マ〇ドナルド化する異世界⑥
「……ユーノちゃん、そんなに食べて、大丈夫?」
ピクニックの翌日。天使ちゃんとツアラを二人で遊びに行かせて、私はモルマ商会会長の娘、友人のアリーナと待ち合わせ。街一番と評判のカフェでケーキを食べている。二人だけで会うのは、久しぶりのことだった。
少し前までは、「レヴのハーレムの愚痴」によく付き合わされていたのだけれど、今やその必要もなくなった。それに、私はここ最近ずっと天使ちゃんとツアラと一緒だったのだ。
「……糖分取らなきゃ、やってられなくてね」
私の前には、隣国の有名なマイステルの下で修行を積んだケーキ職人が作りだした、芸術品とも呼べるケーキやタルトの数々。とろけるような甘さのクリーム、ふわっふわのスポンジ、季節の果物の酸味が相まって、ケーキそれぞれが一つの独立した宇宙を形成している、といっても過言じゃあない。
そして、そんなおいしい甘い物をドカ食いしたい、そんな気分なのだ。
原因は、言うまでもない。昨日のピクニックの事だった。
◇◇◇◇
「でもこのままずっと、大好きなユーノさんの隣にいられたら、あなただけの幸福の手段になることができたなら、どんなにいいかと……」
◇◇◇◇
天使ちゃんが酔っぱらって寝落ちする前に言ったあの言葉。あれは、どういう意味だったのだろう。「もしかして、もしかして天使ちゃん、私のことを……」そんなことを考えると、もやもやして昨日の夜はなかなか寝付けなかった。
そのことをアリーナにも相談しようとも思ったけれど、天使ちゃんの想いははっきりとはわからないし、私も自分の気持ちがよくわからない。なかなか言い出しにくいので、まずはアリーナの方に喋ってもらうことにした。
「それで、最近はどう?『三人で』、うまくやってる?」
三人とは、アリーナ、レヴ、そして熊魔族の亜人ミーシャのことだ。かつて国内外の若い婦女子を虜にし、一人の男が維持できなくなるほどの規模のハーレムを築いたレヴも、今はこの三人「だけ」の健全な恋愛関係落ち着いていると、そう聞いている。
「う、うん……うまくできてる、と思う。レヴさんも、その、ちゃんと愛してくれるようになったし……」
と、アリーナはもじもじしながら、でも幸せそうに答えた。普段はそのきれいな茶髪を後ろに留め、服装も普通の町娘のそれである彼女は、「おいしいケーキを食べる」というただそれだけのために、今日はおめかしをしている。
髪は下ろし、アイロンをびしっとかけられた真っ白のブラウス。そして彼女がスカートなんて穿いているのを見るのは、久しぶりのことだ。ぴかぴかの革靴だって、きっと名のある職人の手によるものだろう。
彼女にとって、それは慣れない服装、のはずなのだけれど、それでも上品に着こなしている。そんな姿を見ると、やっぱりお嬢様なんだな、と思ってしまう。
そしてアリーナ、私の愛する友人は、どうやらやることはやっているみたいだ。レヴとミーシャとのあれやこれやを延々と聞かされ、「話を振っておいてなんだけど、長くなってきたな」、と思い始めた、その時、
「それでね、ユーノちゃん」
アリーナが自分の話をいったん止め、私の方を真剣な表情で見る。
「私、ユーノちゃんには絶対に幸せになってほしいの!!」
テーブルを挟んで反対側に座っているアリーナは、身を乗り出して、目をキラキラさせてそう言った。
「……うん?」
「私が今しあわせなのは、全部ユーノちゃんのおかげなの!!ずっと私の愚痴に付き合ってくれて、支えてくれて、それに、レヴさんの背中も押してくれて。感謝してもしきれないくらいなの」
胸の前で手を組んて、お祈りのポーズをしながら、天を向いてそんなことを言っている。
「……愛するズッ友のためだから、当然当然」
そんなふうに感謝されると、ちょっと照れてしまう。私は照れ隠しのために、ちょっとおどけてみせた。それに、私だって彼女に支えられているのだ。これまでも、そしてたぶんこれからも。
でも、どうも「乙女モード」に入ってしまっているらしいアリーナに、私の心は伝わらなかったようだ。
「それでね、ユーノちゃん……」
「……うん?」
アリーナ、私の大事な友人。何を切り出すのだろう。
「どっちが本命なの!?やっぱり、黒髪の子?それとも、金髪の子?!もしかして……噂通り、どっちも、なの!?私、ユーノちゃんのこと、応援するからね!」
鼻息を荒くして、興奮した様子でそう聞いてくる。以前、エリアさんにも似たような質問をされたけれど、どうも「そういう噂」が立っているらしかった。
目標の一つだった、「10万字書くこと」を達成しました。Yay。あとは、「100部分書くこと(今76部)」と「終わりまで書くこと」が目標。面白いかどうかは二の次なのでした。




