不幸賢者、天使と世界を道連れにする②
「今日は家でゴロゴロしてよっかな……」
夏のある日のこと。外は暑いし、大学は夏休み。いや、そもそも卒業する気もないので夏休みとか関係なく大学にはほとんど行かないのだけれど。特に今日は暑くて何もやる気が起きないので家で休養をとろうと思い、部屋のソファにごろんと寝転がった、その時。
フワッ。
突然、本当に突然、自室が真っ白な光に満ち溢れた。光は一点に集まり、徐々に銀色の重厚な門を形作る。
ギィッ。
私が何かを考える間もなく、門が開く。
門の奥に見えるのは、一つの小さな人影。
こつこつこつ、という足音と共に、門の奥から現れたのは、一人の天使族の少女。……いや、白いローブに身を包んではいるけど、彼女には天使の輪も翼もない。天使のような人間の少女、だった。
煌めく黒髪を伸ばして、ぱっちりした大きな瞳。ローブで隠されてはいるけれど、そこからはまだ幼い、けれど成長を始めた身体のライン……おっと、私にそういった趣味はない。とにかく、とても可愛らしい女の子だ。
あまりの可愛らしさに一瞬見とれてしまった私はようやく我に返り、ソファから起き上がって臨戦態勢をとる。
とある事情から、私は敵感知の魔法を常時展開しているのだけれど、それに反応がないということは、この天使のような生き物に害意はないみたいだ。
でもこの家に張られた結界を通り抜けて転移して来るなんて、相当の力を秘めていることは確かだ。少なくとも私と同程度、もしかしたらそれ以上の━
警戒する私をよそに天使のような少女は目をぱちくりして部屋を見回し、私を見て言った。
「えっと、こんにちは、はじめまして。ユーノさん、ですか?」
「わあ、異世界人ー」
久しぶりに日本語を聞いたので、思わずそう返してしまった。




