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Ⅱ-Ⅰ

 教会を出て、俺達が通されたのは客室らしき部屋。


 中には贅を凝らした調度品が置かれており、柔らかそうなベッドも置かれている。今日からここで生活してください、と言われても問題ないぐらいだ。


「見て見てユウ君! これ、フカフカだよー!」


「ああ、そうだな」


「わ、このお花すっごく綺麗! 見たことない花だけど、こっちにしか生息しなかったりするのかな!?」


「さあ、どうだろなあ」


 などと。

 適当に相槌を打ちながら、俺は椅子に座ったままだった。


 王女を始めとする一行は、この部屋に案内してくれてから席を外している。何やら用意があるとのことだった。

 一体なんだろう。あの白い空間で聞いた、召喚者の氾濫はんらんについてだろうか?


「お待たせしました!」


 想像しているうちに、当の王女が戻ってくる。

 付き人の若い女性を下げさせると、彼女は一人で部屋に入ってきた。教会で見た時とは違って、真紅のドレスに身を包んでいる。


 金や宝石を使った装飾も多く、王侯貴族であることが一目で分かった。隣に戻ってきたミドリも、プレッシャーからか息を呑んでいる。


 といっても、俺の方には然したる緊張感などない。以前の旅で、同じような地位の人物には何度も会っているからだ。必要な礼儀を尽くすぐらいである。


 イオレーはまず、深々と一礼する。


「お待ちしておりました、英雄王。……さっそく本題と行きたいのですが、王は世界の現状について、どこまでご存じでしょうか?」


「俺みたいに召喚された人間がたくさんいて、迷惑してるってことは聞きましたよ。そいつらを始末してくれ、とも」


「具体的な理由はご存じない、ということですね?」


「そうなります。……敵として攻めてきてるとか、そんな感じですか?」


「似たようなものです。……量産化された召喚術式により、あらゆる国家で勇者召喚が可能となりました。どれだけの弱小国家だろうと、一定の戦力を簡単に入手できるのです」


「で、その脅威が自分達に向いている、と?」


「仰る通りです。故に我らは、王の力をお借りしたいのです。と言っても、常にではありませんが」


「……つまり?」


「こちらをどうぞ」


 いつの間にか持ち込んでいた袋を、彼女はテーブルの上に置く。鈍い音が響いた辺り、それなりに重い物が入っているらしい。


「これは?」


 中を覗くよりも先に、俺は疑問を放っていた。

 と、ミドリは勝手に袋の封を開けている。本当、勝手に開けちゃってよかったのか? 気になるのは分かるけど。


 隣で感嘆の声が漏れるのを聞きながら、イオレーの前置きも耳にする。


「王の今後に必要かと思いまして。冒険者が使うローブに、以前の旅で得た魔物の素材が入っています。……申し訳ありませんが、生活資金は素材を売って手に入れてください」


「ああ、はい。こっちもなるべく迷惑はかけたくないので、可能な限り自分達で用意しますよ」


「感謝します。……我々としては、あくまでも王に日常を満喫していただきたいものでして。召喚者の討伐については、今のところ焦る必要もありませんし」


「分かりました」


 俺は腰を上げて、ミドリの横から袋を覗き込む。

 やはり、魔物を討伐したことによって得た素材が多い。大型の魔物から取り出した物も多く、きちんとしたお金にはなりそうだ。しばらくの間は生活に困らないだろう。


見たところ劣化や腐食も起こっていない。魔術を用いて、当時の状態を保存しているんだろう。

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