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The prayers  作者: 星うさぎ
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第21幕 契約/騎士の誓い



パチパチと焚き火が爆ぜる。

呆然としている俺を前に、少女はにこにこと笑っている。


・・・・・・・状況を整理しよう。、

まず、俺はラミエルの術に嵌り本に閉じ込められた。と思いきや、他の世界に放り出されていた。

何故か能力は全て低下しており、偶然拾った少女は俺を知っていると宣い。


――――――――――わたしの騎士さんね。


訳が分からん。

無遠慮に少女を眺め回し特徴を探す。

まず、背中まで伸びた白い髪。輝く白銀ではなく、月光のような透き通る色。

同じく、人のものとは思えない白い肌。

纏ったボロ布は、よく見れば、首と腕を出す穴を開けただけの服、のようなものだった。

最後に赤い眼。

全身の白さと相まって、両眼の色が嫌でも強調される。


整い過ぎた顔立ちといい、こんな所に転がっていたことといい、間違いなくワケありだ。

俺の感覚でもマトモではないと判る。


目が合うと、また少女は微笑んだ。


・・・・・調子が狂う。


人間の笑顔は俺の神経を逆撫でる。

逃げるようにして目線を少女の指先に移した時。


「―――――!?」


信じられないものを見た。

見間違えるはずがない。


俺は強引に少女の手を引き、その左手のものを凝視した。



指輪、だった。それも銀色の。

表面には何もない。だが、内側にはある文句が刻まれているだろう。


それは、彼女と少年の約束の言葉。


間違えようもなく、少女の指に嵌っているのは、俺の指に番を持つ、ラミエルの指輪だった。


「お前、これをどこで手に入れた!?」

少女の手首を力を込めて握る。

少女は痛みに抵抗の呻きを上げたが、そんな事は気にかけない。


「し、知らない!何も覚えてないの!」

「何も覚えてない?」


少女は目を伏せて呟いた。

「私、自分の名前しか分からないの。どこから来たのか、どこに行けばいいのか、それさえも分からないの」


話にならない。

落ち着け、俺。いつもの様に手を出しては駄目だ。

今はどうにかして、あいつの術を破らねばならない。


「では、その唯一覚えている名前を聞こうか」


正直どうでも良かった。

既に運命が決定している鼠相手に、名前など何の意味が在ろうか。


「わたしはヨエル。貴方は?」


どくん


まただ。また得体の知れない鼓動が俺を襲った。

動揺を胸に隠しながら答える。


「・・・・・ジン。ジンと呼んでくれ」


外套の中で、引き抜きかけていた剣の柄を戻す。

指輪を奪うなら、もう少し待っても構わないだろう。


「ヨエル、その指輪をどこで手に入れた?」

全く無意味な質問だ。

どの道、奪うことに変わりはない。

「分からないの。気付いたらあったのよ」

・・・・・・決まりだ。

もう聞き出すことはない。

俺はヨエルに手を伸ばし、その手から指輪を抜き取ろうとした。

その時。


「あ、貴方も指輪をしているのね」


ヨエルもまた手を伸ばし、俺の指輪と少女のそれがかち合った。


瞬間、二つの指輪が輝き、白い光を放った。


どくん!!



再び、俺の存在を圧迫するように鼓動が響く。

眩暈を起こすほどの大量の情報が、俺の頭蓋の内を疾駆する。

一瞬後、全ての苦痛が突き抜けた先に、それが現れた。


目の前を、一冊の本が漂っている。


それはあの、ラミエルが俺に投げつけた、皮表紙の本だった。

俺の意識に出現した本は、何かを待つように浮いていた。


どくん!!


俺は、ゆっくりと本に手を押し当てた。






「――――――――っはぁ!!」


意識が戻った途端、凄まじい息苦しさに襲われた。

どうやら、意識に引きこもっている間、ずっと呼吸が止まっていたらしい。


「ジン、大丈夫?」

咳き込む俺に声をかけるヨエルを無視し、何時の間にか彼女の手にある皮表紙の本を睨んでいた。


・・・・・・やられた。

こんな方法で俺を封じるとは、本当にしてやられた。


抗いようのない強制力が、少女の前で俺を跪かせる。

引きつる喉を通し、堅く閉じた口を割って言葉が洩れる。


「――――――――――祈りをここに。汝が我が主足らんと誓うのならば、我もまた汝が僕足らんと誓おう。

  然らば、我は主が剣、主が盾となりて、その身を一切の障害より守り通そう」


深く頭を垂れたまま、左手を捧げる。


「誓いをここに」


ヨエルは自然体で、或いは何かに操られたように、自分の左手を俺の手に重ねた。


繋がっていく。

どこか見えないところで、何かが俺たち二人を結び付ける。


強制が解け、漸く俺は座り込む事が出来た。

ヨエルは呆然として俺を見つめている。


「・・・・・・今の、なに?」


それは俺が訊きたい。

だが、一つだけ分かることがある。



どうやら(ジン)は、この少女の奴隷になったらしい。






うう、なんとか週一のペースで更新していきたい・・・・

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