになり、言う前にヒールを使ってくるタイミングも少しずつ増えていった。しかし、彼女の本当の能力は目がいいところ。よくモンスターの動きがわかり、味方の動きもよく見えている。剣士を目指していた時期もあったそうだが、何故かその能力には恵まれず、戦いの中で気づいたヒーリング能力に目覚めヒーラーとして活動するようになったと話した。


 ティモシー(だから剣の基本の動きを教えることが出来たんだね)


 冬の防具に身を包み、ランクを一つ上げた名付け剣を腰に下げた。食用武器も手に入れたが、まだ自分でモンスターをさばくことに抵抗があり、似たようなメニューでも宿屋の飯にまだ頼ることにした。そんな日々が過ぎていった。

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