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異世界転移したらレベルマックスじゃった⑥

 翌日。寝坊をしたせいで出発は予定よりも遅くなってしまったけれど、街の停車場では運よく一等馬車を貸し切ることができた。一等馬車は二等の一般馬車に比べて速度が速く、関所の通過や馬の交換も優先して行うことができる。通常10時間かかるネウンベルグー首都サーカリア間を7時間で結ぶ高速便だ。加えて飲食サービスも付いている。多少値が張るのが難点。経費で落ちればいいけど。


 時間を短縮できるとは言っても、道中することはない。ごとごと。ごとごと。人の駆け足程度の速度で麦畑や牧草地が過ぎ去っていく。


「平和じゃのお……」


 退屈すると、ツアラは独り言が多くなる。と、こっちを見て一言。


「お主、転移魔法とか使えんの?」


 イラッ。そんな便利な魔法、使えるならもうとっくに使っている。


「ツアラちゃん、君こそ異世界から転移してきたんだよね。転移魔法くらい、使えないのかなあ」


「ふん、この世界に来たのは、我の意思でなないしの。だいたい、そういうことは便利屋(レンジャー)の役目と相場は決まっとるじゃろ。お主にはただ聞いてみただけ」


「そうなんですか。レンジャーさんってすごいんですね」


 天使ちゃんが興味を示す。彼女も馬車の旅に退屈していたのかもしれない。


「……そういえば、天使ちゃんは転移魔法でこっちの世界に来たんだったよね。あの空間魔法、いつでも使えるの?」


 天使ちゃんは空間に門を出現させる謎の転移魔法で私の前に現れ、謎の白い空間の魔法も使ってみせたのだ。


 すいません、そんな便利なものじゃないんです……天使ちゃんはそう呟く。なんでも、他人の精神世界に肉体ごと入り込み、再び物質世界に現れる、そんな転移の方法らしい。そんな魔法、この世界では聞いたことがない。


 人が習うことのできない魔法、いわゆる固有魔法というやつだろうか。それ以降、天使ちゃんは黙り込んでしまう。何か考え込んでいるようだ。


◇◇◇◇


 そうこうしているうちに、私たちは夕方には首都サーカリアに到着した。宿の予約は冒険者組合のお姉さんに任せてある。冒険者御用達の宿でチェックインを済ませ、三人で街中を少し見学することにした。


 首都とはいっても、貴族の代表であるサーカリア公が治めているというだけで、街の規模はとネウンベルグそう変わらない。実際のところ珍しいものはないのだけれど、それでも天使ちゃんとツアラにとっては初めてのネウンベルグ以外の街。二人の美少女はうきうき気分で街を歩き回り、それがまた周りからの視線を集めている。


「ユ、ユーノさん!!」


 繁華街を歩いていると、天使ちゃんが足を止め、目を輝かせながら私の手を掴んだ。


「ハンバーガーです!ハンバーガー!!」


 ……そこには、マ〇ドナルドそっくりの赤と黄色の看板。……これは、どこかの地球出身者が始めたに違いない。それなりにお客さんも入っている。


「うわ、ほんとだ。地球の人が始めたのかな」


「ユーノさん」


 と、天使ちゃんが目をキラキラさせて、上目遣いでお願いしてくる。


「だめ、ですか?」


 ……お腹も空いたことだし、ここで夕食をとることにしようか、そう言うと、天使ちゃんは満面の笑みを見せてくれた。天使ちゃん、意外とジャンクなものも好きなのかもしれない。


 店内に入ると、中の「臭い」まであのチェーン店そのものだった。さすがに内装はこっちの世界のレストラン風だけれど。メニューが多くてわたわたしている一見さん達を尻目に、一番人気の「ジャイアント魔ック」と「ジャッカルトッフェル・フライ」のセットを三人分注文。空いている席を取り、みんなで一斉にがぶり。


 口の中に広がる、この懐かしい不健康な味。自然と、涙が出た。これはまさに、長らく忘れていたあの味だった。天使ちゃんも美味しそうに食べていて、ツアラも気に入ったようだ。


「これは!これは!」


 と、目を輝かせている。やっぱり味覚はお子様。ジャンクフードがお気にめさないはずがなかった。さすがにコーラはないようだけど、田舎麦酒(ランドビール)と、お子様の二人には果物ジュースを追加注文しようとすると、戦乙女が私の袖を引っ張った。


「我もビール飲みたい」


 お、この戦乙女、どうやらいけるらしい。


「し、しょうがないなあ。君の年齢は聞かないことにするよ」


 一人で飲むより二人の方が楽しいからね。


「天使ちゃんも、飲む?」


「い、いえ、私は遠慮しておきます……」


……

……

……


 そこで私の記憶は途絶え、気が付くと翌日の朝、宿のベッドで横になっていた。どうも昨日の夜、酔いつぶれた私とツアラを天使ちゃんが宿まで運んでくれたらしい。また、あの転移魔法で運んでくれたのだろうか。


「……うわ、二日酔いだ。頭痛い……」

「わ、我も……ズキズキする」

「もう、ユーノさんも、ツアラさんも、しょうがないんだから……」


 二日酔いでズキズキする頭に回復魔法をかけ、その日の午前中に首都サーカリアを出発。回復魔法なんていらないと見栄を張ったツアラが馬車の中で戦乙女にあるまじきことをしでかしてくれたけど、夕方には予定通り山麓の街カーターチャーチに到着することができた。今日はカーターチャーチに泊まり、明日からドラゴンの討伐にあたる予定だ。

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