マ〇ドナルド化する異世界⑫
「じゃあ、小麦粉とふくらし粉をふるいにかけて……」
「我がやりたい!」
「やわらかくしたバターと砂糖をまぜて」
「はい、私がやります、ユーノさん」
「それから卵も」
「はい」
「それで、ふるった粉を混ぜて」
「我が我が」
「型に流し込んで、オーブンで焼く。40分くらいかな」
後ろの方から「ユーノちゃんたちのお菓子作り、これはやばいですよ」、「金髪の子のエプロンが小麦粉で真っ白になってますね。ああエプロンになりたい。エプロンになって、あの子を守りたい」、「いやぁ黒髪の子の優しい手つきもなかなか。癒しって、こういうものなのですね」とか聞こえてくるけれど、全部無視して、私達は不幸な転移者のため、ひいては街のレストランのためにお菓子作りに勤しんでいる。
ケーキを焼いている間、調理器具を洗ったり、食器や飲み物の準備をしていると、パウンドケーキのいい匂いがキッチンに立ち込めてきた。
「そろそろいいかな……」
オーブンを開けると、しっかり焼き色のついたパウンドケーキが。
「うん、成功、かな?」
「「やったー!」」
天使ちゃんとツアラがハイタッチしている。
「ユーノさん、」
天使ちゃんが、幸せそうな満面の笑みで私を見つめる。
「楽しいですね」
「……そうだね。楽しいね」
本当に、このまま平和な時間を積み重ねていけたら。
◇◇◇◇
みんなに行き渡るように、多めに作ったパウンドケーキを切り分けて、お皿に盛り付ける。それから、好みに合わせてコーヒーと紅茶も。でもまずは、ドナルドさんに食べてもらわなきゃ。最初の一皿を、テーブルに座って待っているドナルドさんの前に置く。
「あの、普段あまり料理はしないから自信はないけど、三人で頑張って作りました」
自分たちで作ったお菓子を、知らない人に食べてもらうというのはなかなか緊張するものだ。私たち三人は、ドキドキしながらドナルドさんが口にケーキを運ぶのを見守った。
「わざわざ、ありがとうございます」
そう言って、一口。
「うん」
ドナルドさんがそう言うと、彼の手から出るハンバーガーは見事に制御されたのだった。
え?そんなにあっさり?
「え?そんなにおいしかったですか?これまで食べた、ソーセージやマイステルのケーキよりも?」
うまく行ったのは嬉しいけれど、あっけなさすぎる幕切れにちょっと拍子抜けしてしまう。しかし、ドナルドさんは私の問いに首を振った。
「いや、はっきり言って、中はちょっと生焼け。小麦粉は玉になってしまっているし、砂糖はじゃりじゃりしてますね。パウンドケーキとしては、成功とは言えないでしょう」
え、だめじゃん。
「しかし……」
「しかし?」
ドナルドさんは続ける。
「しかし、あなた方が私のためにケーキを焼いてくれたというその事実、結果よりもその過程。三人の美少女が一生懸命お菓子作りにいそしむその姿こそが最高の癒し。感動せざるを得ません」
「つまり、決め手はユーノさん、天使さんとツアラさんのまごころっ!いやあ狙い通りです!」
レヴが宣う。えっと……それでいいの?これも、レヴの「幸運」のおかげなのだろうか。




