その22
その22
『とっても、いいえいがだったわ!きっと、これなら、たくさんのこどもたちがよろこんでくれわ。ねずみさん、とても、かっこよかったもの!』
ええ。そう言ってもらえると、うれしいですね……がんばったかいが、ありました……。
映画ネズミは、顔色が悪そうです。声も震えていました。感動しているわけではありません。
フラッコには、わかりました。
もうすぐ、映画ネズミは死ぬようです。なぜかって?ネズミの寿命は、とっても短いんですよ。
『そ、そんな!そんなのって!?せっかく、えいがをつくれたのに!?』
……大丈夫ですよ。私の子供たちや、孫とかひ孫とか、その子供たちとか。たくさん、いますから。
『で、でも!?』
……映画は、こんなもんじゃないんです。もっと、もっと、スゴくて、たくさんのヒーローが出るんですよ。
だから。まだまだです。まだ、これからですが……。
私は、時間が来るようです。
『そんな。じゃん・ばるじゃんみたいに、しななくても、いいじゃない!まだ、たくさん、えいがをつくらなきゃ……えいがが、すきなんでしょう!?』
ええ。好きですが、こればっかりは。ネズミは短命です。私は、長生きした方ですよ。
『そんな、しなないで、えいがねずみさん!そ、そうだ!これを、たべて!!』
エーコは悪いことをします。
映画で覚えた、ヒーローの行い。ドロボウ。お金を払わずに、品物を自分のものにするのです。
ビービービー!と何かが鳴りましたが、知ったことじゃありません。自動販売機の中から、チョコレートが出てきましたよ。
エーコが、子供たちのために、あんなに大事にしまいこんでいたチョコレートが……。




