異世界商人のハーレム生活⑤
レヴの店の火事の翌日。あの後、店を燃やした炎はすぐに消え去ったそうだ。普段から利用していたレヴの店が全焼してしまったので、私は天使ちゃんとわざわざ中央市場まで買い出しに出かけている。
「おいおい聞いたか、レヴさんの店が全焼だってよ」
「レヴさんもついてないな」
「他の商会が火を放ったって話、本当かな」
「いや、俺が聞いた話ではモルマ商会の内部分裂だってよ」
街中はレヴのうわさでもちきりだった。レヴが幸運の転生者だと知らない街の住人たちは、昨日の火事を運のない事故とかライバル商会の陰謀、モルマ商会の内部分裂の線を考えているようだ。
「レヴさんって、有名人なんですね」
天使ちゃんが呟く。
「そうだね。レヴは超有名人なんだ。っていっても、それは彼の“だいふごう”の称号故だけじゃなくて……」
彼が有名なもう一つの理由……
それは彼がとにかく周りの人間から惚れられる、ということに尽きる。彼は類まれな幸運と、それからたくさんお金を持っていることを除いて見ても、誰にでも優しい好青年だ。性別や種族に限らず、周囲の者からの評価は悪いわけはない。
でも彼の人気ぶりはそんな生易しいものじゃない。
「異様なほど」モテるのだ。それこそラブコメの主人公のように。ハーレム、と言えるかもしれない。彼に面会した者はみな口をそろえて言う、彼の周りには常に、目をピンクのハートに輝かせた女性たちがいる、と。
まあ、認めたくはないけど、わからないでもない。実際にレヴを見た者ならば、彼が魅力的な人間だということがわかってしまう。私自身、奴を前にするとどうも何かのスイッチが入ったように理性を奪われるような、そんな感覚に陥るのだ。
特に熱心なのは二人の取り巻き。モルマ商会会長の娘、私のかつのてクラスメイトで人間のアリーナ。そしてレヴとは駆け出しの頃からの古い付き合いという亜人で熊魔族のミーシャ。他にも数名、レヴ邸には彼を慕う女性が住み込み、街の外にも貴族や有力者の娘達に知り合いがいるみたいだ。
でもレヴは、その誰とも特別な関係を持っていないという。
レヴを敵に回したら最後、この世界で出世は望めない━━
それはこの国で名を上げようとする者なら肝に銘じておかなければならないことだった。何もレヴが反対勢力に手を下すわけではない。レヴの取り巻きが黙っていないのだ。
彼が成すことは幸運ゆえにことごとく成功し、反対する者は親衛隊によって闇に葬られていく。彼の類まれな幸運と人気がなせる技だった。
そして、私の見立て正しければ、今回の火事も、あいつのハーレムが深く関係している。
「そういえば、昨日の火事の時も女の子が数名付き添っていましたね。そんなにモテると、相手を決めるのにも苦労しそうですね。いえ、むしろ天国、なのでしょうか」
「普通の人にとっては、天国かもね。でも、レヴにとって、モテモテな状態っていうのはもう『至極当たり前のこと』みたいだよ」
でも、彼の普通と、周りの人間にとっての普通はまったく異なっている。これまでは周りの取り巻きが苦労して「レヴにとっての当たり前の天国」に合わせてきていたみたいだった。そのことで私は度々アリーナから相談という名の愚痴に付き合ってきたのだ。
「友人の彼氏の話」を耳半分で聞くくらいの軽い気持ちで相談に乗っていたのだけれど、あいつのハーレムも次第に大きくなり、昨日の様子を見る限り、今や欲望の坩堝になっているのかもしれない。彼自身はそのことをわかっているのだろうか━━




