のんびり死体の小説書き方指南~我が奥義、貴様らに真似できるものなら真似てみい~
ふははははっ
なろういる作者諸君。
今日も相変わらず書いているようだが、ランキングは私に占拠されつつあるな。
まぁ貴様たち愚民は、私の隙間を埋めるくらいがちょうどよい。
ぶはははっ
なんだ貴様、随分と紅い顔をしているな。
まるで林檎のようだ。
お前のあだ名は林檎ちゃんにしてやろう。
どうして貴様らの文章が、読まれないかわかるか。
わからんだろうなぁ。
まぁ、のんびり死体と、貴様らでは大きく違うものがあるからな。
のんびり死体星からやってきた、のんびり死体星人の私は、永遠の命を持つ。
きさまら人間どもは、僅か数百年の寿命であろう。
あぁそれも神代の話か。
今はせいぜい80年、我が星の蟻と同じ程度の寿命しかない。
眠らず、小説のみ食べていれば生きていける私。
ちまちま働かねば生きていけぬ貴様らとでは、しょせん出来ることが異なろう。
なに、命には分というものがある。
貴様らはその程度ができれば、まぁ頑張ったというものだ。
なぜ、私がここにいるか聞きたいか。
それは私の慈悲だ。
かつてモノリスによって、貴様らに知性を与えた私の慈悲。
再び小説の世界で、お前たちに与えようというのだ。
まず、エターなお前。
可愛いものよのぉ。
人というのは、物語一つ終わらせることが出来ぬ。
その無力さ、滑稽さは、愛しささえ覚えるぞ。
このようにしてみよ。
内容までは問わぬ。
最初に物語のネタを考えたら、1話目を作ってみよ。
そして次には、最終話を作るのだ。
そしてそこに至る道中を考えてみよ。
これで蟻に等しき貴様らにも、物語りの終わりを迎えることが出来よう。
なにぃ。
もっと読まれたいだと。
ぶはははっ。
道化もここまでくれば、清々しいというものよ。
では、もっと読まれたいお前は、このようにしてみよ。
貴様の物語りを全く知らぬものが見たとしてだ。
その文章で、「物語の内容が本当に伝わっているか」を考え直してみよ。
貴様らのように、せっかちに生きるものの宿命だ。
ついつい、独りよがりな文章をかいておろう。
世界観の説明もなく、会話ばかりの話を作っておろう。
そっちの貴様は、世界観の説明が第9話か。
8話までは拷問だな、それで読まれたいなどど、よく言えたものだ。
みせずともよい。わかっておる。
何度でも書き直せ。
伝わると思うまでだ。
1話1話を、手紙だと思え。
相手は知らぬ誰かだ。
それに、お前は物語を伝え、面白いと思わせてみよ。
なにぃ。
ランキング上位にあがりたいだと。
滑稽も過ぎると命を落とすぞ。蟻。
まぁよい。
ならば、心を震わせてみよ。
お前の心は何に震える。
そのちっぽけな命は、何であれば叫びをあげるのだ。
愛か、友情か、親子の情けか、欲か、戦いか、憎しみか、喜びか、怒りか、絶望か、希望か。
お前の心の叫びを、その震えを文章に載せてみよ。
文章の上手い下手など、何万、何十万と書けばよい話だ。
それに誰が決めるというのだ。
上手い、下手の他に、味というものもある世界で、小細工がなんの役に立つというのだ。
お前の心の叫びを読者は待っているのだ。
わかるか。
宣伝など、一切いらぬ。
してはならぬとは言わぬ。
しかしな、そんなものに頼らずとも、ジャンル別の日刊1位など、たやすいのだ。
宣伝を書く暇があれば、物語を読んで、そして書くがよい。
貴様らの、その僅かな命、無駄にせず、吠えるように燃やしてみせよ。
・・・・
・・・
・・
・
「のんびり死体主査っ のんびり死体主査っ」
デスクで妄想にふけっていた私を、ひどく怒った声で呼ぶ者がいる。
振り向くと、経理の良子ちゃんが鬼の形相で立っていた。
制服姿であるにもかかわらず、彼女はまるで、武道家のような怒気を放っている。
すっかり怯えてしまった私の股間は、キュッと音立てて縮こまった。
「ひゃい」
「私、旅費の精算があったら、25日までに出しておくように言いましたよねっ」
「ひゃい」
「これ、1万250円の交通費、出ませんからねっ」
「ひゃい」
諸君、もう一つ大事なことがある。
小説は仕事中には考えてはならない。
これを絶対の掟とし、この物語りを終える。