その1
カラスのフラッコ 『じどうはんばいき』のエーコと映画ネズミ!
今日も滅びた世界は、灰色で。
とても静かなものですが。
カラスのフラッコはあわただしく、黒いつばさを羽ばたかせています!
死の灰が降る、永遠の冬の世界でも、この子はいつでも元気なんですよ!
だって。
カラスは、滅びた世界の空の王さまなんですから!
今日も、見てみたい青い空を探して、北の空を飛んでいるんです!
その1
ある朝、フラッコは大きな音で目を覚まします。
どんがらどんがら!
ああ、また灰色の空があばれていますね。
世界が滅びてからというもの、いつもいつも空はおこっているのです。
このあとはどしゃぶりになるぞ。賢いフラッコは、そう考えました。
はやく、どこか大きな穴にもぐるべきですね。
雨に打たれてしまうと、じまんの黒い風切り羽根が、ぬれてしまいますもの。
フラッコはまだちいさな男の子のカラスなので、あんまりお風呂が好きじゃありません!
折れて曲がった鉄塔から飛び立って、『ぼうくうごう』を探します。
フラッコのするどくて、ぬけめのないカラスの目が、その『ぼうくうごう』をみつけましたよ!
それは、カラスをいじめていた人間たちが、自分たち同士で大きなケンカをするときに、みんなで隠れる巣穴です。
でも、今では人間なんて、あまりいませんから、フラッコはかってに自分の巣穴にしてしまえるのでした。
これで、雨に打たれることはないぞ。
フラッコは、ニヤリと笑います。ひとしごとを終えたカラスは、カッコよく笑うものだからです。
さて。
フラッコは男の子。朝起きたばかりで、また眠るなんてこと、とてもじゃないけどできません!
フラッコはその『ぼうくうごう』を探検してみることにしました。
美味しい死体は見つからないでしょうけれども、なんだかユカイな人間たちのオモチャでもないかなあ、とワクワクしてのことです。
冒険心に導かれて、フラッコはその黒いあしで、ピョンピョコピョンとスキップしながら、大きな穴のおくへと進みました。
『しんにゅうしゃ、はっけん!たちいりがきんしされたくいきです!ただちにガガガピー』
あはは!とフラッコは笑います。こわれかけたキカイが、なんだかフラッコにケンカを売っていたようですが。
強いカラスのくちばしで、こなごなにしてやることも必要ではありませんでした!
敵はもう、最初っから、こわれているようですからね。
フラッコはスキップしながら、『ぼうくうごう』のおくに進みました。