異世界商人のハーレム生活③
どうやらアリーナも、レヴの店がまさか火事に見舞われるなんて考えたこともないみたいだった。
「こんなことが起こるなんて、私も思いもよらなかったの。たとえ世界が滅亡しても、たとえ生産者がいなくなったとしても、レヴさんのお店だけは営業を続けることができるだろうって商会長も自負してたから……」
世界が滅亡しても支店を続ける意味はわからないけれど、本当に、考えもしなかったことだ。あいつの所で火事なんて、正直言って9年前にこの世界に取り残された時以来の衝撃だ。
一人理解できないで遅れている天使ちゃんが口を挟む。
「あの、度々すいません、ユーノさん、スーパーの火事が大変なのはわかります。火事、大変ですよね。でも、火事ってこの世界でも度々起こるものなんですよね。それってそんなに驚くことなんでしょうか」
「うん、これは本当に大事件なんだ。レヴの店には私もよく行くからなくなると困る。それはそれとして、なんであいつの店の火事が大事件かっていうと━」
モルマ・マーケットを展開するモルマ商会が、地方の一商会から国内最大規模に成り上がった秘密。
それは商会幹部レヴの手腕と幸運にある。レヴは地球人だった頃の記憶を引き継いだまま、こっちの世界で生まれた転生者だ。転生者にしては珍しく戦いの方はからっきしだけど、その代わりにありえない程の幸運を引っ下げて生まれてきた。
その幸運でモルマを押し上げ、商会の会長やライバル商会を差し置いて、国から唯一“だいふごう”の称号を授与された最高位の商人でもある。
彼の成果の一つがモルマ・マーケットだ。スーパーマーケットのアイデアを商会に認めさせて、商品を安定して供給するために頑固な生産者や職人達と独占契約に至ることができたのは、ひとえにレヴのおかげだった。
「レヴの幸運は本当にレベルが違うんだ。それこそ、ライバル商会があいつの店に火を放ってもその瞬間に雨が降り出すとか、火を放つ前に偶然憲兵が通りかかるとか、そんな漫画みたいなことをあいつは平気でやってのける。だから、あいつが不幸に見舞われるという事実自体が大事件なんだ。それこそ、世界の理がひっくり返るほどのね」
そうこう話しているうちに私たちは支店に到着した。
「あー、これは遅かったか」
レヴの店はすでに全焼。そして店は全焼しているのに、なお蒼い炎が空間を燃やし続けていた。




