異世界転移したらレベルマックスじゃった⑤
私たち3人は冒険者組合の建物に入り、受付のお姉さんに挨拶する。
「どうも、受付のお姉さん。魔物退治のクエストがあれば、受けたいんだけれども」
「お久しぶりです、ユーノさん。あ、もしや後ろのお二人が、例の……」
天使ちゃんとツアラを見て、街の情報通である受付のお姉さんは言い淀む。
どうやら天使ちゃんもツアラも街のうわさになっているらしい。二人の可愛らしい容姿から、これまで三人で街へと出ると周りの人たちが何やら想像の翼を広げて私たち三人のことを話し合うということはあった。
でも受付のお姉さんのこの反応。どうも褒められた噂が広まっているわけではないみたいだ。天使ちゃんに悪い噂なんて立たないはずだし、やっぱりこの戦乙女、教会に保護されていた時から問題を起こしていたらしい。
ツアラの性格についてもすでに聞き及んでいるのだろう。受付のお姉さんはそれ以上追求はせず、現在募集されているクエストの依頼を紹介してくれた。
「魔物退治のクエストですね。ユーノさんの実力に見合うものですと……北の赤林のキングベア討伐と、南の大山脈のアクストドラゴン討伐の依頼が入ってますね。どうされますか?」
北の赤林か南の大山脈……これは南の大山脈の一択だ。今は真夏。この季節にも山頂が雪に覆われる南の大山脈は有名な避暑地でもある。クエスト報酬でそのまま数日間休暇をとってしまうのもいい。
それにアクストドラゴンはモルマ商会の依頼でも討伐したことがある。私にとっては勝手がわかった相手だ。ツアラは魔物が相手なら何でもいいと言っているし、私が勝負を有利に進められる要素を逃すわけにはいかない。
「じゃあ、アクストドラゴンの討伐クエストを受けようと思います。明日の朝に出発すれば、その日のうちには首都に着いて一泊、明後日の夕方には山脈の麓の町に到着すると思います。討伐を開始するのは3日後になると思います。依頼主の方には、そのように伝えてください」
「かしこまりました。現地の組合支部に伝言魔法を送りますね。ところで、お連れのお二人も冒険者登録をなさいますか?登録なしでも冒険に同行することは可能ですが、宿泊や食事のための補助費は組合からは下りなくなってしまいます」
天使ちゃんとツアラの冒険者登録……今のところは、よしておこう。冒険者として登録するには、職業とレベルを明らかにする必要がある。二人のステータスは、周りの混乱を招くだろう。
ツアラは今後どうするかはわからないけど、天使ちゃんはいつか必要になったら、便利屋にステータス偽造の魔法をかけてもらってから登録させることにしよう。
「いえ、これから急ぐので、二人の登録はまたの機会に」
そう断りを入れて、私たちは冒険者組合を後にした。
◇◇◇◇
「じゃあ、明日は朝早いからね」
夜。天使ちゃんとツアラと明日からの予定を確認して、ベッドに入る。私の家は、かつてはお父さんとお母さんと三人で暮らしていた街はずれの一軒家。
天使ちゃんとツアラに空いている部屋を整えることもできるのだけど、二人ともなぜか私の寝室で寝たがるのだった。三人で一つのベッドは少し狭いのだけれど、二人とも一緒じゃないと寝られないといって聞かない。天使ちゃんはともかく、この戦乙女、偉そうなのに意外と寂しがりなのかもしれない。
「ふふっ、私、この世界で他の街に行くの、初めてです」
「我も我も。ずっと教会のLv.34の相手をさせられていたからの」
「はいはい、アモンね。Lv.34じゃないから」
「どうでもいいじゃろ。そんなことは。それより、我の世界にはドラゴンはいなかったからの、アクストドラゴンとやらを狩るのも楽しみ」
アモンのことはもう諦めることにして、二人とも、遠征クエストを前にしてワクワクしているみたいだ。そういえば私も、初めて冒険者としてクエストに出る前の晩は緊張で眠れなかったことを思い出した。
この戦乙女、これが真剣勝負だということを分かっているのだろうか。ドラゴンを狩るのが待ちきれない、といった様子で目をキラキラさせている。
それにグロイエルロードとオーバーウィザードの戦いということは、実はこの世界でも最高峰の術者同士の争いということなのだけれど。まあ、変に意地を張るよりもお互いにリラックスした状態でいたほうが後腐れもないだろうけど。
と、そうだ、それから言い忘れていた。
「クエストが終わったら、報酬を使って山脈の麓の街で避暑休暇を取りたいんだけど、いいかな」
「いいですね!」
「まじかの!」
すっかり遠足気分の二人のせいで寝入ることができず、翌朝は三人で寝坊してしまった。




