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お父さんの仕事の都合で引っ越したら異世界だった④

「ユーノ、まったくどこへ行っていたの。探したのよ」


 搭乗15分前。お母さんが私を心配してぷりぷりしている。


 ……いや、わたしはずっと搭乗ゲートの近くにいたのだけれど。


「ちょっと占い屋さんで…」


 と、お母さんに言いかけて振り返ると、そこには何もなかった。ふしぎな免税店が、きれいさっぱりなくなっているのだ。


「もう、何を言っているの。とにかく間に合ってよかったわ。ほら、もう飛行機に乗る列ができてるわよ」


 えっ、占い屋さんが消えた……


 狐につままれた気分のまま、私たちも搭乗ゲートの列に並ぶ。長い列。100人くらいいるだろうか。私は他の乗客を観察してみる。


 おかしい。


 まず、お父さんみたいな人が多い。お父さんは外国人だけど、普通の人が想像する「外国人」とは少し違っている。全体的に色が薄いのだ。

 肌は真っ白で、髪は白髪というか、グレーというか。銀髪、というのが正しいと思う。目の色も薄い。背は高め。


 私の容姿はお父さんに似て、肌の色は白めで、銀色の髪を肩まで伸ばしている。背丈も、同い年の女の子よりは少し高いくらい。そして瞳はなぜか赤みがかっている。


 周りからは「お人形さんみたい」とか「妖精さんみたいでうらやましい」と言われるけど、この見た目のせいで学校ではかなり目立ってしまう。同年代の子達から、敬語で話されることもしばしば。


 搭乗ゲートの列に並ぶ人の中にもお父さんのように銀髪の人がちらほら。ただ、目の色は黄色だったり、青だったり、いろいろだ。


 この飛行機はお父さんの故郷へ向かうから、お父さんに似た見た目の人がいても不思議ではないかもしれない。もしかしたら、私も引っ越し先では目立たずに暮らせるかも。


 そして、列に並んでいるのは銀髪の人たちだけじゃない。列の前の方には私くらいの背の高さでひげもじゃで、がっしりした身体の人たち。


 ほかには、背がもっとすごく高くて、体がもっとがっちりしてて、髪のない人たち。一度アメリカのバスケットボール選手を見たことがあるけど、この人たちのほうが強そうに見える。でも、肌が少し緑っぽいのは気のせいだろうか。


 こんな人たち、これまで日本で生活していて見たことはなかった。


 みんなお父さんの国の言葉を話している。日本人は私たちだけのようだ。すこし怖くなって、私はお母さんに尋ねる。


「お母さん、外国の人って、みんなこうなの?」


「そうねえ、お母さんがお父さんの国に行った時も、こんな感じだったかしら」


 少し待って、私たちはようやく飛行機の中へと入る。


 おかしい。


 飛行機に乗り込んだ私たちを入口で迎えたのは二人の添乗員さんたち。一人目は頭の上に光る輪っかを輝かせ、背中には白い翼をつけている。二人目には角と黒い尻尾が生えている。天使と悪魔のコスプレだろうか。どちらも美人さんで、とても似合っている。


 悪魔のコスプレをした添乗員さんがお父さんに話しかける。


「あら、混血のお子様ですか?銀髪に朱色の瞳。とっても愛らしいこと。それに、強い力をお持ちですね」


「いやあ、娘にはただ普通に育って欲しいと思ってまして……」


 とお父さんが答える。混血……ハーフ、ということだろうか。


 周りの変わった人たちと、初めて日本を出る興奮、機内食とか小さい画面で見る映画とか、その他もろもろの事で私は「ふしぎな免税店」のことなんてすっかり忘れて、半日後には目的地の街・ネウンベルグに降り立った。

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