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イセカイ・シンドローム⑤

「うーん、今この街には、二つの精神反応があります。一人目は強くて、二人目は弱い反応です。どちらかが時を止めた犯人、だと思うのですが……ちょっとはっきりしませんね……」


「じゃあ、一人ずつあたってくしかないね。ていうか、すごいね、天使ちゃん。私も敵感知は使えるけど、街全体を探るなんてとてもできないよ」


「いえ……時が止まっていて、街が静かなので、反応がクリアといいますか。それとたぶん、盗賊職のおかげで探知の精度と範囲が広がってるんだと思います」


 そう言って、天使ちゃんは謙遜する。そういえば、「世界樹の家」のダンジョンでも、リレイさんの敵感知に助けられた事を思い出した。盗賊やレンジャーの冒険者は、感知の精度が鋭くなるのだ。


 天使ちゃんの探知には二つの反応。「その誰か」は世界の時を止めるほどの力を持っているのだ。大きい反応の方に決まっている。天使ちゃんの案内で、私たちはその反応の方へと向かうことにした。


◇◇◇◇


「……♪」


 道中、天使ちゃんが一人でえへえへしている。私たちが一緒に来てくれたのが嬉しかったらしい。時間を奪われ、活動を止めたこの世界の中で、彼女は私とツアラの手を取って、るんるん気分で謎の「時を止めた存在」に向かっている。


 思えば、この世界に来てすぐの時は、彼女は周囲からの好奇の視線に緊張して、私の後ろに隠れてしまうことが多々あった。でも、最近は金髪碧眼レベル99の友達と植物系最強のペットもできて、毎日楽しそうだ。


「そっか」


 ふと、時が止まっている緊急事態なのに、妙に嬉しそうな天使ちゃんのきもちに気が付く。これまでも時が止まるということは何度もあったそうだ。それがどれくらい続いたのかはわからないけど、少なくとも時が止まっている間、天使ちゃんは一人っきりだったのだ。


「一人で頑張ってきたんだね、天使ちゃん」


 不安だったろうに。でも、今回は私も一緒だよ。そういう意味を込めて、私は天使ちゃんに握られた手をぎゅっと強く握り返した。


「ひゃ?ユ、ユーノさん?」


 天使ちゃんはびっくりしたようで、わたわたしだした。


「え?ああ、ごめんごめん。これまで時間が止まってる間、一人にしちゃってごめんねって思って」


 そう言うと、天使ちゃんは急に俯いて、黙り込んでしまった。


「(ユーノさん……まったく、そういうところです……)」



 そういえば天使ちゃん、前々から感情の表現の多い子だったけど、最近私への態度も少しずつ変化してきたのだ。今みたいに急に慌てだしたり、時には「にへらっ」と無邪気な笑顔を見せてきたり、それから「ぼうっ」と私のことを見ていたり。彼女の態度が変わり始めたのは、魔力操作の訓練をしてあげた時から、だったような……



◇◇◇◇



「んー、ここみたいですね」


 天使ちゃんが、とある家の前で足を止める。


 ここは……。天使ちゃんはその事を知らないだろうけど、この家には、私たちが知っているとある人物が住んでいるはず。ドアに鍵はかかっていないようだ。


「勝手に入っちゃって、いいんでしょうか」


「別にいいじゃろ。なんたって時が止まっとるんじゃしの」


 中にいる人物の時は止まっていないようけど、緊急事態だ、しょうがない。念のため、天使ちゃんが新しく覚えた盗賊職の隠蔽スキルを私たち全員にかけて、家の中に入る。装飾品や家具は少なく、シンプルで整った家だ。応接間やキッチンを抜け、魔力の反応のあるほうへ。


 ギィィ…


 寝室への扉を開くと、そこにいたのは、以前魔力操作の個人レッスンを施したエルフの少年ルカ君、










 に、ちょっと口では言えないことを試みているルカ君の保護者、魔術学校校長にしてレベル99の最強冒険者、ついでに異世界からの転移者、そして勇者番付序列1位、つまりは当代勇者エリア・エクルンド29歳独身養子持ちその人だった。

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