その24
その24
映画ネズミはエーコのピカピカ光るあたまの上で、家族のネズミたちに囲まれたまま、死のうとしています。
フラッコは、カラスですから。
役目があります。
なあ、映画ネズミ。オレは、カラスだから。お前を食べて、空に連れていってやれるんだ。
お前は、言ったよな?
あくしょんえいがのヒーローは、空を飛ぶ不死身のヒーローだって。
だから。
オレといっしょに、空を飛ばないか?
映画ネズミは、ニヤリと笑います。
……空飛ぶヒーローですか。それは、カッコいいですね。
ああ、青い空を探して、空を旅するんだ。必ず、オレは見るつもりだ。青い空を、見るよ。
世界が滅びたって、えいがを作るネズミもいるんだ。
この灰色の空の王さまである、カラスのフラッコさまが、青い空を飛べないわけがないってことが、分かったんだ。
だから。
映画ネズミ。オレといっしょに、旅をしないか?
……世界の、いろんなところを見て回れますねえ。楽しいところや、悲惨なところ。寒いところも、暑いところも。
きっと、色々なところを見て回れます。素晴らしいことだと思います。でも。私は……この映画館が、一番なんです。
……そっか。そうだな。ここにいるのが、アンタらしいよな。
はい。ですから、心だけ連れていってください。フラッコくん、君の心に、私を置いていてください。
いつか、青い空を飛んだあとに。この映画館に戻って、私の子孫たちに、空を飛ぶ君の物語を、教えてあげてください。
そうすれば、私は、君といっしょに、世界を旅して、戻ってこれます。そうしたら、また、私たちで…………映画を、つくりましょうね。
その言葉を言い残して、命がひとつ終わりを告げました。




