23/26

その23

『これを、たべて！！えいようが、たっぷりだから！きっと、しなずに、すむわ！！』

……ダメですよ、エーコさん。お金を払わずに、商品を出しては、自動販売機失格じゃありませんか。

この映画を観てくれた子供たちに、悪い影響を与えてしまいます。映画を見た子は、良い子にならないといけないのですよ。

ジャン・バルジャンの生きざまは、そして、死にざまは、苦しいことや、悲しいことにも、耐える強さを教えるのです。

『でも。わたしは、たべてほしいよ。いまは、こどもたちじゃなくて、えいがねずみさんに、ちょこれーとを、たべてほしいのに……』

ええ。ありがとございます。だから、そのチョコレートは、しまっておいて。

いつか、この映画館に来る、子供のために取っておいてあげてください。

映画には、おいしいチョコレートがないと。

『……うん。えいがねずみさんが、そういうのなら、そうするね……？』

はい。そうです。きっと、ジャン・バルジャンなら、そういいますからね。私は、ちゃんと、映画を作れたようです、フラッコくん。

ああ、そうだな。きっとそうだよ。今のアンタは、ヒーローみたいだもん。オレは、えいがを見たんだな。

そう言ってもらえると、うれしいですねえ。