お父さんの仕事の都合で引っ越したら異世界だった②
「ばいばい、ユーノちゃん。一年経ったら、また会おうね」
「元気でね!」
「うん!お土産、持ってくるからね」
とうとうやって来た引っ越しの日。仲の良かったクラスメイトの友だちが、空港まで見送りに来てくれた。
お父さんのお仕事は1年間。外国に行くのは不安だけど、私は来年この街にまた帰って来るのだ。だから友だちにとっても私にとっても、ちょっと長い旅行に行ってくる、というような感覚で、感動の別れ、というわけじゃなかった。
私のために泣いてくれたあの男の子は、出発の日には挨拶に来てくれなかった。きっと、他の友だちの前で泣くかもしれないのが恥ずかしかったのだろう。少しだけ、寂しいな、と思った。
お父さんとお母さんと一緒に航空会社のカウンターでチェックインを済ませ、荷物を預ける。航空会社の名前は、「世界間航空」……?聞いたことない会社だった。最近は、こうくうぎょうかいもしんきさんにゅうっていうのが激しいんだろう。
それから手荷物を検査して、出国ゲートで今日のために作ったパスポートにハンコを押してもらう。
空港というところには初めて来たけど、とても広くてゲートがたくさんあって、びっくりした。もし迷子にでもなったら、私はそのまま一人で死んでしまうんじゃないか、大人はすごいなあ、こんなところでも迷わないなんて。そんなことを思いながらお父さんとお母さんに付いて行き、私たちは搭乗ゲートにたどり着いた。
ここまで余裕をもって来たので、まだ出発まで少し時間があった。搭乗ゲート前を集合場所にして、私は一人で免税店を見て回ることにした。
私たちの搭乗ゲートの場所を頭に入れて、お土産屋さん、軽食屋さん、本屋さん、化粧品屋さんを見て回る。珍しいものは売ってないけれど、ちょっとした冒険気分だ。そして私はお店を全部見て回って、搭乗ゲートまで戻ってきた。
すると。
「あれ……こんなお店、さっきまであったっけ……?」
待合席の後ろに小さなお店が。
いや、お店というよりも縁日の屋台みたい。さっきお父さんとお母さんと待ち合わせ場所の確認に来た時は何もなかったはずだけど。
……いまさっき準備して開店したのかな。お店の前には「ふしぎな免税店」の看板が。