異世界転移したらレベルマックスじゃった②
「あのう……邪魔した?」
アモンに呼ばれたから来てみたけれど、これは反応に困った。金髪の少女におイタをされるという、アモン好みのプレイなのか、それとも本当にこき使われているのか。それがはっきりしない。
「……」
天使ちゃんは無言を貫いている。笑った表情を見せてはいるけれど、内心「(うわあ……)」って思ってるのが顔に書いてあるよ。
と、アモンと金髪少女が私たちを認めた。
「おお、ユーノ。待ってたぜ。この子が前に話した━━」
「なんじゃ、お主は」
金髪の戦乙女がアモンの言葉を遮り、こちらを侮蔑の表情で睨みつけた。
見た目だけなら、可愛くて魅力的な少女だ。
天使ちゃんが日本人形のような愛くるしさがあるとすれば、この金髪少女はそのまま西洋人形のような美しさ、と言える。女の私でも息をのむほどに整った顔立ち。年は天使ちゃんと同じくらい。口さえ閉じていれば、まさに噂に聞く戦乙女の神々しさを放っている。そして彼女は呟く。
「ステータス」
戦乙女が呪文を唱えると、彼女の前に本が現れた。それを彼女はパラパラとめくっていく。あれは対象の情報を読む「ステータス」の魔法。魔法系上級職しか使えないはずの高度な魔法だ。
本をに目を通した少々は、「ふん」と傲慢そうな声を漏らし、小さな胸を張って、言った。
「ほほう、主、Lv.76の賢者か。若い半エルフにしてはまあまあの熟練者と見える。せっかくだから名乗ってやらんでもない。くふふ、我はツアラ。魔法戦士ツアラ・コルスガルドじゃ」
そう言ってツアラという少女はきれいに整った顔を歪め、戦乙女に似つかわしくない邪悪な笑みを浮かべたのだった。
私のことを若い半エルフとは……彼女の容姿は明らかに10代前半の少女なのだけれど。
いや、そんなことはひとまず置いておいて、彼女が魔法使い系上級職の魔法戦士で、しかもグロイエルロードを名乗った、ということは驚くべきことだった。
グロイエルロード。その称号を名乗ることが許されるのは、魔法戦士でも最高の熟練度を持つ者のみ。最高位に至る数多の障害の中でも、もっとも実現困難な条件。それは。
「Lv.90台……?」
「いかにも。我は最高位の魔法戦士。限界まで己を鍛えし戦乙女。口を聞いてやるだけでもありがたいと思うんじゃな」
限界まで鍛えた、つまりこの女の子、Lv.99の魔法戦士ということか。ちょっと信じられない、というのが正直な感想だ。私が知る限り、この世界最高の魔法戦士は西の島国に住まうLv.70台の風の魔法戦士だ。
私もLv.70台ではあるけれど、それは以前に勇者パーティの一員として魔人討伐の旅をした時の恩恵だ。現在この世界に高レベルの魔人は確認されておらず、彼らの主たる魔王は10数年前に姿をくらましたままだそうだ。
このような状況でレベル99まで到達するのははっきり言って不可能に近い。
でもまあ、ひとまず、自己紹介しておこう。
「まさかLv.99の魔法戦士が実在するなんて、正直おどろいたよ。『ステータス』を使えるということは、少なくとも魔法戦士というのは嘘じゃなさそうだ。私はユーノ。オーバーウィザードのユーノ。そしてこっちは天使ちゃん」
ぺこり、とお辞儀をする天使ちゃんを無視して、戦乙女は私につっかかってくる。
「なんじゃ貴様。我が嘘をついているとでも申すのか?お?」
この子、どうも喧嘩腰だ。レベルが高い=偉い、という思考なのだろう。
「まさか。ただ、今日の世界の状況だとそこまで鍛え上げることが難しいってこと」
「ふん、どうやら、この世界には軟弱者しかいないと見える」
そうか。ツアラと名乗る少女があまりにも偉そうな態度を取るので呆気に取られて忘れていた。アモンの話では、彼女は転移者ということだった。つまり、信じられないことだけど、彼女は熟練度最高位の状態でこの世界に転移してきた、ということか。
でも、いくらレベルが高く戦闘に優れていたとしても、このような性格では日常生活に支障をきたすんじゃないだろうか。嫌な予感がする。
「それでアモン、頼みってのは、まさか……」
「この子が街で生活できるように、社会生活の手ほどきをだな……」
……教会の依頼で、私はこの生意気な子どもに集団生活のルールを教えることになってしまった。
設定:基本職を修了(レベル30前後)すればその分野で一人前。上級職へは複数の基本職を修了した者が転職可能。一度転職をするとレベルがリセットされる。
ユメカワ・ユーノ
種族:エルフと人間の子
職業:賢者”オーバーウィザード”
Lv.76
得意魔法:炎系魔法
特筆事項:体力自動回復、魔法効果増強、救世主、常時不幸




