その5
その5
『フラッコね。からすの!』
お前の名前はなんだ?
『え?』
名前を教えられたら、名前を名乗るのが鳥のしきたりだ。
フラッコはバカなキカイが名前を教えてくれるのを待ちましたが……キカイはなかなか教えてくれません。
もしかして、とフラッコは気づきます。
お前は、自分の名前も分からないのか?
『な、なまえぐらい、わかるし!?……わ、わたしは、『じどうはんばいき』!!えーのろくのびーじゅうろくのさん!!』
なんだか長くてめんどうです。
エーコでいいか?
『なに、それ?』
あだ名だよ。えーのなんたらだから、エーコ。お前の名前は長くて、めんどうだし。あと、名前っぽくないからな。
だから、お前はエーコだ。それでいいか?
エーコは、ピカピカと電球を光らせていますね。きっと、よろこんでいるんですよ。
来るはずもない人間のお客さんを待ちつづけて、二十年以上です。虫よりかしこい相手と話せて、うれしいんでしょう。
『うん!わたし、エーコよ!!』
なんだか、とても喜んでもらえていますね。フラッコは、すこしとくいげになります。
エーコのあしもとにピョンと飛び降りると、ニヤリと笑顔を見せましたよ。
『なんで、わらってるの?』
さあな?エーコが楽しそうだからだろう。
『そうなの?わたしがたのしそうだと、フラッコはたのしいの??』
ああ、そうだな。
だって、友だちだからな!
エーコは初めての友だちに喜んでいるようでした。
『いつも、おきゃくさまばかりだったから、おともだちは、はじめてだわ!』
そうかい。えいがかんってのは、ともだちが少ないのか。
『そうじゃないわよ。みんなで、たのしいえいがをみるところよ!』
どんなもんなんだろう。見てみたくないか?
『そういわれると、みたいわね。あそこのなかで、やっていたのだけれど。みたことないのよ』
じゃあ、ちょっとえいがってのを、見つけて連れてきてやるよ!
フラッコはカラスの足でピョンピョンあるいて、その大きなドアの前にやってきます。
くちばしを使って、そのドアをゆっくりと開いていきましたよ!
そこには、たくさんのイスがならんでいるじゃないですか。なんだか、不思議な場所でした。
フラッコは羽ばたいて、『えいがかん』のなかを飛んでみます。何ありません。どこに、エイガはあるのでしょうか?