引退魔法士ルーイッヒの半農半ダンジョン生活⑥
現れた階段を上り、私たちは「世界樹の家」第二階層に足を踏み入れる。
「森だね」
「みごとな森じゃの」
「『世界樹の家』ということですし、それぞれの階が自然を模しているのかもしれませんね」
ここは木の中のはずなのに、鬱蒼とした森が広がっていた。この階層は先生の世界樹研究の根幹、自然の中の魔力を集め、増幅し、蓄える世界樹の生態を模して設計された、住居のエネルギーを賄う動力室、ということだった。なるほど、森の中は魔力に満ち満ちているのを感じる。
世界樹の魔力で再生するのだろう。炎の魔法で邪魔な植物を焼いても、すぐにまた生えてくる。焼いては進み、焼いては進み、フロアボスを探して道なき道を進んでいると、突然、
わさっわさっ。
「「「ひえっ!」」」
私たち三人は思わず声を上げる。森の住人として知られるジャイアントピード、ジャイアントワーム、ジャイアントスパイダーの群れが私たちに襲い掛かってきたのだ。いきなり巨大な虫たちに四方から襲われるというのは精神的によろしくないものである。血の気が引く、とはまさにこのことだ。
「ゥァアイス・ストーム!ァアイス・ストーム!ァァアイス・ストームゥ!」
パニックになったツアラが、所かまわず大規模氷魔法を打ち込む。私はツアラがカバーできなかった虫を焼き払う。天使ちゃんは……私の影に隠れている。
「虫はだめなんです。虫は……」
そう言ってふるふる震えている。そういえば、天使ちゃんは謎の精神魔法を使うのだった。思考があるのかどうかわからない虫系の魔物は、天使ちゃんにとって天敵と言えるかもしれない。
ツアラと二人で50体は葬っただろうか。ツアラの魔法のせいで周りの木々はすでに氷漬けになっているにもかかわらず、どこからともなく際限なく現れる虫との戦いを続けていると。
ぐらっ。
……あれ、意識が遠のく。視界がぐらつき、身体に力が入らない。おかしいと思い上空を見ると、強力なしびれ粉を分泌する王蛾が羽を羽ばたかせている。横を見ると、ツアラはすでに白目をむいて倒れている。
まずい、このままでは、むしたちの、えじきに……。
そこで、私の意識は途絶えた。
王蛾
レベル30
HP300
特技・状態異常の鱗粉




